最近暑くなって…、連日飲んだくれてしまい、今日は変な時間に起きました…。
ものくそ地味な内容です。地味変ドリクス。
個人的に、「良いスーツ」の「最低限の条件」と考えているものがいくつかあります。
①「裾の裏地取り付けが手纏りである事」
これは傍目から見ても(私のような縫製オタクには)わかってしまいます。ミシン縫いだと表地に影響が出てしまうんですよね。
↓某エーボンハウスのトリプル(三重)手纏り。やりすぎか。
②「肩部分での袖付けが手仕事である事」
袖付けと袖先の裏地取り付けが手纏りであることが基本ですが、「最低限」、肩部分は手仕事で納めて欲しいです。余分な裏地が袖から飛び出すようなことがおきない様に。
そして
③「毛芯を使用している事」
今回のテーマはこれです。最近の「ナポリスタイル」などと呼ばれるアンコンストラクテッド(アンコン)な作りは例外ですが、一般的なスーツ・ジャケットではラペル、身頃についてはハリとボリュームを出す為に「芯地」が使われます。
実は今時「接着芯」だけのスーツなんてないやろー! と思っていたのですが、調べると意外とあるみたいです。(某サイトで某ドイツの某「H・B」がケチョンケチョンに貶されてました)
私の所有してる物では「BARREAUX」や「LQ(Y’sの下位ブランド)」のカジュアルな物位です。
夏物でほぼ「アンコン」に近い物ですね。
↓右側のフェルトのような物が「接着芯」です。もちろんコシも弱いですし、水濡れすると剥離してしまい、ヨレやシワなどのトラブルとなります。この商品はほぼアンコンなのでさほど問題ありませんが、コシが無い為、前身頃の見返しのある部分と無い部分での折り目が出てしまって、気になります。
そして「毛芯」を使っている場合は、ラペルの裏側に「ハ刺し」と呼ばれる「ハ」の字状の「すくい縫い」で「芯地」を取り付けます。
↓ラペルの裏側にすくい縫いの点のような糸が見えますか?(画像は80年代末頃の「リングヂャケット」)
このすくい縫いの際に芯地に「ユトリ」を持たせる。そして「ユトリ」を調整する事で、ラペルの「返り」、「ロール」の加減が出来ます。
そして「ハ刺し」にも2種類あります。手仕事による「手ハ刺し」とルイスミシンによる「ミシンハ刺し」です。
この二つの区別は難しいのですが、「手ハ刺し」の方がやや「すくう」糸の量が大きく「ムラ」があります。
この「リングヂャケット」の物は(確定ではありませんが)手仕事っぽく見えます。
左から「GALAMOND」「AVONHOUSE(クリフォード期)」「SILKMEN by GALAMOND」です。
見えにくいですが全て「ハ刺し」があります。見えにくいと言う事はミシンによる可能性が高いですが。
ミシンがダメという訳ではなく、だいぶ昔の「英国屋(銀座のオーダーメードの老舗)」でもラインによってはルイスだったと言う記述を見た事があります。
裏を見た場合はミシンの方が綺麗かもしれません。ただ「ユトリ」の持たせ方、調整が手仕事の方が楽なようです。
ごく初期に購入したポールスミスのスーツが、非常に薄い生地にもかかわらずラペルのロールが非常に強くて美しかったのですが、確か手仕事だったと記憶しています。
ブルーの「SILKMEN by GALAMOND」のリネンジャケットは、ほぼアンコンに近い、薄くて軽い仕立ての物ですが、しっかりと「ハ刺し」で仕立てられています。しかもすくっている糸の量からすると、もしや手仕事なのではないでしょうか…?(ミシンの方がすくいが小さく、均等にすくいます)
…デザイナー・前田誠氏のこだわりには底の知れないものがあります。