週刊小説

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「そうなんだけど、なんていうか、なんで学生証があそこに落ちてたのかなって。そこだけが腑に落ちないというか」

「うん、私もそれはよくわからないんだよね、気が付いたらなくなってたから。でも、私普段あの場所に入ることは無いし、どうしてあの場所で見つかったのか不思議なんだよね」

あえて、あの場所に立ち入らない、と言うことで、逆に怪しまれないのではないかと、千瀬は考えた。

「本当に何も心当たり無いの?」

奈々が、千瀬の目を真っ直ぐと見た。千瀬はそれに少し動揺し、目線をキョロキョロと動かしてしまったが、奈々は目線を一切動かさなかった。

「ないよ、何も」

千瀬は、自分でもびっくりするほど堂々としていた。

「じゃあさ、一つ聞いていい?」

「何?」

「六月三日の放課後、何してたの? 別館で」

千瀬は倒れそうになった。意識が遠のきそうで、一瞬にして今まで聞こえていた周囲の話し声が聞こえなくなった。

「え?」

頭では聞き返してはいけないことは分かっていた。だが、勝手に言葉が出てしまった。

「私ね、見たの。千瀬が別館に入るところ。あそこなんて三年間で入ること滅多にないでしょ。そんなところに何しに行ったのかなって」

良い言い訳がなかなか見つからない。千瀬は背中に少し冷や汗をかいてるのがわかった。

「大丈夫?」

顔色が悪かったのか、一美が千瀬の顔を覗き込んだ。

「大丈夫だよ。別館にいたのは、村田先生にちょっと頼まれごとしてたからだよ。ほら、あそこってもともと美術部の部室だったじゃん、村田先生その時の顧問で、荷物持ってくるように頼まれたんだよね。うん、それだけだよ」

「そうなの?」

奈々は信じたのか信じていないのか、どちらかよくわからない。

「うん、ホント。刑事の人にも言ったし」

さすがに刑事の人に確認は取れないだろう、と千瀬は睨んだ。

「そう……」

奈々は少し目線を下にずらした。

「じゃあ、私帰るね。今日用事あるし」

奈々は誰の静止を受ける間もなく、じゃあね、と手を振って店を出た。三人ともキョトンとした顔で店の外を歩いていく奈々を見ていた。

「えっと、私たちも帰ろうか」

優衣が立ち上がると、千瀬と一美も立ち上がり、店を出た。

明日から三人は、私にどんな態度をするのだろうか。冷たい態度を取るのか、いつも通りの態度なのか、それとも、あえて明るく振舞って突き落とそうとするのか。どれにしろ、殺人の容疑がかかっているという噂が広まれば、自分の周囲で何らかの変化が起きる。それはきっと、千瀬にはどうにもできない大きなもので、千瀬自身を押しつぶしていくだろう。そんなことは最初から分かっていた。問題は、これからどうするか。

千瀬は駅に行き、改札を通ってホームで電車が来るのを待っていた。

とりあえず明日。明日、学校がどうなっているか自分の目で確かめよう。