建設は長く、崩壊は一瞬。 | 宮崎直哉のブログ「子羊としての千年よりも、獅子としての一日」
私は、会社を起ち上げる前に事業会社に従事していました。

事実上は、事業会社のインハウスで、広告、制作事業に加えて経営管理を担う会社でした。

サイバーエージェント時代の顧客であり、大きな広告予算を持ち、市場の中でもハイブランドを謳う女性サービスを展開していながらも、まだ拡がるポテンシャルを思わせ、30歳を手前に自身の力を発揮する場として絶好のフィールドと感じていました。

仕事は広報業務からスタートし、約1年後には広報・マーケティングの統括と、取締役副社長として、会社の舵取りの一部を任せられるようになりましたが、想定したとおり業界でも注目されるような新たな取組みや、緻密な戦略を体現する事に肉迫できる仕事でした。

数字を作るための企画や戦略の実行、人事に関わることに至るまで、実に多角的にチャレンジすることができ、自身の会社を起業する前にこういった経験を積んだことは少なからず糧になっていて、感謝してもし切れないというのが本音です。

ただ、つい先日この会社は事実上解散となりました。

私は3年半前に起業を理由に、円満退職をしていているので、直接影響があるはずではないのですが、自身が従事していた会社が解散となるのはやはり残念です。何よりも解散後の社員の行く末が気になるところです。

自分の会社を成長させていつか大きな恩返しをしたいという気概が、仕事のモチベーションの土台になることも多く、そういう意味では自身に直接影響がないとも言えないかも知れません。

それだけ勤めた会社への思い入れは、これまでのすべての企業に対して深いものです。

解散につながった要因は、経営層の入れ替わりを契機としたあるトラブルであるようなのですが、経営層が変わるような会社の大きな変革期にリーダーの行動、舵取りひとつが命取りになるということの典型的な例を見ているようです。
または変革期におけるリーダーの入れ替えが、組織の意思をリセットしてしまうことにより、0スタートになってしまうことも非常に危険だと教えてくれる事象です。
企業というのはどんなに人数を抱えていても、実は非常に少人数の意思に基いて動いているというのが真理であると思います。

企業は成長させるだけでなく、生命線を絶やさず維持することが非常に重要ですが、その少人数の意思が間違った方向性へ向き、走り出したら止まれなくなったり、止まっても回復手段がないといとも簡単に崩れてしまうことをその場にいずとも垣間見ることができました。

さて、フライング・ブレインの話になると、自身が社長として舵取りをしていますが、一瞬の判断も命取りになる危険性を孕んでいるということをしっかり意識しながら意思決定を重ねていく必要性を日々再確認しているところです。

自分自身も大きな失敗をした経験があり、自分が構築したビジネスをそのままチームに渡して任せてしまった事があります。会社として任せること、権限移譲は企業を成長させるためには不可避ではあるのですが、誰に任せるか、どのタイミングで権限移譲をするかという経営者の慎重な判断が十分でなかった、または欠如した結果でした。

それ以降、社長として構築したビジネスをチームに委ねる際は非常に慎重になるようになりましたが、慎重過ぎてもチームや社員の成長の鈍化につながりますし、同時に会社の成長の機会損失にもなるのですが、そのバランスを見極めるためにやはり人を正しく見ることと、チームのムードを読み解くことに常に集中したリーダーである必要があると感じています

集中力を絶やさない努力は社長に限らず、いかなるリーダーにも不可欠ではありますが、特に成長の目覚ましい企業は経営者のこの集中力がずば抜けていると感じます。

会社経営者は横のつながりも多いため、実に多くの社長の方々とお会いする機会がありますが、その中の自身を常に俯瞰して、最も集中力の高い経営者の一人でいたいと思っています。