母親からの愛情を

いっさいあきらめて

自分という存在に 価値というものを感じられなくなった少女は

「そこにいるだけ」

という日々を送ります。





恐怖で子供を操ることが、威厳を保つことだと思っていた少女の父親は


彼女の気持ちが、暗く閉ざされてしまったことなど


まるで気がつくことはなく


むしろ父親が不機嫌にならないように


細かなところまで気がついて、先に先に立ち回る少女のことを


そのことについて便利な気が効く存在だったと


語っていたといいます。




母親からの愛を  諦めることで心を守り


父親の怒りで恐怖にさらされないよう、彼の機嫌を保つことに必死になり





いつしか


少女は


自分の感情を感じとることすら



うまくできなくなっていったようです。






自己肯定感…  圧倒的に欠如していたのは

この感覚でした。





この感覚を取り戻すのに

何十年もかかったと

彼女は話してくれました。




どうやって取り戻していったのか…





本を読み  言葉を書き出し

そのときだけは

自分の素直な気持ちに向き合っていた。



ささやかなことや    小さな時間の積み重ね。

目には見えないほどの粉雪が

うっすらと

気がつかないうちに

やがてはふり積もってゆくように。







そして、

彼女がほんとうに

過去の傷を手放せたのは





その過去を  

感情から離れて

客観的に見られたときでした。





見えてきたのは

辛いと言いながらも
かわいそうなままでいることを選択していた自分。





なぜなら

傷が癒されてないのですから。

癒されるまでは、かわいそうなままでいる必要があったのです。





生きていく中で

この歪さは

相当な苦労を生み出しましたが、




それでも


手放さずにいたのは


自分自身でもあったことに






彼女はようやく気がつけたのです。






なんだ

こんなもんだったんだな…




離れて眺めることができたとき

そう、感じたと

語ってくれました。




そのとき

小さなときの少女の姿が

見えたそうです。




それはもちろん   自分なのですが


じっと 表情ひとつ変えずに


うつむいている少女に





大きくなった彼女が




話しかけました。






よく がんばったね

無理もないよ

あなたがそうだったのは仕方がない

あなたが悪いんじゃない

そしていろんなことは

そうだった…というだけ



よく 耐えてきたね

ほんとに

よく  生きてきたね


ありがとう

生きてくれて

ありがとう

心から  愛してるよ




彼女は  少女にそう伝えると


ぎゅっと 抱きしめ


しばらくそうしていました。





そのときの思いを

私に語ってくれたとき




あの子に  ようやく

ありがとうが 言えた




そう


笑顔で口にしてくれました。


その笑顔は


抜け出せた人だけが感じることのできる


静かな  そして  やすらかな


爽やかさに  満ちていました。





彼女が辛い過去を手放すには

いろんな人の助けもありました。

多くの人の支えと言葉と出来事が

絡み絡んで

ようやくここまで辿り着けたんだと思います。




抜け出してしまうと

傷みはまるで残っていなくて

なぜかそこには

あたたかな愛
人間  それぞれの生きる力
そして
静かな宇宙の秩序さえ

感じられるようになった





これが彼女の  最後のコメントでした。




人はほんとに

誰もがみんな 

かんたんではない人生を歩んでいるんだと思います。




それぞれに与えられたものは

ただ全身でうけとめながら

それでいて

希望の中を生きていくという選択を

していくこと



それが




生きていく よろこびなのかな

私はそう思っています。


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寄り添ってくれるのは
誰だろう
わかってくれるのは
誰だろう
いちばんそうしてほしい相手

それが 自分自身でもあるんだね



最後までおつきあいくださり

心から

感謝を伝えます。


ほんとうに


ありがとうございました。