祝日があったため4連勤。とはいえ火曜日と水曜日が転職後初めての残業になったため、とにかく疲れた週だった。
そんな中、梅雨も明けたようで、日中は蝉の声が響き、夕暮れどきには蜩が青梅の空気を包み込むようになった。顔の高さを飛び交っていた燕も少なくなり、鶯や杜鵑もその声をあまり聞かなくなってきた。もう蛍も見えなくなったのだろうな。
夕方に帰りつける仕事だと、青梅の季節を味わいやすいのは嬉しいことだ。
そして今日はシネマネコさん、17:05上映回を鑑賞しに行った。
いつものB-5の座席につく時間は、やはり癒される。
悪は存在しない

森の中で空を仰ぎ見るように進んでいく。
その先では、巧が薪を割っている。
巧の生活は諏訪の豊かな自然の中にあり、この日も水を汲みに出かけていた。
その水はうどん屋のためのもので、その主人も遅れて合流した。
その時に聞こえてくる銃声。鹿狩りの音だが、遠い。
そこで娘の花を迎えに行く時間に遅れていることに気づいた巧は慌てて学童保育へ向かった。

その巧にうどん屋の主人は夜の打ち合わせを告げたが、それも忘れていた巧。
「巧さん、忘れすぎですよ」

学童保育に着くと、花はすでに徒歩で帰ったと言われる巧。
どうせ遅くなるだろうからと花も思っているほど、いつも遅れてきていたのだ。
帰り道を辿りながら、森の中に入っていった巧は、やがて花を背負って歩いていた。
花は松の種類などを言い当てながら、背負われていた。
「そういえば、かばんは?」
「学童に忘れてきた」
花はそう言った。
二人はしばらく歩きながら、白骨化しかけた小鹿の屍や、刺のある植物を見て、鹿の水場にやってきていた。
そこで雉のものと思われる羽を拾う巧は「先生が喜ぶ」と花に言った。

その夜、巧が“先生”と呼ぶ地域の長である駿河を含めた集まりに参加した巧。
それは“グランピング場”の建設計画に関する説明会に向けたものだったが、若い男はその事業主の会社が芸能事務所であることや、説明会の開催が告知から期間が短すぎることから、コロナ助成金目当てのものだろうと断じる。
「説明してくれるって言うんだから、まずは聞こうや」
駿河の言葉でなんとなく打ち合わせは終わった。
巧が羽を渡すと駿河が喜んだのを見て、花が不思議そうにすると楽器に使うと言う。
その晩、ソファで眠ってしまっていた花の傍らで、ピアノの鍵盤を見つめる巧。
ピアノの上には死別した妻がピアノを弾きながら花と笑っている写真が飾ってあった。

グランピング場の建設説明会の日。
担当するのは高橋と黛だったが、ひと通り説明を終えた後、質疑応答で住民の不安を突きつけられてしまう。
浄化槽が設置される位置に反対したのは巧だった。その位置では川の水を汚染させてしまうと。
この町では、澄んだ水が住民の誇りでもあったのだ。
うどん屋の妻は、4年前に移住してきた人間だが、水が変わるとこんなに味が変わるのかということを実感してきた人間だった。それだけに水が汚染されるのであれば建設に反対すると言う。
また別の人物は山火事の危険性を指摘した。
夜間に管理人がいなくなるのでは、必ず禁止事項を破る客が出てくると。
「都会の人たちはここにストレスを捨てにくるんですよ」
こうして紛糾しかけた説明会だが、巧はそれをまとめるように語った。
「ここは元々、国が開墾のために移住者を募った土地で、みんなが移住者だ。自然を壊してこうして暮らしているのもわかっている。問題はバランスだ。やり過ぎたら、バランスが壊れる」
その言葉を受けて駿河が総括した。
「上流が起こしたことは必ず下流に影響する。上に住む者には責任があるんですよ」
説明会後、駿河は高橋と黛に巧と連絡先を交換しておくといいと助言した。

東京の芸能事務所では、社長と高橋、黛がオンラインで開発コンサルタント会社の担当者とミーティングを開いていた。
そこでコンサル担当は「説明会を開いたことで行政に対してアピールができる」として計画は予定通り進めると言う。
黛は「住民はバカじゃありません」とコンサル担当に食い下がろうとするが、一笑にふされる。
「住民の意見も取り入れましょう。管理人は24時間体制にする。でも浄化槽の位置変更は建設費の問題もあるのでできない」
社長もコンサルも、助成金のことしか考えていなかった。
着工が遅れるのは困るのだ。
「汚染って言ったって、都会の水よりはずっと綺麗ですよ」
そうしてコンサル担当は話に出た巧を管理人にすれば良いと言い出し、社長は名案だとして高橋と黛に説得に行くよう命令した。

長野へ向かう車中、高橋と黛は前職の話などをしていた。
黛は介護福祉士だったが心を病み、反動で業界に転職したという。
「思ったとおり、クズばっかりでした。でも綺麗事がなくて、いいと思います」
高橋は俳優の付き人をしていたが、俳優の問題もあり、行く先がなかったため芸能事務所のマネージャーになったのだった。
「辞めちゃえよ。キャンプ場建設のために芸能事務所入ったわけじゃないだろ」
「グランピングですよ」
そんな中、ナビ代わりにセットしておいた高橋のスマホに通知が表示され、それを見た黛は笑いをこらえきれなくなっていた。
それは婚活アプリでマッチング成立の通知だった。
「結婚して、田舎に住もうって思ってたからさ、俺が管理人になろうかなぁって、本気で思ってるんだ」
高橋も芸能界に疲れていたのだ。

