言葉では伝えきれないものがある。
「空気」とでも呼べばいいのだろうか。
一番実感したのが、三回目に行ったイグアスの滝だ。

 一回目は干ばつのときのブラジル側からだった。
パラグアイにいる親戚の家から5時間ぐらいかけて行ったが、ちょろちょろ。
滝に行き着く前にレストランで食べたチキンライスはまあまあだった。
パラグアイからラ・プラタに帰るときは、まだ橋の架かっていなかった
パラナ河を船で渡り、アルゼンチンへ。その後、ミスィオネスのポサダス空港から
ブエノス・アイレスのホルヘ・ニューベリ空港へ、というルートだった。
船が遅れ、動き始めていた飛行機を待機させ、滑走路をジープで走り、乗り込んだ。
ちょっとアクション映画っぽいその状況に小学生のオレはかなり興奮。

 二回目もブラジル側から壮大な滝を正面からみた。水も十分。美しい。
遊歩道のところに、今回も変な動物(ハナグマ)がうようよいる。
でかいトカゲも日向ぼっこ。

 そして、三回目。
始めてアルゼンチン側からもみる。
泊まったホテルからすぐ近くのジャングルの中にある大小様々な滝の上を、
そこにまたがる無数の橋を使い巡ることができる。マイナスイオンの洪水。
かなりの癒しだ。

 船で滝のすぐ近く、ほぼ真下まで行くツアーもある。
滝の水を浴び、びしょびしょになるツアーだ。そのとき一緒に乗った日本人の
おばちゃんが白いビニール袋をかぶり、無駄な抵抗をしていた。
袋ごとびしょびしょだ。


 ガルガンタ・デ・ディアブロ(悪魔の喉笛)も見てきた。   ここだ。
イグアス最大級の滝のひとつで、形はUの字。
人間が扱うことが不可能だと思える量の水が轟々と落ちて行く。
攻撃的ともいえる猛々しい音に包まれ、それを皮膚で聞く。
そして、無になる。

 炎をみているときと同じように、いつまでも見ていられる。
いつまでも見ていたい。

 あそこに落ちたらひとたまりもないんだろうな。抗う可能性は皆無。
人間ってなんだろう。ちっぽけだな。そんなことすら頭をよぎらない。
その桁違いのスケールに、ただただ圧倒される。
荒々しくも美しい自然の猛威。

 帰る頃には、気持ちがすっきりしている。


 南米に行く機会があれば、ぜひ寄ってみることをお勧めする。
ブラジル側の絵葉書になるパノラマと、アルゼンチン側の迫力。
どうせなら、両方見ておこう。

                    つづく