N〇K『虎と翼』、気のせいか連日のように「汁粉」や「あんみつ」が登場します。『ブギウギ』では「屋台」が多かったのに・・・。
因みに、鳥取の雑煮は「ぜんざい」、甘いものが苦手な私は正月三が日で1年分の糖分をとったような錯覚に陥ります。
ところが、森鷗外さんはでかい饅頭を4等分、その一つをご飯にのせ、煎茶をかけて食べたというから「どんだけえ」の世界にびっくり仰天。
娘さんたちも食べていたようで思わず「饅頭怖い」、「クワイ河マーチ」より「怖いがなマーチ」となりはてた次第です。
さらに、「饅頭が好きだ。」(江戸川乱歩)、「羊羹が好きだ。」(夏目漱石)、「饅頭と羊羹が好きだ。」(新美南吉)
そして、「汁粉が好きだ。」と大合唱の久保田さん、芥川さん。
文豪の逆鱗を覚悟しつつ、「饅頭は苦手だ。羊羹は嫌いだ。汁粉はもっと嫌いだ。隠密姫を呼ぶぞ!」などと、遠吠えしたくなる夕べを迎えました。
語ることができない1本とともに。
フレンチ【ドリロー ★★★】
★★★★★★★汁粉が好きだ★★★★★★★
久保田万太郎君の「しるこ」のことを書いているのを見、僕もまた「しるこ」のことを書いて見たい欲望を感じた。
震災以来の東京は梅園や松村以外には「しるこ」屋やらしい「しるこ」屋は跡を絶ってしまった。
その代わりにどこもカフェだらけである。
僕等はもう廣小路の「常盤」にあの椀になみなみと盛った「おきな」を味わうことは出来ない。
これは僕等下戸仲間の爲には少なからぬ損失である。
のみならず僕等の東京の爲にもやはり少なからぬ損失である。
(芥川龍之介『しるこ』)
★★★★★★★羊羹が好きだ★★★★★★★
菓子皿のなかを見ると、立派な羊羹が並んでいる。余は凡ての菓子のうちで尤も羊羹が好きだ。
別段食いたくはないが、あの肌合が滑らかに、緻密に、しかも半透明に光線を受ける具合は、どう見ても一個の美術品だ。
ことに青味を帯びた練り上げ方は、玉と蝋石 の雑種のようで、甚だ見て心持ちがいい。
(夏目漱石『草枕』)