そしてたどり着いた巧の家。
巧は薪を割っていたが、その様子を見ていた高橋がやってみたいと言い出した。
しかし高橋はうまく薪を割れない。
巧の助言で薪を割れた高橋は、快感を覚えていた。
そんな高橋と黛を連れて巧はうどん屋を訪れた。そこで高橋から管理人になってもらえないかと切り出されたが「俺は暇人じゃない。お金に困ってもいない」と巧は不機嫌になった。
しかし黛が真剣な表情で地域のことをもっと知りたいのでアドバイザーになって欲しいと懇願したことで、巧は少し聞く耳を持つようになった。
「鹿の通り道なんだ。グランピング場の予定地は」
「鹿よけのネットがいるということですか?」
そんなところに都会の人が来たがるのかがわからないという巧。
会計時、うどん屋の水が足りていないことを知った巧は、高橋と黛を連れて水汲みに向かった。
そこで聞こえてくる銃声。鹿狩りだった。
そして花の迎えを忘れていたことを思い出した巧が慌てて学童保育に向かうと、いつものように花はすでに徒歩で帰ったと言われてしまう。

「施設ができたら鹿はどこへ行けばいいのか」と呟く巧。
「鹿は人を襲うんですか?」

車中での黛の問いに「いいや」と答える巧。
「でも、手負いの時にはわからない」

いつものように森の中で花を探して歩く巧、高橋と黛。
思いつく場所を辿っても花は見つからず、刺で黛は怪我をしてしまう。
一旦、巧の家に戻って黛の応急処置を済ませた巧と高橋は再び花を探して出かけていく。防災無線では行方不明として花の情報が流れていた。
町中の人が協力して夜通し花を探すが、花は見つからなかった。
そして明け方。
森を抜けた草原で花を見つけた巧と高橋。
花は銃で撃たれた鹿と対峙し、ゆっくりと近づいていった。
高橋が声をかけようとしたため、巧は高橋をねじ伏せ、首を絞めた。
口から泡を噴いて失神した高橋から離れ、巧は倒れて鼻血を出している花を抱き上げると、森の中へ歩き去っていった。
その後を、朦朧としながら高橋が追いかけようとするが、倒れ込んでしまう。

森の中、空を仰ぎ見るように進んでいく巧の呼吸音。

自然の中での暮らしが全篇を通じて美しい映像で描かれていく作品で、音楽が不安を煽ってくる。
巧たちの日常を壊す出来事としてグランピング場の建設計画が持ち上がるが、基本的に彼らの生活は変わらない。その中で膨らんでいく不安。そしてやってくるラスト。
ラストについては“唐突すぎる”や“あまりに謎めいていて理解できない”などと言われているようだけれど、それが良いとする意見が多いという作品。
どの作品でもラストはそんなものだと思うし、解釈が分かれるから面白いのが映画でもあると思うので、こういった論争はどうでもいいのだけれど、ここまで“芸術性”を前面に出されてしまうと、正直、感情が全て止まってしまった。
ただ、ほとんど素人の俳優だけで作られた作品であることは、監督の能力の高さを知らしめてくれる。
印象的なのは、車の走行シーン。
ほとんどのシーンで、後ろ向きなのだ。なので、行き先は見えない。
これこそが人生であり、生活なのだと思える演出だ。
だから唐突に物語が終わってもいいのだ。

タイトルは自然界のことを表しているらしく【自然の中に明確な悪意は存在しない】ということらしい。
自然を感じるとそういったことを感じるものだけれど、それはあくまでも人間と比べるからだ。自然の一部だったはずの人間が、自然の破壊者になってしまったために感じる罪悪感なのかもしれない。

作品の中で巧も、環境保護の立場にいるわけではない。人間が生活する以上、自然を破壊していくのは仕方ないこととして、バランスを保つ壊し方を主張する。
なんでもバランスは大事なことだ。

だから過剰に保護しようとするのも、バランスを崩すことになる。
ほどほどが、良い。

今日の昼食は、去年の秋にオープンしたome smash burger杉屋さんに初めて行ってみようと思いたった。
これくらいお店っぽくしてくれているとハードルが多少下がるのだけれど、普通の民家に紛れてお店があったりするのが青梅なので、一度目は緊張する(笑)

フライドオニオンバーガーという“スマッシュバーガー”のレギュラーサイズとビールを注文。
肉汁溢れてたしかに美味しいのだけれど、とにかく量が少ない。
おかわりしようかと思ったけれど、初めてのお店でそんなことをできない僕の心の中で、明日はマクドナルドさんのドカ喰いが決まった(笑)

かつて一度ご一緒した名取裕子さんが、制作スタッフが用意した味が自慢の津多屋のロケ弁を見た時の名言が浮かぶ。
「味なんてどうでもいいのよ。弁当は量よ量!」

雨に少し降られながらの帰り道。
近所で盆踊りが行われていたけれど、みんな雨宿りに入ってしまっていたので、雰囲気を味わえなかった。
土日休みになったおかげで、こうゆうイベントごとに遭遇しやすくなったので、こうゆうのが大好きな僕としては嬉しいことだ。

大好きといえば、大好きなアニメ『タッチ』を先週からDVDで一気に観ている。
もちろん漫画も読んで何度も泣いているけれど、アニメだと少し飛び飛びになっているので、改めて全話を観たくなってAmazonで購入してしまった(笑)
ちょうど夏だし(笑)

【風のテーマ-達也のテーマ-】は仕事中も口ずさんでしまっているくらい耳に残る。