新規乳がん治療薬のツカイザが発売されました
4月21日に化学療法歴のあるHER2陽性乳がん治療薬、ツカイザが発売されました。なかなか投薬する機会がないかもしれませんが、ひとまず投薬できるように準備したいと思います。HER2はhuman epidermal growth factor receptor type2(ヒト上皮細胞増殖因子受容体2)の略語で、細胞の増殖に関与するとされるチロシンキナーゼの1つ。同じような構造と機能を持つものにHER1(EGFR)、HER3、HER4があり、HERファミリーと呼ばれます。HER2陽性率が高い腫瘍には乳がんや胃がんがあり、乳がんでは15~30%、胃がんでは20~25%程度がHER2陽性となっています。HER2陽性乳がんは、陰性乳がんと比較して進行が早く、脳転移や再発リスクが高いことが知られています。ツカイザはHER2を選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害剤で、がん細胞に発現するHER2の細胞内ドメインに結合し、HER2チロシンキナーゼのリン酸化を選択的かつ可逆的に阻害することにより、がん細胞の増殖を抑制します。実は、すでに抗HER2抗体(遺伝子組換え)として、ペルツズマブ(商品名パージェタ)、トラスツズマブ(ハーセプチン他)や、抗体薬物複合体(ADC)のトラスツズマブ エムタンシン(遺伝子組換え)(カドサイラ)やトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)(エンハーツ)が使われています。また、内服薬ではHER2を選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬のラパチニブ(タイケルブ)が使われています。タイケルブとツカイザの違いですが、タイケルブはHER2とEGFR(上皮成長因子受容体)を同程度に阻害しますが、ツカイザはEGFRよりHER2に高い阻害作用を示します。それゆえEGFR関連の毒性(下痢、皮膚障害)の低減も期待されているそうです。ツカイザは、既存の抗HER2抗体やタイケルブでの治療に抵抗性を示した場合に使われます。トラスツズマブ(ハーセプチン)とカペシタビンと併用するのが特徴です。それでは、薬剤情報です。○ツカイザ錠50mg/150mg(一般名:ツカチニブ)【効能・効果】化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳がん【効能又は効果に関連する注意】(抜粋)・本剤の術前・術後薬物療法における有効性及び安全性は確立していない。【用法・用量】トラスツズマブ(遺伝子組換え)及びカペシタビンとの併用において、通常、成人には1回300mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。【用法及び用量に関連する注意】(抜粋)・本剤単独投与での有効性及び安全性は確立していない。・重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者では、本剤の開始用量は1回200mgを1日2回とすること。・強いCYP2C8阻害剤と併用する場合、本剤の開始用量は1回100mgを1日2回とすること。・本剤とトラスツズマブ(遺伝子組換え)及びカペシタビンを併用する際のカペシタビンの用法及び用量は以下のとおりとすること。体表面積にあわせて次の投与量を朝食後と夕食後30分以内に1日2回、14日間連日経口投与し、その後7日間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。 体表面積 1回用量 1.36m2未満 1,200mg 1.36m2以上1.66m2未満 1,500mg 1.66m2以上1.96m2未満 1,800mg 1.96m2以上 2,100mg ※C法に該当します。適正使用ガイドから抜粋させていただきます。※「服薬指導のエッセンス」表2-5に、抗がん薬(内服)の併用療法を掲載していますが、改訂することがありましたら追記しようと思います。【重要な基本的注意】・肝機能障害があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。・間質性肺疾患があらわれることがあるので、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認及び胸部画像検査の実施等、患者の状態を十分に観察すること。・左室駆出率(LVEF)低下があらわれることがあるので、本剤投与開始前及び投与中は適宜心機能検査(心エコー等)を行い、患者の状態(LVEFの変動を含む)を十分に観察すること。【特定の背景を有する患者に関する注意】・肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者→投与しないこと。コルヒチンの血中濃度が上昇するおそれがある。・重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者(コルヒチンを投与中の患者を除く)→本剤の開始用量を減量するとともに、患者の状態をより慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。本剤の血中濃度が上昇し、副作用が強くあらわれるおそれがある。※用法・用量に関連する注意の項に「重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者では、本剤の開始用量は1回200mgを1日2回とすること」の記載があります。・生殖能を有する者→妊娠する可能性のある女性には、本剤投与中及び最終投与後1週間において避妊する必要性及び適切な避妊法について説明すること。・授乳婦→授乳しないことが望ましい。【相互作用】本剤は、主にCYP2C8によって代謝され、CYP3Aでも一部代謝される。また、本剤はCYP3Aを強く阻害し、CYP2C8及びP-gpに対して阻害作用を示す。・併用禁忌 薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子 ベネトクラクス(慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)、再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫の用量漸増期) (ベネクレクスタ) 腫瘍崩壊症候群の発現が増強されるおそれがある。 本剤がCYP3Aの代謝活性を強く阻害することにより、ベネトクラクスの血中濃度が上昇する可能性がある。 アナモレリン塩酸塩 (エドルミズ) ボクロスポリン (ルプキネス) イバブラジン塩酸塩 (コララン) キニジン硫酸塩水和物 チカグレロル (ブリリンタ) マバカムテン (カムザイオス) アゼルニジピン (カルブロック) オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン (レザルタス配合錠) エプレレノン (セララ) エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン (クリアミン配合錠) シンバスタチン (リポバス) タダラフィル (アドシルカ) マシテンタン・タダラフィル (ユバンシ配合錠) フィネレノン (ケレンディア) ロミタピドメシル酸塩 (ジャクスタピッド) スボレキサント (ベルソムラ) ダリドレキサント塩酸塩 (クービビック) トリアゾラム (ハルシオン) ブロナンセリン (ロナセン) ボルノレキサント水和物 (ボルズィ) ルラシドン塩酸塩 (ラツーダ) バルデナフィル塩酸塩水和物 メチルエルゴメトリンマレイン酸塩 (パルタンM) ロナファルニブ (ゾキンヴィ) イブルチニブ (イムブルビカ) これらの薬剤の副作用が増強されるおそれがある。 