『米国・中国・日本の国勢 2025』第3回 工業 ① | 奈良の鹿たち

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『米国中国・日本の国勢 2025』 

3回 

<工業 ①>

(鉄鋼・石油製品・セメント・精錬銅)

 

 

今や、中国は「ダントツの世界一の工業国」です。中国がクシャミをすれば、日本は風邪を引く状況です。中国の工業生産力の増大と日本の衰退が相対する形で推移し、日本の完敗が15~10年前に確定した。

中国の鉄鋼・造船・自動車等の生産高は、米国と日本を合わせた分よりも多いのです。

中国製品のひと昔のイメージ「安かろ悪かろ」から「安かろ良かろ」に変わってきています。

また、世界中から企業が中国の比較的安い労働力と、中国国内需要をねらって生産を本国から移したおかげで、米国も日本も自国の工業生産の空洞化が顕著になりました。

鉄から自動車、ITに至るまで中国は「世界の工場」に成長した。

量的拡大から質的拡大に重点が置かれるようになり、生産管理・品質管理は日米に劣らないどころか勝っているようになりました。そのため、世界中で需要があり市場占有率も非常に高いものが増えてきています。

ただ、中央政府、党や軍への従属性が払しょくし切れず、今後このことが大きな足かせとなっていくだろうと予想されます。

 

中国は年10億t余り、世界の生産量の半分以上を生産している。しかし、国内需要の減少で生産が2020年をピークに減り続けている。

 

今、生産量世界一の中国が揺らいでいる。建設不動産不況に加え、インフラ支出にも陰りが見え始め、製鉄所は右肩下がりの価格下落に苦しんでいる。国内需要は20年以降10%余り減少している。世界鉄鋼協会は今年4月、中国は鉄鋼需要のピークに達したもようで、中期的にはさらに減少するとの見通しを示した。需要低迷と過剰生産能力により、赤字企業が急増しており、現在の苦境から抜け出すためには、企業の3割余りが淘汰される必要があるといわれている。

鉄鋼生産レベルを維持できているのは輸出のおかげだ。中国の輸出量はは約1億tに達する勢いで過去最高を更新した。。これは、国内価格の低迷により、一部の鉄鋼を海外に安く出荷した方が採算が取れるようになったことが要因だ。しかし、各国には中国で余った鉄鋼が自国市場に流れ込み、価格を押し下げ、製鉄所を廃業に追い込み、労働者を失業させた。

バイデン前大統領は、中国の政策主導による過剰生産能力は、米国の鉄鋼産業の将来に深刻なリスクをもたらすとして、中国製鉄鋼に高関税をかけた。トランプ現大統領も、2025年6月4日から、鉄鋼・アルミに対し50%の追加関税を設けた。現在、米国の鉄鋼輸入量で中国の割合は、高い関税の為1.8%でしかないが、他国からの迂回流入を警戒している。

欧州委員会は2024年6月、2019年に正式発動した鉄鋼セーフガード措置を2026年6月30日まで延長すると発表した。同措置は、鉄鋼製品26品目について関税割当枠を設定し、超過分には25%の関税を課すもの。域内の鉄鋼市場における輸入品の割合は2013年以降、増加傾向が続いている。

これらの背景には、世界的な鉄鋼の過剰生産がある。欧州委は特に中国から第三国への輸出が急増し、輸出先のベトナムやインドネシアなどからのEUへの輸出が増加していると指摘。そのため、押し寄せる中国からの輸入品で欧州の鉄鋼価格は生産コストを下回っているという。

世界の鉄鋼業界における中国という圧倒的な存在が、あらためてその影響力を露わにしている。

鉄鋼価格の下落は、鉄鋼を使用する企業にとってはもちろん恩恵だが、鉄鋼生産者への影響は深刻で、利益は圧迫され製鉄所閉鎖につながる。

中国政府は今、ジレンマに直面している。当局は鉄鋼業界の再編を望んでいても、実際にそう動けば経済の不安定性が高まっているタイミングで、成長にひずみが生じ、雇用が脅かされることになる。

 

中国は、2020年から2027年の間に原油精製の大幅な成長をすると予想されています。

このテンポで行けば、数年のうちに米国を抜くことになります。

2024年、精製石油製品の世界生産量は2年連続で減速し(+0.9%)しました。

中国の石油製品生産は、2023年に9%増加した後、需要の横ばいと精製マージンの低下により1%減少しました。米国は+1%と増加しましたが、日本は-6%と減少しました。
 

中国は、2024年にはセメント市場シェアの約50%を占めるまでになった。不動産セクターの課題に直面しているものの、需要は、交通インフラ、エネルギープロジェクト、都市開発への政府投資に支えられて堅調を維持している。

セメント業界は、世界の産業で二酸化炭素(CO2)排出量が約3割と最大である。大半が主原料の石灰石から出るため削減が難しい。

 

銅の需要の伸びは世界の経済成長率に連動する。

中国は銅の製錬能力を増強している。脱炭素を進める電力インフラの整備や環境負荷を抑える自動車の普及にも欠かせない素材だからだ。

その結果、2023年の中国の銅製品生産量は前年比13.5%増加し、過去最高の1299万トンに達した。これは世界生産量の5割近くに相当する。

しかし、2024年3月、過剰生産能力問題への対応について協議が行われた。

中国の銅製錬業界が「協調減産」に合意した。その背景は、需要減少に生産能力過剰が重なり採算割れが続いているためだ。銅製錬業界の苦況の原因は、銅製品の需要縮小だけではない。ここ数年、中国の製錬会社は生産能力の拡大競争に邁進してきた結果にもよる。

 

 

 

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次回は第4回「工業 ②」

 

 

 (担当E)

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