☆.。.:*きらりん+.☆きらきら○o。..:* -3ページ目

 

君は薔薇の花が好き。

特に、真紅の薔薇には、何か思うことがあるらしい。

 

特別な日は、真紅の薔薇なの。

 

この言葉のとおり。

普段家に飾っている薔薇は、実に色とりどりだ。

ピンク、黄色、紫、オレンジ、そして。

 

もうひとつは、青薔薇なの。

 

青い薔薇。
薔薇には青い色素がないのだそうだ。

それが近年になって。

薔薇に青い色を乗せることが可能になった。

 

一輪ずつ届けられる青い薔薇。

淡い青の薔薇。

花言葉は、奇跡。

不可能を可能にする。

 

真紅の薔薇は、情熱。

 

この2種類の薔薇は君にとって特別。

必然的に私にとっても特別な薔薇。

 

結婚して、5年。

結婚記念日には、様々な薔薇の花束を。

 

今年はどうしようか。

君はどうやら真紅のワンピースを着るらしい。

 

それなら私は真紅の薔薇を贈ろうか。

本数は5本がいい。

意味は「君に出会えた事の心からの喜び」。

 

結婚記念日当日に、頼んでおいたフラワーショップに急ぐ。

できていますよ、と差し出された5本の真紅の薔薇の花束。

今回はミニブーケにしてもらった。

少しボリュームを出すためだろう。

白いかすみ草が添えられている。

 

ありがとう、これなら彼女も受け取ってくれるだろう。

 

奥さまは幸せですね、と店員の話が頭を流れて行った。

普段は質素すぎるほど質素な君だから。

結婚記念日の前だけは、入念に準備する君だから。

私も気合を入れて、毎年の花束を用意する。

 

次に、予約しているレストランに急ぐ。

君のためのケーキが出来ているはずだ。

 

これでいかがですか?

 

差し出されたケーキを見て、驚いた。

薔薇にちなんだケーキにして欲しい。

そう頼んでいたのだけれど。

 

これは…、すごいですね。

こんなケーキは初めてだ。

 

してやったり、といった表情のパティシエ。

 

パティシエとしては、負けているんですが。

これに勝るものはないと思ったんですよ。

びっくりさせたい、とおっしゃられていたので。

 

確かにこれには君もびっくりしてくれるだろう。

ディナーの最後に出してもらうようにお願いした。

ケーキなのだから、やはりデザートだろうから。

 

私の準備は整った。

ミニブーケを持って、家へ帰る。

玄関の前に、真紅のドレスを着た君が待っていた。

 

おかえりなさい。

 

綺麗な笑顔を見せてくれた君に。

 

はい、ブーケをどうぞ。

待たせてしまったかな。

 

ゆっくりと首を振る君。

ブーケを手に取ると、そっと香りを楽しんでいる。

 

気に入ってくれたかな?

 

そう尋ねると、君からの質問がくる。

 

5本の薔薇の意味って何?

 

本数の意味。

それを聞いたら、君は喜んでくれるだろうか。

 

「君に出会えた事の心からの喜び」。

5回目の結婚記念日だから5本。

ということもあるのだけど。

 

だったら、私が準備した薔薇も渡したい。

 

傍に置いていた紙袋から一輪の薔薇。

その色は。

 

青い薔薇、だね。

「喝采」だったっけ。

 

うん、と頷く君。

 

ありがとう。

今日のスーツのポケットに使わせてもらうよ。

着替えるから、君も一度家に入って。

 

そう促すと、大事そうにミニブーケを抱きしめる君。

ふと、視線が一点に止まる。

 

どうした?

 

そう聞くと、ちょっと嬉しそうな君。

 

この真紅の薔薇。

今日の私のルージュと一緒ね。

 

ブーケを覗き込んで、薔薇の花びらに触れる。

微かに君のルージュの色が移っている。

 

ちょっと直さなきゃ。

 

そう言って、君の唇を撫でる指先に恋したのは私。

いつもはキュートなイメージの君。

こういう時だけセクシーになるのは、君が仕掛ける罠。

 

せっかくだから、罠にはまりにいこうか。

君の唇を撫でる指を引き寄せて、指先にキス。

くくっと君は喉の奥で忍び笑い。

 

ずるいな、私が君に敵うわけないのに。

 

今日だけよ、いいでしょう?

 

今度は小悪魔モード。

様々な君の面が、次々と現れるのが結婚記念日。

そんな貴重な1日が年1回ある。

それはすごく幸せなことではないだろうか。

 

家に入って、急いで着替える。

青い薔薇に合わせて、ブルーグレーのスーツを選ぶ。

胸に青い薔薇を差して、髪を整えて部屋を出る。

 

パチン、パチン。

ハサミの音がキッチンから聞こえてくる。

その音に誘われて、キッチンへ入ると。

君がブーケを解いて、花瓶に入れ替えていた。

 

せっかくのブーケだし、長持ちさせたいし。

 

そう言ってにっこり笑う君は、とても爽やかだ。

あとは、無邪気に喜ぶ子供のような君が見たい。

 

 

 

 

ディナーは、予約しておいたレストランで。

個室を用意してもらっていた。

ワインは上質なものを。

料理はオーソドックスだけれど、見た目も楽しめるフレンチ。

 

ゆっくり料理とワインを味わって。

ここ1年の思い出を話していたら。

あっという間に時間は過ぎる。

 

通常なら食後はコーヒーになるのだろうけれど。

君が好む紅茶を楽しみながら。

 

奥さま。

 

パティシエが大きな箱を持って、君に呼びかける。

 

旦那さまからのお祝いのケーキをどうぞ。

 

そう言って、君のティーカップの位置を変えて。

君の真正面に大きなケーキの箱が置かれる。

 

これ、ホールケーキ?

 

目を丸くして、私に問いかける君。

 

いいから。

開けてみて。

 

君が蓋を開けた瞬間。

豊潤な薔薇の香りが広がった。

 

え、これって…。

 

箱に入っていたのは。

本物の薔薇で埋め尽くされた大きな薔薇のケーキ。

ブーケにも使った真紅の薔薇。

 

びっくりした?

そう問いかけながら、君の表情が変わっていくのを見守る。

 

すごい!

素敵!!

綺麗!!

ありがとう!すごく嬉しい!!!

 

歓声を上げる君。

それを見て、パティシエと私は目を合わせて頷き合う。

子供のようにはしゃぐ君は、本当に微笑ましい。

 

どうやら、今年の結婚記念日は成功のようだ。

これまでの4回も失敗はなかったけれど。

来年は、どう君を楽しませようか。

 

でもそれは明日から悩むことにして。

今は、喜んでいる君を見ているだけで幸せだ。

胸に差した「喝采」という名の青い薔薇。

まさに喝采だ。

 

願わくは。

しわくちゃな顔になってからも。

こうやって、結婚記念日を楽しめるといい。

 

そう思いながら、薔薇に楽しげに触れる君を見て。

 

改めて、君を愛おしいと思った。

 

 

 

 

 

「恋唄100題 その一」

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