95年の年明けすぐの、レコード会社へのプレゼンライブが期待外れの結果に終わっても、伊藤銀次さんは僕たちを見捨てなかった。「成瀬。諦めずに、どんどん曲を作って他のレコード会社にも聴かせよう!」「ありがとうございます!頑張ります」
95年は勝負の年だと思ってた。もう27歳になる。デビューが決まらないと、30が視界に入ってくる(笑)30歳でメジャーデビューなんて、当時はね、考えられなかったんだよ。
吉本興業には「もう辞めます」と伝えていた。同期のバンド「brats on B」がデビューに向けて動いてた。ここに居ても、僕たちにもうチャンスはないと思ったんだ。吉本のボスの比企さんには引き止められたけど、僕たちは覚悟を決めていた。「僕ら吉本辞めても、絶対に売れますから、まあ見といて下さいよ」くらいは言ったと思う。何の根拠もないのにね。いや、当時の僕なら、それ以上の啖呵を切った可能性もあるな(笑)
1月16日も夕方から僕は自宅で作業をしていた。家の近くのコンビニでのバイトを終え、新曲「あきらめない季節」の何度目かのリライト。
深夜まで歌詞を書いたり、本を読んだり。ベッドに入ったのはいつものように深夜2時くらいだったのかな。明日も朝からバイトだ、と思っていたのか。
そして、1月17日。早朝5時46分。阪神・淡路大震災。神戸の街は、まさに壊滅的な被害を受けた。僕が青春を過ごした大好きな街が、一瞬にして、丸ごと消えてしまったんだ。
メンバーと連絡が取れたのは、震災発生の数日後だったよ。
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キーボードのSさんの自宅が全壊し、彼女のご家族は自宅前の公園にテントを張り、近所の方々で焚き火を守りながら暮らすことを余儀なくされた。本当に大変なことだったと思う。
震災の数日後、吉本興業での最後の出演イベントが決まっていたので、僕はベースの池田の原付の後ろに乗せてもらい、心斎橋の2丁目劇場に向かうことにした。Sさん抜きの3人でライブは敢行する。できる限りの事はしなくてはいけないと思った。
原付の二人乗りも、警官に止められることはなかった。三ノ宮から東に向かう。六甲、御影、芦屋、西宮。当たり前に暮らす、当たり前の日常が、実は当たり前ではない、という事を痛感する。瓦礫の山。視界を遮るほどに白く煙る街。倒れた高速道路。
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心斎橋は、神戸に比べると被害も少なく、通常通りに見えた。
2丁目劇場の最後の出番は、FOUR TRIPSの4人で出演することが出来ず、残念だった。それでも、何とか3人は集まることが出来て、スケジュールに穴を空けずにすんだ。
FOUR TRIPSと「スターサイン」「TAB」の3バンドでのイベントだった。皆、ビートルズを一曲ずつカバーしよう、ということになっていたんだけど、僕たちは合わせる時間がなかったから、ライブのレパートリーとして持っていた、バッドフィンガーの「嵐の恋」を演った。
いつも弾いてたリッケンバッカーではなく、誰かに借りたエピフォンのカジノを弾いた記憶もある。
アンコールでビートルズの「A Hard Day's Night」を皆でセッションしたんだ。TABとスターサインがノリノリで演奏しながら跳ねていた。僕はそんな彼らをぼんやり眺めていた。その光景はすごく覚えている。
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Live Information
大阪のライブが決まりました!
■2018年12月1日(土)
成瀬英樹 生誕50祭@大阪
「ただいま!マスター!大ちゃん連れて帰ってきたでー!」
出演 成瀬英樹/白井大輔
場所 5th Street
http://www.5th-street.com
大阪市西区南堀江1丁目1-12 浅尾ビル2階・3階
開場 18:00 開演 19:00
料金 2800円 当日 3300円
2018年12月10日(月)
「成瀬英樹・生誕50祭 / ヒデキ感激!ナルーソニック!」
出演:
成瀬英樹
スペシャルゲスト:
石田ショーキチ
黒沢秀樹
榊いずみ
SOWAN SONG
etc.
座り席が残り少なくなっております!
下北沢 風知空知
時間:開場18:30/開演19:30
料金:前売り¥2,800/当日¥3300
(共に+1Drink600円)
風知空知メール予約のみ(先着受信順整理番号付き)
●メール予約:風知空知 yoyaku@fu-chi-ku-chi.jp
*ご希望公演名、お名前、枚数、ご連絡先電話番号をご明記の上、お申し込みください。