僕は20歳の誕生日を迎えていた

 

リハビリの合間に

 

談話室でテレビを見ていると

 

思いがけない人物が誕生日のお祝いにやってきた

 

 

「おうっ!」

 

後ろから声をかけられ振り向くと

 

そこには、父の姿があった

 

まさかの人物の登場に

 

僕は動揺を隠せなかった

 

 

僕「えっ…!なに!?」

 

父に会うのは3年ぶりくらいだった

 

昔から、髪の毛をガチガチに決め、サングラスをかけていた父だったが

 

相変わらずかっこよかった

 

父「来ちゃ悪かったか?」

 

僕「いや、全然いいんだけど、びっくりっていうか…」

 

父「ほれっ」

 

僕「なにこれ?」

 

父「成人祝いに決まってるら!」

 

僕「え…ありがとう」

 

 

僕はどうリアクションしたらいいかわからなかった

 

正直、プレゼントというプレゼントはもらったことがなかったため

 

嬉しい気持ちでいっぱいだったが

 

いきなりの事で、驚きの方が大きかった…

 

 

封を開けると、財布が入っていた

 

僕「…。」

 

父「なんだ!いらんじゃ返せ」

 

僕「駄目だよ!!!!」

 

僕はめちゃくちゃ嬉しかった

 

必死に守る僕を見て

 

父も笑っていた

 

 

父は照れ臭かったのか

 

プレゼントを渡すと

 

すぐに帰った

 

父「じゃあ、けえるど」

 

僕「うん…ありがとう!大切にする!」

 

 

すぐに帰ってしまったのは少し寂しかったが

 

なんだか父らしくてほっこりした

 

 

そんな父と過ごした時間は少ないが

 

大切な思い出はたくさんある

 

 

幼い頃、両親が離婚して

 

父と会えるのは、1年に1回だった

 

毎年夏になると

 

父は、僕たち姉妹を静岡県の御前崎というところに

 

1泊2日の旅行に連れて行ってくれた

 

展望台に登ったり

 

豪華なホテルで美味しいご飯を食べ

 

朝風呂に一緒に入って、朝日を眺めたり

 

海にも連れてってくれた

 

父は疲れると文句を言ってる時もあったが

 

父からの愛情はすごく伝わっていた

 

1年に1回

 

たったそれしか会えなかったが

 

その時間は僕にとって

 

かけがえのない時間だった

 

 

離婚してるとはいえ

 

血の繋がった実の父

 

僕の中の大切な父親である事に変わりはない

 

 

ちなみにここだけの話

 

僕は幼い頃から”パパ”と呼んでいるのだが

 

会える頻度が少なかったためか

 

”パパ呼び”から抜け出すタイミングがなく

 

今でも”パパ”と呼んでいる…

 

父からもらった財布は今でも使っている

 

 

 

始まりはここから