バセドウ病について書いています。

 

アイソトープを決断すると、まずは眼科へ行かされます。

バセドウ病特有の症状が目に出ている場合はアイソトープは受けられないからです。

数年前に視野欠損を指摘されてから、眼科は年に一度定期的に受診していますが、検査内容はそれとほとんど同じでした。MRIとかやるのだろうかと想像してましたが、ありませんでした。

で、結果は、眼球が飛び出すなどの症状はないのでアイソトープは問題なく受けられる、との診断。

ただ、年齢相応に白内障症状が出始めていて、アイソトープ後にそれが急速に悪化する場合もあるとのこと。しかし、白内障はいま確実に手術で改善するので、そのリスクを恐れるよりもアイソトープで得られるメリットをとるべきでは?というのが眼科医の意見。

じつはそれからもまだしばらくウジウジと1カ月ほど悩んでましたが、先送りしていても良いことは起きないし、なんとか夏までには治したいと思ったので、6月になってようやく放射線科がある大きな病院を受診しました。

 

それまで診てくれていたS先生が紹介状を書いてくれて、予約も取ってくれて、言われるがままに行ったのは、まず内分泌科。

ほほお、また新たなる科です。

内分泌科の先生は白衣を着ていなくて、なんだかどこかの事務員みたいに見えました。

血液検査の結果やこれまでの症状、治療経緯などをすべて持参したので、診察というよりは、これからの方針を確認するという感じ。

そもそも甲状腺といえば内分泌科なんですよね、甲状腺の「面通し」みたいなものでしょうか。

「これまでの先生は外科医だったんですね、よく診てくれていたなぁ」と言われました。

そういえば、今までかかっていたS先生、最初にバセドウ病の治療方法の説明をしてくれたとき「最後は(甲状腺を)切って取っちゃうんですけどね」と言った、その瞬間、心なしか嬉しそうに見えたんですよね、気のせいでしょうか。

その後も「アイソトープじゃなければ、あとは手術ですね」と度々言われましたが、どうも「ね」のあとに「♪」が付いていそうに感じちゃうんですよ。

さてはこのひと、切りたいんだな、と。

ちょっとまって、手術に行くまえにまだ方法が残されているのなら、ちょっと、そっちも試してみたいです。もちろんそれで治らない可能性もありましょうが、せっかく方法があるんですから。

いずれS先生に切られちゃうんだとしても、そこへ行くまでにもうすこし足掻いてみたいです。

というようなことをやんわりと言って紹介状を書いてもらった次第です。アイソトープで治らなかったらまたS先生のところへ戻るのかなあ、どうなんだろう?

 

内分泌科の次は放射線科へ行ってアイソトープの準備を始めるので、この事務員風の先生と会うのはどうやらこれが最後らしいです。短い邂逅でした。

長い廊下を歩いて歩いて、窓の外に扇風機マーク(放射能標識)をチラ見しながら、ようやく放射線科に辿り着きました。

なんだか、病院の他のエリアとずいぶん雰囲気が違います。

まず、静かなんです。

大きな病院なのでどの科もすごく混雑してガチャガチャして、つねに人混みをかき分けるように歩くのですが、ここは人が少なく、天窓から射しこむ光はやわらかく、全体的に清潔感があります。

清潔感は新設された建物だからからかもしれませんが、受付のスタッフもみんな表情やしゃべり方が穏やかで、空気が落ち着いています。

そこへ、ぽつりぽつりと患者さんがやってきては、言葉少なに挨拶し、名札のようなものを受け取って、どこかへ消えていきます。

ああ、ここは大きな病と闘っている人たちの場所なんだ、とあらためて思い至りました。

車いすやベッドで連れてこられる患者さんもいますが、それでも、この人たちは皆、自分の意思で選択して、いま闘っているのです。

ロビーの本棚には、だれかの蔵書が寄贈されたのか、何年分もの文芸春秋と日本文学全集が整然と並んでいて、その背表紙の固さもまた、ここの雰囲気を決定付けているアイテムに思えます。

厳粛な静寂につい飲み込まれそうになりますが、とりあえず文芸春秋の芥川賞特集に手をのばしつつ、本棚の中をじっくり見渡すと、なぜか「進撃の巨人」があったので、それを引っぱり出して読みました。

