旅行3日目ですが、この日は3つメモを残していたようです。どれも明るい内容ではないかもしれませんが、この旅行の自分自身をありのまま残したいのでそのまま載せます。読み物にするつもりもなかったので正直恥ずかしいです。そのため日記全体が今まで以上に支離滅裂になってしまうかもしれないですがご了承ください。


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メモ『 9/12 6:12


3日目の朝 5:50起床

夢を見ていた 同じ日本で昔知り合った登場人物が出てきて違う世界に生きている夢

旅行に来ているらしい 帰りのことを気にして特に品川駅からどうやって帰るか考えていた 今日帰るようで日曜は電車が混むらしい エアジョーダンのスニーカーというワードがでてきた気がする 海?川辺?紙飛行機?


目が覚めてそれが夢だと分かったが現実を正しく認識できない 習慣となったスマートフォンを探す 見つからない ここがどこなのかいつなのか何もわからない

まず最初にスマートフォンを探した 昨日とは違う枕元に置いてあった

冷蔵庫から飲み物を探す 食べ物もほとんどない 麦茶を二口飲んで電気を点ける 眩しくてすぐに消す

夢のことを考えつつ徐々に現実感を取り戻していく

5分ほどである程度認識できた

昨日久しぶりにビールを飲んで寝たからなのだろうか

身体が重い 眠い 少し寒い エアコンを止める

記憶はなんて曖昧なんだろう 次に自分が孤独だということを思い出す こんなときでもその感情が出る辺りどれだけ普段からそればかりに囚われ苦しんでいるんだと苦笑した

まだうまく思い出せない 見ていた夢が不思議なまでに輪郭すら消えていった


さあ今日は何をしようか


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この日は写真を見返すと3回ギターを持って海に行ったようだ。今日も晴れ。

3日目となると場所どりやアンプ、三脚の準備なども最効率でできるようになっていた。成長著しいね。



ただ問題が一つ、指がすごく痛くなっていた。弦を押さえる左手だけでなく、深刻なのはピックを持つ右手の親指。ピックを持つだけで痛みが走り、左手もそれなりに痛くなっていて、簡単な速弾きやチョーキングなども満足にできなくなっていた。加えて体感だが、ギターの弦の滑りが悪い、気がする。潮風の影響もあるのだろうか?今考えたらずっとギターを弾いてない人間が無理やり弾くと起こりがちなことだが、ここで弾けないとここに来た意味がない、今弾かなくていつ弾くんだと、なかば根性論のような使命感のような、誰にも頼まれも期待もされていないのに僕はとにかくギターを弾き続けた。




これ以上弾くと炎天下で熱中症になるな、というラインもわかったので、切り上げて帰る最中に、タトゥーがびっしり入った屈強な男性に話しかけられた。


「君、ギター弾けんの?」

「あんまりうまくないですけど

「君ギター上手いね、上手いよ。俺聴いてたよ」

「あ、ありがとうございます」


あれはなんだったのだろう。楽しく海水浴してたのにうるせえんだよと叱られたのかと思ったのは僕が卑屈すぎるのだろうか。そもそも、もしそうなら彼ならきっと弾いてる最中に言うだろうし。屈強な男性に悪意はなかったようなのでありがたく額面通り受け取った。

……ただそれなら言わせてほしい。

あれ全然コンディション悪かったから本当はもう少し上手いんだよーーーー!!!



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メモ『9/12 16:58


旅行三日目 16:50


僕は怖くてたまらない。終わりがくることが、明日には帰らなければならないことが、どうしようもない現実が待っている事実が、自分自身が醜い無能な人間であるという事実が。


この旅行が人生で一番楽しかったかといえば別にそこまでではない。というか今は純粋に何かを楽しむことや感動できる感情が希薄になっている。今に始まったことではないかもしれないが。


それでも忘れられた。空も海も綺麗だった。僕なんか場違いなのは承知だけど、とても魅力的な空間であり時間だった。


結局何も成し遂げられてない、やりたかったこと、やるべきこと、何もできていない。僕はそういう人間だ。

それでもそう生まれてしまい、そういう風にしか生きてはいけない。


どれだけ綺麗事を並べても自分を正当化しようとも現実は何一つ変わらないし変えられない。もううんざりだ、何も考えたくない。


悲しくてつらくて苦しくて。それでも時間は過ぎ去ってしまう。この感情もいつかは消えてしまえばいい。できるのならこの身体ごと。


さて海を見に行こう。もうすぐ日没だ。



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今日3度目の海にやってきた。場所どりに迷いもない。ただとにかく弾いた。指の感覚が無くなっても弾いた。日が暮れて真っ暗になっても弾いた。誰もいなくなっても弾いた。アンプの充電が切れても弾いた。ギターを弾きながら歌った。自分の作った、何の価値もなく誰にも認められない、自分自身の醜い叫び。不思議な時間だった。



真っ暗な海の前でギターを弾いていると、また今までにはない感情が生まれたのを感じた。確かに目の前には海がある、でも海は見えない。視覚情報がないと相対的に聴覚が敏感になるのか、波の音が今までより大きく聞こえた。真っ暗だと砂浜はなお歩きづらい。遠くで船が泳いでいるのだろうか、一つの灯火が見えた。ゆらゆら、ゆらゆら。特別幻想的に感じることもなく、その光に導かれているなどと妄想することもなく、その光と空間と自分に酔うこともなく、僕はただ現実を見ていた。


夜は本日一食目、前日にテイクアウトしたハンバーガー。冷たかったけど美味しかった。




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メモ『9/13 0:07


9/12 23:52

だめだ、何も思いつかない。

旅行らしいことも、最後にしておきたいことも、何も思いつかない。

今は無事に帰宅することばかり考えている。

何もかもがぼんやりとする。

今なら海へ飛び込めば死ねるかもしれない。


なら今いけばいい

死ぬなら今だよ

呼ぶ声は聞こえない

誰も手招きなどしてくれない


きっと僕は明日、きちんと宿にお金を払って感謝を伝えて、お金のかからないよう決めた時間のバスに乗り予約を取った電車に乗る。

帰ってからまず洗濯物を回して今干しているのを取り込んで新しく干したら食べ物と飲み物を買いに行って、溜まっていた書類を片付けて、などとその後のことを考えている。

僕はいつでも理性に支配されている。

これを全て捨てることができるのなら、例えば今から海へ行って死にはしなくても疲れ切るまで馬鹿みたいに泳いでこれたら、風邪をひいて宿に迷惑をかけて無駄なお金を払うことになんの躊躇いもなくなれば、そんな風に生きられたらどれだけ楽なんだろう。


もうここに来ることはないかもしれない

海へ行くこともないかもしれない

最後の海だったかもしれない

孤独に生きるということはそういうことなのだろうか

僕はあとどれくらい生きることができるだろうか


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次回旅日記最終回!