……
…眩しい
「お。目、覚めたか」
誰…ここは…
「お前、倒れたらしいぞ」
あ、そっか。
私遊園地にいたんだ…
「世の中親切な人も案外いるもんだな」
黒い服の青い瞳の…
どこか冷たく背筋が凍るような眼差し…
「胡依、平気か?」

「あ…うん」
私は起き上がる
まだ多少頭は痛み、思考を巡らすには時間がかかりそうだ
「大丈夫そうだな」
「心配かけてごめんね…」
「いや、いいよっ」
優太は立ち上がると軽く私の頬にキスをした
…これも日常茶飯事なので大して驚きはしない

「スーツの人は?」
「スーツの人?…あぁ、こよりを運んできてくれた人かな。それなら帰ったよ」
「…そっか」
お礼を言いたかったのに残念だ
時計を見る
3時過ぎ…ということは
私、一時間くらい気絶してた…?
「時間も残り少ないなー!んじゃここらで陰気な気分を吹っ飛ばしにいくか」
「…といいますと」
『ジェットコースター』
やっぱりそれか…
いつもなら私が嫌いで乗りたくないから止めるが
まぁ、心配かけたし仕方なく乗ることにしよう…
「胡依の反応が少なくてつまんねーっ」
そんな考えをよそに、優太は意地悪な微笑みを浮かべる
「はいはい。こわいーゆーくんたすけてー(棒読み)」
「…」
「なによ」
「ハッ」
優太に鼻で笑われた…
私より成績低いくせに
「ごめんごめん」
「いいよっ気にしてないし」
すぐに謝ってくれるとこが好きなんだ
そばにいてとても楽しいし…
「顔…真っ赤だぞ?」
「へ?」
「やらしいことでも考えてたのか?」
「ちっ違うわよ!」
「帰ったらしような」
「違うって言ってるじゃないー!」
やっぱり、優太といると楽しいな…


…前言撤回、楽しくない
「次だな。あ、一番前にしてください!」
「な…何言ってんのよ!」
「だって一番前のほうがスリル満点だろ?」
それはそうだけど…
アトラクションのお姉さんは私たちを一番前にスタンバイさせる
「だって…水しぶきとかかかっちゃう…」
「水もしたたるいい男…ってな!」
自分で言って大笑いしてやがる…
「はいはい」
私はいつも通り軽く流すと
前に帰ってきたジェットコースターに乗り込む
「ガチガチだなw」
怖くないほうがおかしい…
「大丈夫。俺がいるからな」
優太はそんなこと真面目に思ってるのかな…
そんなひとことに凄く元気付けられてる私は
変…なのかな…

隣を見る
優太はとても楽しそうだった
私も楽しい…
「安全レバー下ろすんだっけ…」
「うん。胡依、腕あげて?」
おとなしく従っておく
ジェットコースターって隣の席がやけに近いんだよね
ガチャン
「これでよし!」
私は下ろされたレバーを上下にさわる
「こんなんでいいの?」
「大丈夫だよ。これでも乗り物だからな。しっかりしてる」
そっか。よかった…
高所恐怖症の私にこんなの耐性がない…

―心臓の弱いかたや、妊婦のかた―
「いよいよだな」
「う…うん」
心臓が高鳴る
このアナウンスを聞いてどれほど『心臓の弱いかた』であればよかったと思っただろうか…
「ねぇ…優t」

魂だけ置いてくるところだった!
猛スピードでレールを走るジェットコースター
やっぱり一番前は怖い
人の反応を見て前が予測できないどころか
風圧で目が開けないっ

ガガガガガガ
「ひゃーっ楽し!」
隣をみると優太が手をあげてはしゃいでいる
私にはそんな余裕はない
ガガガガガガガガガガ
「ゆ…優太っ」
優太の腕にしがみつくので精一杯だ
ガガガガガガガガガガガガ
「大丈夫かー?ひゃっほう!」
ガガガガガガガガガガガガ
「だいじょーぶじゃっなーいー」
ガガガガガガガガガガガガ
「なんだー?なんかいったかー?」
優太…楽しそうっ
なんでこんな怖い乗り物で楽しそうなの!
わかった!優太は実はMなんだ!!
ガガガガガガガガガガガガガ
「優太っ好き!」
何言ってるんだろう私
ガガガガガガガ…ガコンッ
「胡依。俺も…」
俺も?俺も何?

だけど数秒たっても返事が帰ってこない
そういえば、涼しく感じていた風圧も生ぬるくなった
「ゆう…た?」
つぶっていた目を恐る恐る開ける
「キャー!!!!!」
同時に人々の叫び声も聞こえた
「何…何が起こって…」
しがみついていた優太の腕を見る
何もないじゃない…

…ぬる
ぬるぬる
何これ…
紅く染まった指…
冗談…だよね…
「優太?」
優太の顔を見た
さっきまではしゃいでいて、それでいて優しくて時に意地悪な横顔…
そこには
鉄の柱が刺さっていた

「嘘…ねぇ…返事をしてよ…優太…」
鉄の柱は喋らない
何が起きたんだろう
優太…死んじゃったの?

シンダ…
ダメ…
シンジャ…シンジャッタラ…


『ダメ!!!!!』


フワリと浮かんだ気がした
宙を漂う、浮遊感…
また…

ゼロになる

また…?




「シズレ」
「はい」
「追いかけるぞ」
「了解です」

「あいつに乱させてはダメだ………」


―こより…聞いて…
怖がらないで
大丈夫…
あなたは…幸せになれるから…―