よく、バンドや劇団などの武勇伝で、「あの頃は俺たちもよ〜、観客が三人でよ〜」みたいな変な自慢が始まることがあるだろう?(笑)
僕たちもそんな経験をしたんだよ。
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97年4月にデビューして、ひと段落したら、アルバムのリリースが控えていた。6月にFOUR TRIPSはファーストアルバム「Young Oh! Oh!」をリリースする。
これは全曲、アマチュア時代のライブ定番曲で構成されている、その時点での僕たちのベスト選曲だった。アルバムってのは後世に残るものだからね、今でも通販で買えるんだよ。
楽曲はなかなか悪くないと思うんだけど、やはりレコーディングの経験と知識がなかったこと、そして演奏や歌の稚拙さ故に、僕は全く出来には納得していない。しかし、納得していないなりに、当時のベストは尽くしたつもりだ。だからとても愛おしい(笑)そんなややこしい感情を、この「Young Oh! Oh!」には抱いているんだ。
続いて、アルバムリリースのタイミングで、大阪と東京のクアトロでのライブが決まっていた。それがね、笑って聞いて欲しいんだけどね、
まっっっっっったくチケットが売れなかったんだ!(笑)
つい2ヶ月前に神戸のデビューライブで500人を動員したバンドが、大阪ですら150人を集めるのがやっとだった。
でもね、よく考えたら、デビューしたばかりのバンドを観るために150人のお客様がチケットを買って観に来て下さる。それは大変なことだよ。本当にありがたいし、恵まれていた。今は心からそう思う。
だけど、当時はやはり、テンションの下がったライブをしてしまったと思う。時に焦って空回りしたり。どうしたんだろう、プロになってから、ライブがうまくいかなくなった感覚だったよ。あれほどステージの上での4人には、僕ら自信を持っていたのに。
それはやはり、デビュー曲「WONDER」がうまくいかなかったこと、アルバムも全く売れなかったこと。そんな気持ちが僕らの心に影を落としてしまっていた。
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そして渋谷のクアトロのライブ。あの広いクアトロに30人お客様がいたかなあ。辛い記憶を、今呼び覚ましてるんだけど、最前列の柵の前に10人くらいのお客様がいた。そして、ガラガラの広いフロアの遥か向こうに、その他のお客様と関係者の皆さんが、後方の壁にべたっとくっついて並んでいる光景が思い出されるよ(笑)
そういう場合ってお客様の方が、なんだか申し訳なく感じるみたいで、演奏を楽しむなんて感じにはならないよね。
そう、デビュー曲の「WONDER」がヒットするという大前提で始まったFOUR TRIPSのプロジェクトだったから、「WONDER」コケたら、皆コケた、みたいなね(笑)そんな状態になってしまった。
特にずっと関西だけでライブ活動をして東京ではワンマンライブはおろか、イベントなどにも出演した事がなかった僕たちに、いきなり渋谷クアトロは荷が重いよね。スタンディングだと800は入るハコだよ!そこに30人って!!(笑)
僕はバンドのリーダーだったから、しっかりと「渋谷クアトロを埋めるのはまだ難しいと思います」と言うべきだったんだ。なんとなく大丈夫だろう、と流されてしまった。後悔、なんてしてもしようがないけど、メンバー達に辛い思いをさせてしまったと思っている。
後日談として付け加えておくと、その数ヶ月後の、千葉のライブで、ついに僕たちはやったんだよ。やってしまったんだよ。なんとお客様3人!!!メンバーの方が多い!!!!どうだすごいだろう??
ライブが終わるや否や、お客様が恥ずかしそうに、走って帰ったもんね。僕たちその背中を見つめて、何を思ったんだろうね!(笑)
いや大丈夫、辛くないよ、泣いてないからね!!(笑)
いつもありがとうございます!
成瀬英樹