しまちゃんがおにぎりに
カプッとかじりついたそのとき、
そばにいた友だちが
「うわぉ~~っ!」と急に立ち上がりました。

そう! 
そこにいた茶色い物体とは
お弁当を狙って近づいてきた鹿だったのです!

今でこそ、デカイしまちゃんですが
そのころのしまちゃんには、鹿がとても大きく見えました。
きっと近づいてきた鹿は
「オラにもちょっとわけて~な」程度だったのでしょうが
気配を消して、のっそりとやってきたソレは
小心者のしまちゃんをよりいっそう驚かせました。

「ええっ!?!?!?!?!」と動揺したしまちゃんは
お箸にさしてかぶりついたばかりの、
そう、
まだほんのひとくちしか食べてないおにぎりを、
しま母が作った大きめおにぎりを、
ぼとっと、落としてしまったのです。

「あら、おおきに」といわんばかりに
落ちたおにぎりに近づいた鹿でしたが、
まわりで騒ぐ子どもたちにおびえ、
口をつけぬまま、立ち去ってしまいました。

ああ、しまちゃんの大切なおにぎりが…
鹿のえさにもならないなんて…。




…食べ物の恨みは恐ろしいものです。
その幼児体験がトラウマになり(?)
しまちゃんはそれから一度も
鹿にせんべいを買ってあげたことがありません…
こうして、「鹿に冷静なしまちゃん」が完成したのであります。

(おしまい)