少し前になりますが、川本真琴さんのツイートが話題になっていました。

 

 

 

七尾旅人さんもこのようなツイートをされていました。

 

 

ぼくもお二方のお気持ちは痛いほどわかります。サブスクとCD問題、本当に解決しようのない話ですものね。禅問答のよう、と言えるかもです。

 

ぼく自身の「音楽で食べていく問題」は、25年前にプロとしてデビューしてからずっとぼく自身の現実的な問題として今もあります。ぼくはこのキャリアのおそらく6~7割ほどの期間を、アルバイトや派遣社員、はたまたライブハウスに就職などして、「兼業」してきました。

 

これからも、ぼくたち「音楽家」はさまざまな工夫を重ね、「なんとかやっていくこと」が基本線でしょう。

 

それでも続けたい魅力が、「音楽」にはあります。

 

 

 

作曲家の成瀬英樹です!

 

作曲家にチャンスを共有する小さな会社「合同会社BINGO!」を立ち上げ、プロ作家養成の「ソングライターズ・ホーム」もご好評いただいております。

 

このブログでは、「ソングライターズ・ホーム」のメンバーのみんなとの作曲Zoomセッション内容を日誌的に書いております。

 

昨日のセッションも盛りだくさんでした。

 

 

 

9月29日(木)17:00  Sちゃん(20代 大学生)

 

来春に就職を控え「今のうちに楽曲を作るスキルをまとめて学んでおきたい」と、「ソングライターズ・ホーム」の扉を叩いてくれたSちゃん。楽曲コンペに提出するには十分の実力を持っていますが、より精度を高めたいとのこと。

 

水曜日に行われた「BINGO社内コンペ」の結果についての所感を話し合う。10名を少し超える同業の作家たちから、1位票が複数入ったことを。

Sちゃん的には一定の手応えを感じながらも、悔しい思いもある、と。

 

「悔しい」にはいろんなニュアンスがあります。今回のSちゃんの悔しさはとても良い悔しがり方、とぼくは感じました。

 

あせらなくてもいい。一曲ずつ丁寧に作り、コンペに挑戦し、その結果でまた改善していく。もう本当にそれしか方法はないのです。

そして、「楽曲コンペ」へのチャレンジは、就職してからでも、ずっと続けていけるもの。今のうちに、さまざまな楽曲を作り、トライすることが肝心。

 

ゆっくり、コンスタントに、作っていきましょう。

 

(そう言えば、ぼくがSちゃんの年齢の頃は、「音楽家になろう」とすら考えていなかったなあ..)

 

 

 

18:00  Tさん(20代 焼肉店勤務)

 

Tさんはトラックを作るのが得意な方。メロディにもセンスがあります。ただ、全体のバランスが少し個性的、不思議な展開に行くことが多いのですが、今回の作品を聴かせていただき、その原因がわかりました。

 

コードの付け方に独自のクセがあり、その「個性」の色がやや濃すぎたのです。ご提案として、Aメロは特に「常套句」的な普通の進行に変更する案をお見せしました。

 

今回の新曲はBメロからサビの流れがとても素晴らしく、全体に少しメロディを整えて、繰り返すべきフレーズはしっかり繰り返すように変更したらとてもキャッチーなサビになりました。

 

楽曲のキモである「サビの締め」を2小節プラスする案もお伝え。

次回は整えたトラックに合わせて、再度メロを軽くブラッシュアップすれば完成かと。

 

サビ頭の印象的なメロディに何か素敵な歌詞を考えてみてください、と宿題を出させていただき、終了。

 

 

19:00  Aさん(ピアノ講師)

 

Aさんは売れっ子ピアノ講師。そして貪欲にポップスの作曲を学ぼうとされている方。

前回Aさんにご提案したのは、「トラックのことは一旦忘れて、ピアノの弾き語りで、言葉とともにメロディを作ってみませんか?」ということ。

そしてできたいくつかの断片を送ってください、とお伝えしました。

 

今回4つほど、ピアノ弾き語りでボイスメモで送られてきた断片がすべてキャッチーで素晴らしかったのですが、一曲に絞りました。キャッチーなコードリフが印象的な、四つ打ちが似合いそうな楽曲。

 

Aさんは、リファレンスのイメージがあれば、アレンジをまとめる力は非常に高いので、「ピアノのボイスメモだけでも伝わる強いモチーフ」をまず考え、そこから広げていく作戦はうまくいきそうな気がします。

 

まずは「歌」ありきです。次回が非常に楽しみです。

 

 

20:00  Eさん(20代)

 

Eさんも、じっくりじっくり、伸びてきています。前々回の社内コンペにて、1位票も入ったことが自信になっていてくれたらいいな。

 

Eさんにもまず、「シンプルなコード」で曲を作ることをお願いしていました。前回から取り組んでいる楽曲、歌詞も曲もこれでほぼ完成のところまで来ました。

もし可能なら、ここからスパートをかけて、次のコンペに間に合わせたいと思うほど、良いメロディ。

 

「ここまでシンプルだと、物足りなくありませんか?」と訊くと、「最近、ポップスの形を意識して音楽を聴くようになって楽しいです」とお答えいただく。嬉しい。

 

ご提案として、今回はベースを外部の方に頼みませんか、とお伝え。このタイプのビートではどのようなベースが正解なのか、実際に弾いてもらえると一発でEさんなら理解できると思いますので、と。

あとはギターはぼくが弾きます。ライターズのメンバーの作品に関しては、もしぼくでよかったらギターを弾かせていただいております。

 

歌詞も、しっかりご自身の伝えたいことが書かれています。早く完成させたいね!

 

 

こんな感じで、日々、楽曲をみんなと作っていると、時間がたつのを忘れます。

夜、ベッドに横になると、みんなの曲の断片たちが頭の中でガンガン歌うんです。それはすごくぼくにとって幸せなこと。

 

音楽で食べていくのは本当に大変ですが、音楽を作って暮らすのはとてもとても楽しい。きっとだからこそ、続けていられるのだと思います。