僕はひたすら勉強をした

 

 

苦手な簿記も必死に覚え

 

エクセルの難しい関数も

 

怪我をする前には

 

触れることのなかったことばかりだった

 

健常者だったら

 

仕事も色々選べるだろうが

 

車椅子生活になってしまった以上

 

僕に仕事を選ぶ選択肢なんてなかった

 

 

障害を負っている僕は

 

いつ失禁してしまうかわからないリスクがあるため

 

通勤するのはとても勇気のいることだった

 

だから

 

仕事をするなら

 

在宅勤務でやらせてもらえるところを探そうと思っていた

 

 

僕はひと足さきに就活が始まっていた浅川くんに相談した

 

 

僕「浅川くんは仕事どうする?山梨?」

 

浅川くん「山梨で就職するつもりだよ」

 

僕「え、通い?」

 

浅川くん「そうだね」

 

僕「在宅は考えてないの?」

 

浅川くん「ん〜、いっとき思ったけどね」

 

浅川くん「奈良井くんは?」

 

僕「俺はもう在宅一択かな」

 

浅川くん「あ、そうなんだね」

 

僕「だって仕事中に失禁とかしたら怖くない?」

 

浅川くん「確かにね…」

 

僕「それに、毎朝支度して車に乗って通勤するって思っただけで無理…」

 

僕「で、帰ってきたらトイレや風呂が待ってるじゃん?」

 

僕「俺にはそれを乗り越えるは根性ないね」

 

浅川くん「うわ…なんか働くの嫌になってきた…」

 

僕「俺らってさ、未来が見え過ぎて嫌になるよね…」

 

浅川くん「うん…」

 

 

僕と浅川くんは、冷たい風に当たりながらしんみりタバコを吸っていた

 

 

 

浅川くんとの出会い