遠藤英嗣先生の記事が日本経済新聞の2017年8月10日に載っていました。

 家族信託の内容を咀嚼し、要約して伝えます。

 

 自分の死後 家族が心配
 家族信託 生活を安心設計
 ◎ 家族信託とはどのような制度ですか
 平成19年に信託法が改正され活用できるようになりました。
 信託銀行のような商事信託とは異なるものです。
 自分が年老いて判断能力が低下した時や死んだ後などに家族が問題なく暮らせるため。
 成年後見制度や遺言では対応できる範囲が不十分。
 この不十分さをカバーするために家族信託ができました。

◎   認知症の妻がいるケース
 これまでは夫が財産を相続させる長男に妻の面倒を見てほしいと遺言していました。
 しかし、理由をつけて面倒をみないケースもよくあります。
 妻が着実に生活できるよう、設計するのが家族信託です。
 方法は、信頼できる家族に財産管理を信託します。
 認知症の妻は、故人から財産を託された者から生活費等を受け入れます
 
◎ 家業を継ぐといった時
 事業を手がける親は、まだ元気なときに後継者にしたい子どもと信託契約を結びます。 会社に貸している不動産や株式を信託財産として後継者に託すとよいでしょう。
 事業承継を遺言に頼り死後に後継者を明らかにすると、トラブルになることが多いです。

◎ 指図権という方法
 信託契約を結んでも、「指図権」という権利を確保しておけば議決権を行使できます。 親が亡くなり、株式が相続で後継者以外に分割されても後継者が議決権を行使できます。  そこで、事業に支障が出ることはありません。

◎ 成年後見制度との関連
 認知症になり成年後見人をつける必要があるとき、家庭裁判所は弁護士などを選びます。 その場合、家族と対立することもあります。
 成年後見人は父親の利益を考えて行動をします。
 状況によっては家族の意向とは別に事業用財産を売却することもありえます。
 家族で事業を引き継いだり、財産を管理運用するためには信託をするとよいです。

◎ 任意後見制度の利用
 親が認知症になる前であれば信託できる親族らを「任意後見人」に選べます。
 認知症になったときは、その人が後見人になり家族の状況を理解しながら後見できます。

◎ 家族信託を始めるときの注意事項
 金融機関で信託口口座を作るには、公正証書で家族信託を作るべきです。
 口座は信託された人の名義です。
 その人個人の預貯金ではなく、相続財産にならない特殊な口座を作ります。
 一部の信託銀行、信用金庫など対応する金融機関はでてきました。
 しかし、こうした口座をつくれる金融機関がまだ少ないのが現状です。
 家族信託を設計する人は、遺言・相続、成年後見人実務に精通ていることが不可欠です。 財産を持つ側、引き継ぐ側が認知症になり判断能力がなくなったとき等があります。
 その時のいろいろな変化を想定しなければならないからです。
 ただ、こうした設計ができるプロは少ないです。
 金融機関や公証役場で紹介してもらうのがいいでしょう。