自転車に乗った女の子が僕を追い抜いて駆けていく。
少し遅れて、またひとり。
「お姉ちゃん、待ってよー!」
先を行くお姉ちゃんは、誇らしげに妹が追いつくのを待った。
全速力の妹が やっと追いついたとき。
ビュー ザザザー 強い風が吹いた。
妹のピンクの帽子が風で舞い上がった。
あわてて手を伸ばしたけれど、届かなかった。
お姉ちゃんも手を伸ばしたけれど、届かなかった。
「お姉ちゃん、ぼうし……」
妹は涙声になっていた。 「……もう、届かないよ」
お姉ちゃんは、自転車をおりると、妹とおそろいの帽子をぬいだ。
しばらくすると、お姉ちゃんの待っていたものがやってきた。
強い風だ。
その風に乗せるように、帽子を手放した。
お姉ちゃんの帽子は、ぐんぐん舞い上がって、妹の帽子と並んだ。
帽子についたリボンがからみ合って、ひとつになった。
「ちょうちょ みたいだね」
妹はもう泣いていなかった。
雲ひとつない真っ青な空に帽子が吸い込まれてしまうと、ふたりはまた自転車を走らせた。
僕はかぶっていた帽子に手をやった。
次に風が吹いたとき、この帽子も飛んでいくんじゃないか。 そんな気がした。
少し遅れて、またひとり。
「お姉ちゃん、待ってよー!」
先を行くお姉ちゃんは、誇らしげに妹が追いつくのを待った。
全速力の妹が やっと追いついたとき。
ビュー ザザザー 強い風が吹いた。
妹のピンクの帽子が風で舞い上がった。
あわてて手を伸ばしたけれど、届かなかった。
お姉ちゃんも手を伸ばしたけれど、届かなかった。
「お姉ちゃん、ぼうし……」
妹は涙声になっていた。 「……もう、届かないよ」
お姉ちゃんは、自転車をおりると、妹とおそろいの帽子をぬいだ。
しばらくすると、お姉ちゃんの待っていたものがやってきた。
強い風だ。
その風に乗せるように、帽子を手放した。
お姉ちゃんの帽子は、ぐんぐん舞い上がって、妹の帽子と並んだ。
帽子についたリボンがからみ合って、ひとつになった。
「ちょうちょ みたいだね」
妹はもう泣いていなかった。
雲ひとつない真っ青な空に帽子が吸い込まれてしまうと、ふたりはまた自転車を走らせた。
僕はかぶっていた帽子に手をやった。
次に風が吹いたとき、この帽子も飛んでいくんじゃないか。 そんな気がした。
![帽子](https://stat.ameba.jp/user_images/20090426/17/narunabe/6e/ec/j/o0600045010171498555.jpg?caw=800)