お母さんは入退院を繰り返すようになった

 

抗がん剤治療の影響で、頭はまだ坊主だった

 

最初は、その姿をなかなか受け入れることができなかったが

 

なんだか坊主姿にニット帽をかぶっているお母さんの姿が可愛らしかった

 

でも、お母さんも女性だ

 

周りの目が気になったんだろう

 

ある日お母さんは、ウィッグを買った

 

姉「全然違和感ない!似合ってるじゃん」

 

お母さんはなんだか嬉しそうだった

 

その日から出かけるときは必ずウィッグをつけていた

 

 

ある日、家にいた時のこと

 

お母さんはリビングで休んでいた

 

僕はいつものように何気無くキッチンでタバコに火をつけた

 

リビングのドアは空いていた

 

すると、お母さんはタバコの匂いに気づき、

 

僕の方を睨んでドアをものすごい勢いで閉めた

 

僕「やべっ…」

 

お母さんからの言葉はなかった

 

だが、明らかに怒っていた

 

かなり怒っていた

 

そういえば、お母さんの前では吸った事はなかった

 

怒るのも無理も無い

 

お母さんは元々喫煙者で、病気になってから禁煙していた

 

その目の前で吸ったんだ

 

怒って当然…

 

いや違う

 

高校生の息子が、自分の知らないうちにタバコを吸っていた

 

その事実がショックだったんだ

 

だから何も言わずに怒ったんだ

 

当時のお母さんの気持ちを考えると、なんだか複雑だった

 

 

僕は反抗期はなかった

 

だけど、その日から何だか家に居づらくなり

 

夜遊びが多くなった

 

本当はもっとお母さんのそばに寄り添っていたかった

 

手遅れになる前に。