ひとまず入店したものの、だいぶブランクがありすぎて 最初は緊張しすぎてあまり話せなかったと思う。


まぁそれは場数を踏めば自然と慣れるんだが…



なかなか指名どころか場内指名すら難しい。



無理もない。
当時のあたしは水商売についてほとんどわかっていない、初心者なんだ。

試行錯誤、といっても
何を試行錯誤すればいいのかすらわからない。





ここで当時の敏腕指導者、矢口店長の出番である。



この人、顔はやんちゃですごく男前でオシャレ!
んで日焼けして黒い体の、手足と首以外のほとんどにタトゥーが。

チンピラか!?


しかしこの男、熱い。
平成の世には珍しいほど熱い。


営業中の暇な時間にけっこう個人ミーティングをするのでいろんな話をした。


自分は昔は悪かったけどある出来事でまっとうに生きようと思った、とか

生きてく上で俺はこう思う、仕事もこうでありたい、とか。




今思えば、だが、
この男は相当口が達者だ。
話を大きく、なおかつもっともらしく、
説得力のある話し方で、

純粋だったあたしは単純に
この人はすごい
この人についていって いつかホステスとしてのし上がりたい
そう思った。


きっとそれが矢口店長の『やり方』だったんだろね。
店長の作戦、見事に成功だよ。




ミーティングの度に
『れおちゃんには力がある』
『れおちゃんはまだ力を出し切ってない、もっともっとできる』
『れおちゃんにはNo.1の器がある』
なんておだてられ、調子に乗ってがんばった。



矢口店長とは店長が辞めるまでずっとパートナーとしてやっていくことになった。


ホステスとはなんたるか、仕事とは何か、
はたまた営業メールや営業トーク、男心など ホステスをやる上で必要なことは全て 矢口店長に徹底的に叩き込まれた。



正直言って、いまだにホステスやってられるのも、曲がりなりにもホステスとしてある程度どこへ行っても結果を出せるのは、
この矢口店長の教育のおかげ。

ここで学んだことはすごく貴重だったし、
あたしの財産だと思っている。



ちなみにあたしと店長の間にはやましいことなんて一切なく、色管理でもなかった。

むしろ父と娘みたいな関係で(歳は6こしか上じゃないのに)

だから、ずっとパートナーでいられると思った。


とにかく無我夢中で、店長に認められたくてがんばった。


CLUB Mは郊外店でしかもそんなに大きな箱ではなかったが
お客さんもけっこう入っていて
とっても賑わっていた。


女の子は12人以上出勤していた。

ヤンキー姉さんみたいな人もいたけど女の子達みんな割とカンジがよくて、続けていけそうだなと思った。





初めてあたしに話しかけてくれた子、みぃちゃんのことはすごく今でも印象に残っている。

その後ずっと仲良くしていくことになる。




他に二人、素敵なお姉さんがいた。

二人は仲が良くて、でも売り上げを競ったりもしてて
どうやらこの店は、その二人のどちらかがNo.1にいることが多いらしい。








あたしは決めた。
ここでがんばろう!!





そしてここですごい指導者と出会う。


その頃、あたしはやっすい古いこ汚ねー1Rのオンボロアパートで一人暮らし。


いくら安くても家賃水道光熱費、費用はかかる。

1ヶ月半も働いてなければ
当然 支払いに困る。



いい加減働かなきゃ!!



滞納しちゃってるし、こりゃー普通より給料いい仕事しなきゃ追いつかねーな。

やっぱこーゆう時は…
ホステスやるしかねぇぞ。







と思って早速 求人誌片手に店探し。


女同士のギスギス感とか、そーゆうのなさそうな店がいいな。


なんて考えてたら、ある一軒の店の求人広告が目に止まった。


そこは市内一番の繁華街ではなく、いわゆる『郊外店』と呼ばれる場所。

しかもその広告からすると、女の子同士仲良さそうで 悪いカンジはしなかった。



ここだ☆




大至急 電話をかけ
後日面接。
採用。




その店こそが、あたしのホステス人生の本当の意味での始まりであり、後のあたしに大きな影響を与え、ホステスとしての全てが詰まった店。

全ての原点。


今の自分はこの店にいたことでなり得たと言ってもいい。



軽はずみに再び夜の仕事を始め
軽はずみに決めた店ではあったが、
本当に大切な時間を過ごさせてもらった。





CLUB M(仮名)








22歳の終わり、
あと1ヶ月で23歳になってしまう時、
遅ればせながら
あたしのホステス人生は幕を明けた。














※ここから先に登場する人物や店の名前は全て仮名です。


※ちなみにこの素晴らしきCLUB M、閉店いたしました。