不完全透明人間の価値 | 路上カメラマン身の周り切撮り@サンパウロ

路上カメラマン身の周り切撮り@サンパウロ

危ないと言われる場所に住み、
よく行けるねと言われる場所に行く。
ブラジルに来て早16年
思い返せば何も思い出せない今日この頃・・・。

久しぶりに夜のCentro(ダウンタウン)をカメラ片手に散歩した。

特にCentroには色んな呼吸が存在し、いろんな色のエネルギーが漂っている。



「(危ないのに)よく夜のCentroなんか歩けるね、しかもカメラ持って」

と言われるが、昼とは違うその姿がどうしても好きで好きでたまらない。




日本・日系人・ブラジル人と比べても私は人とは違うものを沢山見てきたと思う。



小学生の麻薬中毒者
酒と喧嘩に明け暮れるモヒカンアナーキスト
親の金で毎晩のように遊びまくる金持ちの子
プライベートジェットを持つ実業家
大企業の重役
神父
麻薬の売人
娼婦
スラムの住人
殺す側と殺される側
道の住人

・・・本当に色んな人と知り合った。


色々な事を見て、聞いて、感じて、知って、経験した結果

私の中で『事情が違えど結局はみんな同じ「人間」』

という結論に至った。



「人」対「人」

それ以上でもそれ以下でもない。


そんな考えがあるせいか私は誰でも同じように接する。




さっき夜を切り撮るために散歩へ出かけた。

途中でビールを買い道路脇にあるちょっと高いところに腰かけ

道行く人たちを眺め、気が向いてはシャッターを押す。


一服していると道の住人らしき女性が話しかけてきた。


完璧にラリッて出来上がってらっしゃる。

何を思ったのか私の足元でおしっこをしだした。

「なにやってんの? あっちにトイレあるよ?」

と声をかけ、彼女を見下ろした。


用が終わった彼女は立ち上がり下着とズボンを時間をかけて上げてから、

「(私が用を足してるところを)撮った?」と聞いてきた。

そこから私と彼女の会話として成立してない会話が始まった。

彼女は中身不明のスミノフの瓶を片手に持ち、泣いたり笑ったり、いびきの様な音をだしたり・・・。

その間私は「ほら、風邪ひくよ」とか言いながら

何故か外へ顔を出てしまっているブラジャーや、

めくれてヘソが出てしまっている彼女のシャツを直したりしていた。


彼女が笑うと前歯が一本足りない真っ白な歯が見え、

彼女が泣くと内側が緑で外側へいくにつれて茶色へと色が変わる

綺麗なグラデーションを描く目がキラキラ光る。



私が彼女と話をしていると顔がとても小さく、小柄な体系の男性が話しかけてきた。

手に持つカメラを見て「メディアの人?インタビュー受けたら金くれる?」

そこから私と彼の会話が始まった。


彼は麻薬の売人だった。

商売の為に今自分の縄張りについたけど、イベントの準備をやってるのを知らなかった。
そのせいで警察が多いからさっさとブツを売っぱらいたい。
葉っぱを45g、粉もある。石も2gある。
ヤクやるんだったら少し買って助けてくれない?
買わなくてもいい。
道にいたくないからホテルに泊まるために10レアルでいいからくれないか。

と彼は言った。


丁重にお断りした。




帰り際に道の住人であろう女性は私へ飛びつき頬へキスをし、

昔からの友人であるかのようにハグをしてくれた。


売人の彼は終始紳士的な態度でとても礼儀正く

「それじゃ、おやすみなさい。帰り気を付けてね」

と、言ってくれた。





多くの人たちにとって彼らは存在しない透明な存在。

素通りし、煙たがり、見下す。



彼ら二人は優しい目をしていた。

私にとって彼らと話したひと時は素敵な時間で

久しぶりに綺麗な目を見てとてもいい経験をさせてもらったと感じている。





外見や地位など人を計るものは沢山あるが、

実際にその人がどのような人だなんて関わりを持ってみないと分からない。



なぜそこにいるのか、何故それをしているのか…。



せっかく同じ時代に生きているのだから、偏見や思い込みで人を判断し避けるのではなく

一歩踏み込んで少しでもいいからその人を知って欲しい。



その一歩が何につながるのか、その先に何があるのか

やってみない事には分からないのだから…。




そんな事を心から思った、今日という肌寒い晩…。