最初の5ページほどで、もう名前を呼ばれました。

放射線科の先生は、すごく若い女医さんです。

若い女医さんだけど「若い女医さん」という単語から想像されるイメージとはかなり違う、どちらかといえば、大学の漫研とかにいそうな感じの人でした。

職人気質(と勝手に想像している)という点では、たぶん気が合うタイプです。

この先生の説明は、早口だけど平易な言葉で大変わかりやすいものでした。

ものすごくたくさんの説明すべきことがあって最後はお互いにかなり疲れましたが、わかりやすいので混乱はしませんでした。

それに、ここへ来ることを決めた時点ですでに気持ちは固まっていたので「先送りしても良いことないし、これもひとつの経験だと思ってやってみることにします」と言うと、「そういう考え方、好きです」と褒めてもらえました。

「いつでもどの段階でも引き返すことができるので、事前検査は着々と進めていきましょう」ということになり、いくつもの同意書や確認書にサインをしました。

たしかに、そのどれにも「いつでも同意を取り消すことができ、それによって患者が不利な扱いを受けない」と書いてあります。

 

事前検査というのはまず頸部エコーで、これは耳鼻咽喉科で受けます。

これもまた若い先生で、すぐ翌日にやってもらいました。

この病院は若い医者が多いんだなあ。

結果、嚢胞(のうほう)?があるそうですが今回の治療に支障はないとのことで、不問に付されました。

あくまでアイソトープのための事前検査ですから。

エコーが終わってその足で再び放射線科へ行き、今後の日程を決めました。

アイソトープについて最初に聞いていたのが「ただカプセルを飲むだけ」と言うことだったので、さっさと飲んで終了なつもりでいたのでしたが、じつはなんだかんだと2週間もかかることがわかりました。

まずは「本番」の一週間前から食事制限を始めます。

放射線を発するヨウ素のカプセルを飲むのが本番?なんですけど、ヨウ素が甲状腺に集まりやすくするために、事前に体から余分なヨウ素を抜いておく必要があるのです。

ヨウ素は甲状腺に集まりたがる性質がありますが、体内にすでにヨウ素が満ちているとわざわざ集まりたい気分じゃなくなるらしい。

 

日本では昆布の出汁にはじまって海苔やワカメなどの海藻類を習慣的に食べるので、他国民にくらべてヨウ素の摂取量が格段に多いんですね。

なので、外国ではむしろヨウ素不足になりがちなので食べ物にわざわざヨウ素を添加しているほどなのだとか。

そんなこんなの話は、次に行った食事指導の専門指導員にじっくりとっぷり伺ったのでした。

食べてはいけないもの→×、できるだけ食べないほうがよいもの→△、食べても大丈夫なもの→〇、の膨大なリストとかテキストとかをもらいました。

実際のヨウ素制限食は来週から始めますが、それまでの間に家にある調味料や食材の成分表をよくよく確認してリストと照らし合わせ、「×」のものは除けて置く。

とにかくアイソトープ前後の2週間だけのことですから、ガマンできないほどのモノはないはずですが・・・

昆布、海藻類、それらを食べて育つ魚介類、風味調味料、他に「赤色3号」「赤色105号」の着色料も×です。カニカマの色付けによく使われているそう。

寒天も×ですね。

野菜類は大丈夫と思いきや、意外にもカイワレ大根とトマトと冬瓜が△。

困ったのは、牛乳×、ヨーグルト△。

毎朝飲むカフェオレは豆乳か植物性の生クリームに切り替えないと。

塩は〇なので、おにぎりは海苔なしの塩むすび。

海から採れる塩はダメなのかと勝手に思ってました。

卵が△。特にうずら卵はヨウ素高いんです。

豆関係では、豆そのもの〇、醤油〇、でもなぜか木綿豆腐は△。

ペットボトルの清涼飲料水や野菜ジュース、お茶類にも意外に昆布や海藻エキスが入っているものがあって、とにかく制限期間中は成分がわからないものは避けるのが良さそうです。

出来合いの総菜や弁当もやめときましょう。

先述したように、輸入食材もヨウ素が添加されている可能性大で、特にナッツ類に多いらしいです。

まあ、こんな感じで、食事制限はがむしゃらにがんばらなくてもなんとかなりそうです。

 

それより、もっと大問題があるんです。

長くなったので、次の記事にします。