☆.。.:*きらりん+.☆きらきら○o。..:* -2ページ目

 

私は、夜が好き。

 

満月の明るい夜も。

新月の星空も。

 

満月の夜は、なんとなくわくわくする。
何かが変わった気がして。

今までは必要だったもの。

ここを折り返し地点にいらないものになっていく。

 

次のステップに上がるための大切な夜。

次はどんなものが必要になっていくのだろう。

 

新月に向けて。

いらなくなったものを捨てていく。

 

感謝を込めて、さようならを言う。

 

もう読んでしまった本。

お守りにしていた雑貨。

ちょっとしたおまじない。

 

今まで私を助けてくれて。

今まで私を守ってくれて。

 

ありがとう。

 

スマホの連絡先も思い切って整理する。

もうずっと連絡のない友だち。

何度もメッセージを送ったけれど。

返事の来ない君たち。

 

多分、君たちに私はいらなくなったのだろう。

だから、私も君たちにさようならを言う。

 

次の新月の夜に向けての儀式のようなもの。

私は往生際が悪いから。

思い切って捨てることがなかなか難しい。

 

スマホの中の、いらない写真も削除する。

ある意味思い出のつまった写真だけれど。

そこに囚われ続けるのは良くないと思うから。

 

そうして、新月の夜が来る。

 

月のいない、真っ黒な空に瞬く星々。

新しいことを始める夜。

 

この夜は、いつもちょっと苦手。

自己肯定をすることで、成長できる開始の日。

この、自己肯定、が私は苦手。

 

自分を信じきれない。

よく、願いが叶った自分を宣言するのだけれど。

 

アファメーションと呼ばれているこの自己肯定。

 

私の中では、自己肯定を唱えながら。

そんなの無理に決まってる。

そう囁く声がある。

 

この囁く声。

なかなか消えない声。

だから私の願いは叶わない。

 

もう一度会いたい人。

 

すれ違いでもいい。

君が私に気づかなくてもいい。

 

会いたい。

 

でも、多分会えないんだろう。

今、君がどこにいるのかもしらない。

君がどこに勤めているのかもしらない。

活動範囲が重なっているとは思えない。

 

私はずいぶん遠くまで来てしまったから。

君が知る私とは、私はだいぶ変わった。

 

でもそれは君も同じかもしれない。

私が知る君。

君は歳を重ねても印象が変わらない気がしている。

 

でも本当に。

君を見て、私が「君だ」と認識できるのか。

 

会いたい。

でも会えないんだろう。

 

この「でも」がある限り、会えないんだろう。

 

静かな夜。

少しずつ、ひっそりと形を変えていく月。

 

満月まであと少し。

少しふくらんだ、おまんじゅうのような月。

満月もいいけれど、明るさを増しつつある月。

こんな月夜も悪くない。

 

だから、月と星空を楽しめる今夜。

夜の散歩をすることにした。

 

少し膨らんだお月さま。

帰ったら抹茶でも点てようかと思いつつ。

川縁の道をゆっくり歩いていたら。

 

すれ違ったワゴン車が背後で急ブレーキ。

 

まさか事故じゃないかと。

振り返ると、急いで車から降りてきたのは。

 

え?

 

駆け寄る君に絶句した。

 

君だよな? 一緒に働いてた。

私がわかる?

 

わからないはずはない。

20年経っているけれど、君は変わらない。

あの頃と同じ。

強面の顔で満面の笑み。

 

あぁ、会えたのか。

 

わかるよ。私は君がわかる。

変わっていないね。

 

それは私のセリフだ。

雰囲気が全然変わってない。

あの頃のままの君だ。

 

視線を合わせて、そして微笑む。

 

少し膨らんだ月。

その柔らかな月光に、君の笑顔が照らされている。

 

月夜の再会だなんて。

相変わらず君はロマンチストなんだね。

 

私がそういえば、心外という顔で。

 

それは君だ。

君は昔から星空と月空が好きだっただろう?

 

覚えていたの?

 

問い掛ければ、当然だろ、と返事が返る。

 

星と月の話で、私についてこられたのは君だけだ。

一緒に仕事をしていたとき。

君は毎月プラネタリウムに行っていたじゃないか。

 

…知っていたんだね。

君の話を理解するために一生懸命だったもの。

 

そう言えば君は知らなかっただろうけれど。

 

と君は続ける。

 

私も毎月プラネタリウムに行っていたんだ。

君の新しい知識についていくためにね。

 

懐かしそうな表情で君が言う。

 

ということは。

お互い、相手の話についていくために。

毎月プラネタリウムに通っていたというわけ。

一生懸命だったあの頃を思い出すと、笑えてくる。

 

星空と月空の今夜、君に会えてよかった。

 

そう告げれば、そうだな、と答えが返る。

その時、ワゴン車から「おぉい」と君を呼ぶ声がした。

それに、今行く、と答えて、君はスマホを取り出した。

 

LINEだけ、交換しておかないか?

 

異存はなかったから、私もスマホを取り出す。

フルフルとスマホを揺らして。

お互いのスマホにお互いのアカウントが追加される。

 

また連絡する。
じゃあな。

 

ワゴン車に走って戻り、そして車影は暗闇に消える。

 

私の手の中には、君のアカウントの入ったスマホ。

こんな形で君と再会できるだなんて。

 

新月の祈り。

どうせ届かないと諦めていた。

でも、諦めきれないでいた思いがあった。

 

会いたい。

でもどうせ会えない。

 

会えない。

でもどうしても会いたい。

 

どちらの思いが強かったのだろう。

 

満月の祈り。

捨てるに捨てられなかった君の写真。

 

20年間の思いの勝利かな。

 

呟いて星空を見上げる。

月はまだ淡く輝いている。

 

あの月が満月になったら。

 

今度は偶然ではなく。

君と会う約束ができるといい。

 

月夜の再会。

 

願い事は叶うものなのだと。

この夜、私は知ったのだった。

 

 

 

 

 

「恋唄100題 その一」

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