冬の短い休みに親戚の集まりに参加した


図書室で見て以降、あの人影は見ていない


今回も居心地の悪い集まりにオレンジジュースばかり飲んでいた由芽子に、保が近づいて話しかけてきた


「お土産で買ってきた焼菓子を出して欲しいんだ」車椅子だから一人だと出来なくてお願いしてもいいかな?と話し掛けてきた保に最初はびっくりしたが、話しかたや声のトーンが優しい保に由芽子は「うん」とうなづいてキッチンに向かった


 

後ろから車椅子で着いてきた保は、缶から焼き菓子をお皿に盛る由芽子に対して

「祖母から俺が結婚相手だとか、色々言われたと思うけどそんな言葉信じなくいい!俺みたいにこの家に囚われたくなかったら大人になったら早くこの家と縁を切ってすぐに逃げるんだぞ!分かったな!」 

初めて聞く保の迫力にびっくりした由芽子は首を何度も縦に振り、盛り付け終わった焼き菓子を親戚達がいる部屋に急いで運んだ



保が言っていた 

「祖母の言葉を信じなくていい」と

「俺みたいにこの家に囚われたくなかったら大人になったら早くこの家と縁を切れ」

祖母に言われた言葉がずっとモヤモヤしていたので否定してくれた保が嬉しかった。気持ちが軽くなり保は信じても良いと由芽子は直感的に思った



車椅子の保は縁側で庭を眺めていた、

窓越しに目が合った由芽子は静かにうなづき、保からのお土産の焼き菓子の中からクッキーを一枚取り出し一口食べた。ほのかに甘い優しい味のクッキーだった