気付かれていると思うが、スピリチュアル・ソーシャルワークは、科学的・医学的な立場や見解を安易には採用しない。便宜的に、幻覚や妄想といった言葉は使うが、統合失調症当事者の当面する世界を、幻や妄念として処理はしない。

 

最も重視するのは、統合失調症当事者が彼の当面する世界について話す内容であり、スピリチュアル・ソーシャルワーカーはそれを注意深く傾聴する。精神看護学的アプローチでは、当事者の話には肯定も否定もしないという手法が採られ、いわば話し半分的な接し方がされる場合もあるが、スピリチュアル・ソーシャルワークでは、そのようなアプローチを採ることはなく、傾聴に次ぐ傾聴で当事者の当面する世界を把握するよう努める。

 

スピリチュアル・ソーシャルワーカーが、統合失調症当事者の話しを傾聴するのは当たり前のことだが、もっと難しいのは、当事者が当面する世界に登場してくる「敵」ないしは「味方」とどうやって交渉するかである。

 

スピリチュアル・ソーシャルワーカーには、「観想」する力、それも非常に高度なものが求められよう。