【文披31題 開催中!】
— 綺想編纂館(朧) (@Fictionarys) June 30, 2024
7月1日~31日で「文披31題」という小説企画を開催中です。
基本的に7/1にDay1のお題(夕涼み)、7/2にDay2のお題(喫茶店)とひとつずつ進んでいく形です。
タグをつけるだけで参加できるので、途中参加も大歓迎!
詳細は画像にて↓ pic.twitter.com/HRVts6xhlh
「今時珍しいよね、ラブレターなんて」
「そうだね。でも差し出し人がないから、ちょっと不気味かも」
私はお洒落な封筒と、それに合わせた雰囲気の便せん。それを取り出す。
封筒には私の名前と、私の住所。そして便せんにはラブレターと言われるような、告白みたいな文章がきれいに書かれている。
「恋猫のようにあなたのことを忘れられません。この空なる恋、叶わないことは分かっています。徒恋であることは分かっています。でも恋の奴である私はあなたのことが好きです」
「朗読しないで」
私は慌てて、ふうりの声を止める。
こんなこっぱずかしい文章、他人に読まれたくない。ましてや声に出して、言われたくない。
「今日は七夕でしょう。短冊のかわりにこれをつるしといたら?」
「いやおかしいから。確かにあちこちに七夕の笹はあるけど、短冊じゃなくて便せんを飾ってたら変だよ」
「まあそうだよね。じゃあどうするの?」
「清めて捨てようかな。なんか妙な気がこもってそう」
なんせ恋猫だの空なる恋だのという、今ではあまり使われない言葉のオンパレードである。そこら辺が不気味で、できることなら手元に置いておきたくない。
「こーいう言葉せつな先輩好きそう。じゃあさせつな先輩かもしれないよ」
「あの1人で生きている格好いいイケメンが、私にラブレターをくれるわけないでしょ」
せつな先輩は中性っぽさがあり最近流行のボーカル&ダンスグループにいそうなほどのイケメンだ。私とは名字が偶然同じということで接点はあるけど、逆に言えばそれ以外の接点は同じゼミなだけだ。
そんなせつな先輩が昔の本や、昔の言葉に関する本を読んでいたことを知ってるけど。それだけでラブレターをくれたのが、せつな先輩だと決まったわけじゃない。
そう本当にそんなわけないから、そんなわけ、あるわけないから。