彼『今まではなぁの良い部分だけを見てきた。悪い部分には目を瞑って。だから,どんどん好きになった。』

彼『でも,なぁの悪い部分は誰かが指摘してあげなきゃいけないし,この先ずっと一緒にいるなら悪い部分も見るようにしなきゃいけないと思って見るようにした。』

彼『そしたら,好きな気持ちは増えてるけど,残念な気持ちも同じように増えてきて..だから結局は増えても減ってもいないって感じ』

彼『でも,なぁの俺に対する気持ちが減ってきてることがわかって,俺ばっかり向き合ってても無駄なのかなって思ってた』

彼『俺は,なぁが別れたいと思うなら別れるよ。俺はなぁのこと好きだから,絶対に俺からは別れようなんて言わない』


私「せっかく会いにきてくれたのに,こんなことになってごめんね..」

彼『いーよ,とは言えないよね』

私「うん..」

彼『付き合うのも今日で終わりか..なぁと一緒にいるの楽しかったな』


彼の声が震えてた。


彼『思い出したくないけど,いろんなこと思い出すよ』


おもむろに彼が何かを取り出して,あたしの手に握らせた。


彼『それはなぁが持ってて。俺の宝物。俺には絶対に捨てられないから,持ってるも捨てるもなぁの好きにして』

それは,ペアリングだった。

彼『俺はなぁのこと好きだよ。結婚したいとも思ってたし』


もう本当に最後なんだ。そう思うと一気に寂しさがこみ上げてきて..大粒の涙が出た。


私「やぁに逢えなくなると思うと..すごく寂しい。これって,好きだからなのかな」


涙で顔がぐちゃぐちゃになりながら,あたしは言った。


彼『なぁが決めたことなんだから』


まだ間に合う。今なら間に合うぞ!って,もう一人の自分が言ってる気がした。

でも,何も言えなかった。


彼『もうこっちには来ないから。連絡も俺からはしない。でも..いつでも待ってるよ。俺も混乱してるけど,なぁが一番混乱してるんだから,良く考えて気持ちの整理がついたらまた連絡して』


こんなときまで,彼はとことん優しい。

ちょっと後悔した。


彼はゆっくりと車を発進させた。

沈黙が続く中,

彼『つらい..帰したくないんだけど』


彼の顔を見ると,懸命にこらえながら抑えきれない涙を流してた。


あたしは聞こえない振りをした。


車のスピードは40km/h。
彼があたしを帰したくないと言う思いがひしひしと伝わってきた。