いうことを思い出したのが、玉岡かおるの「お家さん」

お家さん

を読んだときです。

今年の5月9日に読売テレビ開局55周年記念ドラマとして放映されましたのでご覧になった方も多いと思います。

大正から昭和にかけて神戸を中心に活躍した商社「鈴木商店」の女主人 鈴木よね

鈴木よね

と大番頭 金子直吉

金子直吉

の生涯が、ちっぽけな神戸の洋糖輸入商から一時期は三井・三菱を凌駕する売り上げを誇り、スエズ運河を通る船の半数は鈴木商店のマークの入った商品を積載している、と言われるほどになりながら、米騒動でコメを買い占めているという悪評にさらされ(鈴木商店が買占めをした事実はないようです)、やがては昭和初期の金融恐慌を直接の原因として事業停止・清算に追い込まれていく過程とともに描かれています。

因みに、鈴木商店は「破産」したのではありません。
昭和2年の事業停止後、鈴木商店を整理会社としてすべての事業の整理が図られ、一切の債務を弁済したのが昭和8年のことです。

小説終盤で舞台回しの一人の女性が言う
・・・「そやから鈴木商店は、ただの一人として泣かせておりませんし、どなたにもご迷惑はかけとらんわけだす。」・・・

現在、この鈴木商店の系譜に連なる会社としては、
・双日(商社)
・神戸製鋼所
・帝人
・サッポロビール
・石川島播磨重工業所
・昭和シェル石油
と、錚々たる会社があり、往時の鈴木商店のすごさを感じます。

なにゆえ、鈴木商店とヘーゲルが、ということですが、この鈴木商店の大番頭金子直吉の二男が、前回のブログでご紹介したF教授が日本のヘーゲル研究者として紹介した金子武蔵なんです。

不勉強でしたが、私もこの「お家さん」を読むまではこのことは知りませんでした。

さらに、この金子武蔵は、和辻哲郎の後任として東大教授に就任し、その後東大文学部長も歴任した哲学者ですが、結婚した相手が日本を代表する哲学者の一人である西田幾多郎

西田幾多郎

の六女。

新郎の父である金子直吉と新婦の父である西田幾多郎は、結婚式で初めて顔を合わせ、一度あいさつしたきりでそのまま別れた、という逸話をこの「お家さん」を読んだ以後に知りました。

事業欲旺盛な実業家・金子直吉と浮世離れした哲学者・西田幾多郎とではその生き方や考えなどに接点はないでしょうから、ありうる話ではありでしょうね。

鈴木よね、金子直吉、西田幾多郎の画像はネットから取得しました。