エスコンフィールドから、なるべく快適に帰るにはどうすればいいのか。毎回、ちょっとした悩みの種だ。人によって事情はさまざまだと思うけれど、球場で試合を観たあと、すぐに移動できるかどうかは案外、その日の満足度にも関わってくる。もちろん理想は、試合終了後もしばらくの時間、球場内にとどまること。ゆっくりと高揚感を味わい、余韻に浸る時間を持つこと。

 

僕の場合、その時間を仕事に充てたりもしている――なんてことを昨日書いたばかりだ。

 

しかしながら、もちろん人生には「すぐ帰らなきゃな」という日もある。次の予定があるとき。家族との約束があるとき。あるいは、なんとなく、今日はもうこのまま帰りたいという気分のとき。

そんなときの、とっておきの方法を伝えよう。それは、最終回が始まるタイミングで静かに席を立ち、「コカコーラ・ゲート」前に向かうこと。ここを出たすぐ先がバス乗り場だ。エスコンのコンコースは広く、ゲート付近にもスペースがあり、立ち見で試合を観ることができる。もう少し出口付近に行けば、大きなモニターもあるので試合を最後まで観られる。そして試合終了の瞬間に外へ出れば、すぐ目の前がバス乗り場。急げば――いや、走っちゃいけないけど――ほとんど並ばずにバスに乗ることができる。これは、実に合理的な動き方である。

 

唯一の難点は、ヒーローインタビューを見られないこと。勝ち試合の喜びを球場全体で分かち合う、あの時間。それをすっ飛ばして帰るのは、やっぱりどこか寂しい。あの瞬間の一体感は、何度体験しても心が震えるから。

 

昨夜のヒーローは、吉田賢吾。僕はこの名前を、シーズン前から何度も書いてきた。注目の選手だ。

 

 

昨年、ホークスから現役ドラフトでファイターズにやって来た吉田は、移籍一年目の春先からチャンスをものにしている。そして昨日、彼の古巣・ホークス戦でライトスタンドへプロ初ホームラン。捕手である彼らしく、そして元同僚・藤井投手の性格まで読み抜いた、見事な一打だった。

 

 

曰く、「藤井さんが首を振ったので、ここはストレートしかない」と思ったという。鋭く、美しく放たれた一打は、研ぎ澄まされた思考から生まれた。

元チームメイトや新しいファンの前で打った初ホームラン。その一打が、これからのキャリアにどれだけ大きな意味を持つか。吉田の努力が、少しずつ形になっていく瞬間に立ち会えたことが、僕にとっても嬉しい出来事だった。ライトスタンドでの吉田への拍手、声援が格別に大きかったこともつけ加えておく。

 

昨夜のもう一人のヒーローは、北山投手。6回まで投げて1失点。四球が多いのが彼らしくなかったが、ダブルプレーを二つ取るなど、粘り強い投球は実に彼らしかった。要所で、重量打線・ホークスの中軸から三振を奪う姿が頼もしい。この日のような落ち着いたピッチングを、年間を通して見せてほしい。

 

彼の投球には不思議と安心感がある。試合を組み立てる頭脳と大胆さを兼ね備えている。調子が良くないときでも、何とかして試合を壊さずに終える力がある――この安定感こそが、ファイターズの先発陣を支えているのだ。

 

ここまで5試合で4勝。競争の厳しい野手陣にも、明暗が分かれてきつつある。レイエスから野村と続くOPS10割超えの破壊的なスラッガーまで、どうつなぐか。決して好調とは言えない2番清宮も、勝利に徹し、意味のある打席を重ねているように、僕には映る。野球は、結果だけじゃなく“過程”にも意味がある。たとえ凡退しても、次につながる打席があると思うのだ。

まずは、待ちに待った大覚醒中の新4番・野村に、春先の打線を引っ張っていってもらおう。彼のバットから放たれる弾道は、見ているだけで胸がすく。彼がどんなシーズンを描いていくのか、それが楽しみで仕方がない。

 

 

ところで、昨夜の試合後は念願の「グラウンドウォーク」を楽しんだ。試合終了後に、エスコンフィールド内をじっくり歩くことができるのだ。特に急かされることもなく、写真や動画の撮影も可能だ。僕はこの楽しみを今季初勝利の後まで取っておいた。

 

 

内野の芝生に足を踏み入れ、外野のスタンドを見上げる。さっきまで歓声に包まれていた場所が、静かな時間を取り戻している。その空間に自分が立っているという、ちょっとした特別感。試合後の楽しみの一つとして、このイベントは本当におすすめだ。たった1600円だぜ! 次回はジンバルを持参して、じっくり動画を撮影しようと決めた。