行政書士独立開業講座③~法定証拠主義と自由心証主義(その2)~


前回は、許認可業務を立証行為から分類すると、「法定証拠主義」型
と、「自由心証主義」型に分けられるということをお話しました。


「法定証拠主義」型は、行政書士事務所間による能力の差が生じにく
く、価格競争がメインとなる。
この場合、事務員を多数雇い低賃金で働かせて利益を得るのが王道だ
と思います。


「自由心証主義」型は、行政書士事務書間による経験・能力の差が生
じやすい。よって価格競争も大きな比重を占めるのは確かであるが、
「経験・能力」などの実績が大きな競争材料となります。
この場合、よほど手馴れた事務員を雇わないかぎりは、行政書士本人
が主体となって仕事をしなければなりません。


前々回でお話をしましたように、行政書士業務は複合的に業務展開を
するべきです。よって「法定証拠主義」型と「自由心証主義」型の両
方を仕事に組み入れていくべきでしょう。ではどちらを重視していけ
ばよいのでしょうか。


「法定証拠主義」型は、際限のない価格競争に陥る可能性が高いと思い
ます。「会社設立」で具体的にお話をしたいと思います。
会社設立は、「法定証拠主義」型の許認可です。(旧商法時代ではあり
ますが、会社設立の実務本を出版しましたので、会社設立についてはあ
る程度わかっているつもりです。)
以前、会社設立の報酬は15万円前後でした。しかし現在、実務における
報酬の相場の実感として5万円前後になっています。事務書間の価格競争
と税理士事務所による「設立は無料ないしほぼ無料、そのかわり顧問契
約を2年つけてくれ」という抱き合わせ戦略が決定的な価格破壊を生じさ
せたように思います。これは何も税理士事務所を批判するのではなく、
競争社会の厳しさを伝えることを意図しています。競争社会では、この
ようなことは当然に発生します。
ただ会社設立の価格競争についても、行政書士と税理士の違いを比較検
討して、オプションサービスなどを工夫することにより対応は可能であ
ると思います。行政書士と税理士の試験科目などを比べると、オプション
サービスのヒントがあるように思います。


いずれにせよ「法定証拠主義」型は非常に厳しい価格競争にさらされます。
よって、「自由心証主義」型業務を中心にすえて、「法定証拠主義」型の
業務も複合的に行うというのが理想だと考えます。
その為には、許認可の選択と専門的知識を身につけなければなりません。

その点については、次回以降にまたお話をしたいと思います。