ひふみのへや ~narimasu-hifuka~皮膚科専門医の葛藤雑記帳〜

ひふみのへや ~narimasu-hifuka~皮膚科専門医の葛藤雑記帳〜

皮膚科専門医(皮膚診=ひふみ)です。日々の診療で患者さんたちから学んだこと、主に「肌」・「皮膚」(ときどき「推し」)をテーマに綴ります。溢れる情報に溺れそうな時代ゆえ、信頼性の高いサイトも紹介します。
必要に応じ加筆/訂正することがあります。

はじめまして。

「ひふみのへや」にお越しいただき
まことに ありがとうございます。


早いもので 肌・ひふ を 診つづけ20年余 の 
中年(アラフィフ万歳!)皮膚科専門医(♀)です。


これまで患者さんたちから学ばせてもらったことをもとに

「ひふ情報」を お届けしたい

と思いたち、ブログを始めることにしました。

とくに大切だと思っている事柄については

複数のテーマにわたり
同じ(ほぼ同じ)記事を掲載することもありますが 
ご容赦ください。


毎日“いいネタ”をお届けするのは思いの他 難しい!ので、
そんな時は

“推し”(主に本や漫画、音楽など)

について 綴って参ろうと思います。


あなたの “気になるネタ” が ひとつは 見つかる(かもしれない)ブログ

を目指しますので


どうかひとつ よろしくお願い申し上げます🤲


!季節にあわせてデザインを変えることがあります。

!加筆/訂正することがあります。

成増皮膚科では 皮膚科だけれど

今年(2024年3月)から

子宮頚がん・尖圭コンジローマの予防ワクチンである

HPVワクチン接種を実施しています。

 

ここから先は

信頼できる情報を元に

私なりの見解も含めた記述になります。

    ★ ★ ★

インターネット上の

 

HPVワクチンに関わる情報を探すと

「HPV(ヒトパピローマウイルス)

 =子宮頚癌の原因」

 

HPV=ヒトパピローマウイルス

PVパピローマウイルスという

様々な動物種にパピローマ(乳頭腫)

を形成するウイルスの仲間です。

 

なかでも”ヒト”に特化して感染・症状を

形成するものを

ヒトパピローマウイルス(以下HPVに統一)

と呼びます。

 

親切な記事(文献)には

子宮頚癌を引き起こすHPV”

などと書かれることもあります。

 

「じゃあ、子宮頚癌を引き起こさない

 HPVもあるんだね…」

と思うひとはどれぐらいいるのだろう?

…なんて思ってしまうのですが…

 

「HPVって 200種類 あんねん」

…アンミカさん風に吠えてみました。

 

200種類以上あるHPV(以下HPV型とします)

のなかで現在わかっている

皮膚科領域に関連するHPV型は20種類余り(約1割)

です。

 

「HPVって どこにでも おんねん」

…HPVがどこに存在するかを明確に過ごした記載は

 意外と多くなく、「そこらじゅうに転がっている」的な

 説明がちらほら・・・

 

 生き物に感染してはじめて

 その存在がようやく目に見えるほど

 小さいし

 

 しかも、感染≠発症ではないので

 権威ある先生たちも含め誰もわかっていないはず…。

(「仮説」はあるかも。)

 

「子宮頚癌の原因は」

子宮頚癌に関わっているHPVの型は16種類ほど

 

16・1865.4%

31・33・45・52・58」 88.2% 

39・51・53・56・59・67・68・69・70

Sakamoto J et al. Papillomavirus Res. 2018; 6: 46-51. 

 

最も多いのが16型です。

 

話が横に逸れますが

男性に多い中咽頭がん。飲酒や喫煙も原因となりますが、

HPVが関与する中咽頭癌のタイプは約90%が16です。

 

子宮頚がん は

妊娠期間中の赤ちゃんの城である子宮の

ひとつ手前のスペースである

「子宮頚部」に生じるがん です。

 

子宮頚癌の原因HPVは感染後

多くの場合(感染した人の約90%)は

自然に排除(2年以内とも言われています)されますが

10人に一人は持続感染しているのではないか

と言われています。

どのような人に持続感染するのかはまだわかっていません。

 

持続感染、即 子宮頚癌

というわけではありません。

が、将来的に子宮頚癌(になるかもしれない)

前段階(子宮頚部異形成)というのがあり、

婦人科検診などで判明することがあります。

この次点では自覚症状はほとんどありませんが

数年以上かけて子宮頚癌へと変化する可能性があるため、

「前段階である」と判明した場合、

定期的に経過をみていく必要があります。

 

子宮頚癌は 25歳~40代に多く

日本ではその世代の人の女性の死亡原因の第2位。

出産、育児に忙しい世代の人の命を奪うことが

少なくないため「マザーキラー」の異名を持っています。

世界的に見ても、この傾向は大きく変わることはなく

WHOは「HPVに起因する子宮頸がん撲滅」における

HPVワクチン予防接種の役割は極めて重要であると

考えられています。

 

HPVは性交渉によって子宮頚部に到達(感染)

します。

ですから

ワクチンの効果を最大限に発揮させるためには

はじめての性交渉前に接種しておくことが大切

です。

 

ちなみに 海外の論文によれば

ウイルスの一つにすでに感染している人に

ワクチンを打った場合、

「すでに感染しているウイルスへの効果は十分でないものの

 まだ感染していない他のウイルスへの効果は十分ある」

というデータが報告されています。

HPVワクチンの効果(有効精度)は かなり高いと

思われます。

 

誤解してほしくないことがひとつあります。

ワクチン接種後は手放しで喜んで良いわけではない

ということ。

 

早すぎる性交渉は 「若さ」が想像している以上に

傷つきやすく 身体への負荷も少なくありません。

(傷つきやすさゆえの感染しやすさも見逃せません)

 

婦人科の専門医ではないですから

偉そうなこと言える立場ではないのですが

 

すべての女の人たちへのお願い

①早すぎる(特に高校生以下)性交渉が抱える

 リスクを知ってほしい

②知らないことは恐ろしい、性行為によって

 生じる感染症とその症状についての知識を

 もってほしい

③感染症の種類によっては将来的に

 不妊の原因になりうること

④自分第一主義、望まない性交渉はしないこと

 

切に願っております。