本剤がCYP3Aの代謝活性を強く阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 リバーロキサバン (イグザレルト) リバーロキサバンの抗凝固作用を増強させ、出血の危険性を増大させるおそれがある。 本剤がCYP3Aの代謝活性を強く阻害し、P-gpを阻害することにより、リバーロキサバンの血中濃度が上昇する可能性がある。 ・併用注意 薬剤名等 臨床症状・措置方法 機序・危険因子 強いCYP3A誘導剤 フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシン、リファブチン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ含有食品等 本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、CYP3A誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。 これらの薬剤等がCYP3Aの代謝活性を誘導するため、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。 中程度のCYP2C8誘導剤 リファンピシン等 本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、CYP2C8誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮すること。 これらの薬剤がCYP2C8の代謝活性を誘導するため、本剤の血中濃度が低下する可能性がある。 強いCYP3A阻害剤 イトラコナゾール、ケトコナゾール、クラリスロマイシン等 本剤の副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 これらの薬剤がCYP3A4の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 強いCYP2C8阻害剤 ゲムフィブロジル(国内未承認)等 本剤の副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあるので、CYP2C8阻害作用のない薬剤への代替を考慮すること。併用する場合は本剤を減量して開始すること。 これらの薬剤がCYP2C8の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 中程度以下のCYP2C8阻害剤 クロピドグレル、デフェラシロクス、アビラテロン等 本剤の副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 これらの薬剤がCYP2C8の代謝活性を阻害するため、本剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 CYP3Aの基質となる薬剤(併用禁忌の薬剤を除く) ミダゾラム(経口剤は国内未承認)、フェンタニル、タクロリムス等 これらの薬剤の副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 本剤がCYP3Aの代謝活性を強く阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 コルヒチン これらの薬剤の副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 本剤がCYP3Aの代謝活性を強く阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 ベネトクラクス(慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の維持投与期、再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫の維持投与期、急性骨髄性白血病) これらの薬剤の副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 本剤がCYP3Aの代謝活性を強く阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 CYP2C8の基質となる薬剤 レパグリニド、ピオグリタゾン、パクリタキセル等 これらの薬剤の副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 本剤がCYP2C8の代謝活性を阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 P-gpの基質となる薬剤 ジゴキシン、エベロリムス、シロリムス等 これらの薬剤の副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあるので、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意すること。 本剤がP-gpを阻害することにより、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある。 ※【用法・用量に関連する注意】に記載がありますが「強いCYP2C8阻害剤と併用する場合、本剤の開始用量は1回100mgを1日2回とすること」となっています。しかし、併用注意欄の「強いCYP2C8阻害剤」のところには、国内未承認の薬剤しか載っていません。ちなみに、「薬物相互作用リテラシー(南山堂)」では、クロピドグレルは「強いCYP2C8阻害剤」に分類されています。難しいところですが、クロピドグレルと併用する場合は、減量を考慮する必要があるかもしれません(私見)。なお、クロピドグレルのCYP2C8阻害作用の強さについては、山本先生の以下の記事にも記載がありますので参照してください。CYP阻害薬の“強さ”はどうやって決まる?:日経DI【重大な副作用】・重度の下痢(10.6%)・肝機能障害→高ビリルビン血症(21.9%)、AST増加(20.0%)、ALT増加(20.0%)等を伴う肝機能障害があらわれることがある。・間質性肺疾患(頻度不明)【その他の副作用】(抜粋):詳細は添付文書を参照・食欲減退(20.9%)・下痢(72.6%)、悪心(52.1%)、口内炎(26.8%)、嘔吐(25.3%)・手足症候群(64.9%)・疲労(36.0%)【臨床検査結果に及ぼす影響】本剤は、糸球体機能に影響を及ぼさないものの、クレアチニンの腎尿細管輸送を阻害し血清クレアチニンを増加させることがある。【包装】〈ツカイザ錠50mg〉80錠[8錠(PTP)×10]〈ツカイザ錠150mg〉40錠[4錠(PTP)×10]【その他】新薬の14日分処方制限あり*****************************************************これまで自費出版で第4版まで出した拙著「服薬指導のエッセンス」。2024年8月末に、じほうさんから新版が発売されました。現在、第3刷が販売中です。ありがとうございます。増刷なので内容は同じです。どうぞよろしくお願いします。服薬指導のエッセンス 薬効分類にもとづいた患者さんサポートAmazon(アマゾン)3,740円服薬指導のエッセンス 薬効分類にもとづいた患者さんサポート [ 鹿嶋 直純 ]楽天市場日頃の小ネタはX(旧ツイッター)を参照して下さい。調剤報酬など制度絡みのネタもたくさんあります。ツイッター:https://twitter.com/nao_z_3*****************************************************