野党は何故弱いのか | 大人のための政治教室

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今の野党が90年代や2000年代の野党に比べて弱くなったと感じる方も多いと思います。

事実、今の野党はかなり弱いです。

 

では、何故野党は何故弱いのかを考察したいと思います。

結論から申し上げますと、今の野党が無能なのではなく、権力を持ち合わせていないだけです。

国民が野党に権力を与えなかったから、野党に力がないのです。

 

1.野党の仕事とは

まず、野党の仕事は何であるのかのおさらいです。

国会議員の仕事については下記にまとめてあるのでご覧ください。

 

その中で野党の大きな仕事は、行政の監視と政策提案です。

行政の監視は行政が不正を行っていないかどうかをチェックすること、政策提案は野党が政府立法の修正案を出したり、議員立法にて提案したりすることです。また、与党案の問題点を指摘してそれを国民に提示し、国民の賛否を求める行動も取ります。

 

 

2.数の力

国会において最も強い力は数の力です。数の力がなければ、議員立法提出、内閣不信任案提出だけでなく、国会での質問もできませんし、国会での質問時間も数が多い会派ほど長くなります。また、数が多い会派は委員会の委員長を排出できて議事の主導権を握ることができるだけでなく、委員会の過半数を獲得すれば与党の賛成だけで議決できてしまいます。

 

 

3.現在の国会

現在の国会は、衆議院では自民公明の与党が絶対安定多数を遥に上回る306議席を有しています。これは、全ての委員会で委員長のポストを独占できるだけでなく、全ての委員会で過半数の委員を確保することができる議席数です。

なお、参議院は自公で140議席という安定多数を確保しており、絶対安定多数とまではいかないものの、これと同等の力を有しています。

自公だけでこの数字ですから、事実上の閣外協力をしている日本維新の会を加えると、更に強大な力となります。

つまり、国会において与党が極めて強い状況で、野党が極めて弱い状況です。

こういう状況で野党が与党案を修正させたり、野党案を可決させることなど極めて困難な状況です。

「野党は口ばかりで仕事をしていない」と言って野党を批判する人がいますが、野党が仕事できるだけの権力を国民が与えていないからできないのです。今の野党というのは55年体制以降最弱の野党なのです。

 

 

4.過去の国会

例えば、2007年7月から2013年7月の安倍、福田、麻生、鳩山、菅(直人)、野田、第2次安倍政権(初期)は参議院で与党が過半数に満たないねじれ国会でした。ねじれ国会ですと参議院では与党が弱く、野党が強い状況ですから、野党も様々な活動ができるようになります。

また、2000年から2005年までの森・小泉政権では、衆参共に自公がギリギリで過半数を維持している状況で、維新のような衛星政党も存在しないため、ねじれ国会ではないものの、与野党の議席数が拮抗していたので、与党がそれほど強くなく、野党もある程度の強さがある状況でした。

 

 

5.政党助成金

政党助成法に基づいて税金から各政党に政党助成金が支給されます。

政党助成金は国会議員の人数や直近の選挙の得票数などによって決まります。

つまり、与野党の議席数が拮抗していれば与野党にほぼ同額の政党助成金が支給されますが、与野党の議席数に大きな差があれば、与野党に大きな資金力の差が生まれます。

政党助成金は政党本部や支部の運営費、選挙活動費、政党支部費などに充てられます。

資金力は選挙の結果に直結します。

よって、選挙で負けたことで政党の活動費が少なくなり、活動費が少なくなったことでまた選挙に負けるという悪循環に陥ります。

 

 

6.野党が力を取り戻すとどうなるのか

野党が力を取り戻すと、熟議の国会になります。現在のように野党が弱すぎると、与党は野党を無視して議決を強行採決することができてしまします。野党がいくら修正案を提案しても、無力化してしまうのです。

しかし、野党が力を取り戻すことで、与党は野党を無視できなくなり、熟議の国会となり、野党の修正案をある程度受け入れなければならなくなります。

与党が強いと与党が野党や国民の意見を無視した行政運営ができますが、与党が弱くなると無視できなくなります。

 

 

7.野党が力を取り戻すには

野党が力を取り戻すためには、国民が選挙で野党を伸ばす必要があります。政権交代が起こらなかったとしても、2000年や2003年の衆院選のように与野党が拮抗する議席数となれば、与党の力が落ちて野党が力を取り戻します。これだけでも大きな意味があります。

かつてのような迫力のある国会を取り戻すためには野党を伸ばして与野党の議席を拮抗させる必要があります。

 

 

次期衆院選は現在の強すぎる与党、弱すぎる野党という構図のままの国会とするのか、政権交代が起きるにせよ起きないにせよ与野党の議席を拮抗させて迫力のある国会を取り戻すことができるのか、その分岐点になりそうです。