僕は27歳、いまだにお父さんのことは”パパ”と呼んでいた

 

 

両親は僕が5歳の頃に離婚をし

 

母親に引き取られたため

 

中学生まで、パパに会えるのは

 

1年に1回、夏休みの時だけだった

 

 

毎年夏休みになると

 

パパは静岡県の御前崎に旅行に連れて行ってくれた

 

1日目は御前崎の展望台から海を眺めたり

 

ホテルにあるプールでたくさん泳ぎ

 

美味しいご飯を食べ

 

温泉に入って寝る

 

2日目には

 

必ずパパと一緒に朝風呂に入り

 

朝日を眺めるのが恒例行事だった

 

その後は

 

静波の海で思いっきり遊んで

 

帰りの車では爆睡

 

気づいたらお別れの時間になっているのがお決まりだった

 

 

これが

 

僕とパパの思い出。

 

 

小学生の頃はやっぱり周りと比べてしまい

 

お父さんがいないことが

 

嫌に思うことも多々あったし

 

運動会の時も

 

ブルーシートの上には

 

パパはいなくて

 

周りを気にしてばっかりで

 

運動会を全力で楽しめていなかった

 

寂しい思いは嫌というほどしてきた

 

 

それでも

 

毎年夏になれば

 

運転席にはパパがいて

 

僕たち姉妹は溜めに溜めてきた感情が爆発し

 

我を失うくらい楽しんでいた

 

 

もちろん毎日そばにパパがいたら

 

良かったのかも知れない

 

でも

 

1年に1回という限られた2日間は

 

どの日常にも負けないくらい

 

濃くて幸せな2日間だった

 

 

大人になった今だからわかることだけど

 

幸せというのは周りが決めるんじゃない

 

 

”あの子は母子家庭でかわいそうだね…”

 

”あの子は障害者で不幸だね…”とか

 

 

周りが判断したことは

 

結局全部間違ってる

 

 

母子家庭でも幸せな時間はたくさんあるし

 

障害者で不自由で思うような生活ができなくても

 

幸せと思える時間は無限にあって

 

自分が自分を幸せと思えるなら

 

それは幸せでしかない

 

 

周りと比べてしまうのは

 

人間の性なのかも知れない

 

でも

 

自分が辛いと思った時こそ

 

周りと比べる必要なんてない

 

 

 

 

物語の始まり