昨夜連絡があり、転職先の人と会う日が予定していた日ではなくなった。
その日は休みなのだけれど、午前中は映画に行こうと思っていた日だ。とはいえ向こうも熊本からやってきている人なので、仕方なく了承した。
その日は午前中に新橋へ行って、青梅に一旦戻ってから千駄木へ食事会に行くというドタバタな日になりそうだ(笑)
とりあえず、今日は予定通りにシネマネコさん、10:00上映回を鑑賞しに行った。

いつもの人がいる時間帯だけれど、いつもの人がいなくて自分でいつもの“B-5”の座席を発券した。

枯れ葉
ヘルシンキのスーパーマーケットで働くアンサは、賞味期限切れの商品などを仕分ける仕事をする“ゼロ時間契約者”だが、その仕事の様子は監視されていた。
賞味期限切れの商品を持ち帰り、自宅のレンジで温めるアンサの家は質素で、真空管ラジオからはロシアによるウクライナ空爆のニュースが流れている。
ニュースからチャンネルを変えて音楽にするが、レンジの温めに失敗した食品をそのまま廃棄した。
一方、工場で働くホラッパは作業を終えると“禁煙”と書かれた場所のベンチに座って煙草に火をつけた。
そこへやってきた同僚の友人が「煙草は命取りだ」と声をかけるが「その前に塵灰にやられるさ」と粉塵まみれの現場を皮肉るホラッパ。
ホラッパは作業場にも酒の瓶を隠しているような依存性だ。
そんなホラッパ達はコンテナハウスに寝泊りしているが、友人に強引に誘われてその夜、ホラッパはカラオケに行くことになった。

カラオケバーではステージで人々が歌っていた。
ホラッパの友人は、一向に歌おうとしないホラッパに「俺の美声に酔いしれろ」と言うとステージに上がり【秋のナナカマドの木の下で】を熱唱した。
その歌声はそれなりに喝采を浴び、席に戻ると隣の席にいた女性から「歌が上手いのね」と声をかけられた。
その女性はリーサで、その隣にはアンサがいた。
ホラッパの友人はリーサを口説こうとするが、ホラッパはアンサに見とれてしまっていた。
それはアンサも同じで、二人は言葉を交わすことなく惹かれ合っていた。
ホラッパはいたたまれなくなって席を立って、店の片隅で煙草に火をつけていた。

アンサが期限切れ食品を廃棄していると、それを貰いに男がやってきていくつか持ち帰ったが、その様子も監視されていた。
その日の帰り、出口で荷物検査を強要されたアンサのかばんからは賞味期限切れのパンが出てきた。それによって事前通告なしの解雇となったアンサを庇うようにリーサも期限切れの食品を自らのかばんから取り出して、仕事を辞めるのだった。
しかしアンサは電気料金の請求書を見て、ラジオもレンジもコンセントから抜き、とうとうブレーカーまで切ってしまうのだった。
ネットカフェを訪れたアンサは10ユーロの現金も持ち合わせがなく、8ユーロで短い時間の中で職業安定所から仕事を探し出した。
訪れたカフェで厨房助手として雇われたアンサは、皿洗いを行っていたが、オーナーが怪しげな男達と会っているのを目撃した。
一方、ホラッパは4分の遅刻で小言を聞かされていたが「今週で3回目だ」と言う言葉に「まだ月曜日だ」と口答えをして作業に入った。もちろん、作業場に隠してある酒を飲んで。
アンサにはその月曜日は週給が支払われる日だったが、店にやってくるとパトカーが停まっており、オーナーがドラッグの密売で逮捕されていた。
そこへやってきたホラッパが、アンサに「コーヒーでもどうだ?」と声をかけた。
お金がないというアンサに、奢るよと言ってカフェに行った二人。
アンサの目を盗んでホラッパは懐に忍ばせている酒をコーヒーにさえ入れた。その様子を店内の鏡で見てしまうアンサ。
しかし惹かれ合う二人は、その後映画館に向かった。
【デッド・ドント・ダイ】というゾンビ映画を鑑賞した二人は、映画館から出てから名残惜しそうに話す。
「また会えるか?」
ホラッパのその言葉に「会いたいの?」と返したアンサ。
まだ二人はお互いの名前さえ知らなかったが、次に会った時に名前を教えると言ってアンサは電話番号をメモしてホラッパに渡し、その頬にキスをした。
アンサが去った後、こみ上げる喜びを抑えようと煙草をポケットから取り出したホラッパだったが、その際にメモ用紙が落ちてしまう。
そのことに気づきもせず、ホラッパは煙草を吸った。

コンテナハウスに帰ったホラッパは、ポケットを探したがアンサの電話番号を記したメモは見つからなかった。
一方、アンサは一向に鳴らない電話を見つめる日々。
ホラッパはなんとか再会しようと、アンサと訪れた映画館の前で待ってみたりしたが、当然現れることはない。
しかし、実はホラッパが去った後にアンサも訪れていた。
そんなある日、ホラッパが作業場で怪我をして救急車がやってきた。
救急隊にアルコール検査をされたホラッパからは、当然アルコールが検知され、それを理由に解雇されてしまう。
それでも建設現場なら学歴なしでも働けるという理由で、ホラッパは職を見つけた。
友人と酒を飲みながら「カラオケで会った女性と再会して結婚しかけた」と話すホラッパ。
「電話番号をなくしてしまったし、名前も知らない」

ホラッパは相変わらず映画館の前で待つ日々だったが、その日ついにアンサと再会した。
「電話してくれなかった」

と責めるアンサにメモをなくしたことを告げた。
「いい人でもできたのかと思ったわ」と笑うアンサは、ホラッパを夕食に誘った。
「明日の8時に」と言って、住所のメモを渡すアンサ。
ホラッパはそれを財布にしまい、ジャンバーのジッパー付きのポケットにしまった。

花を買ってアンサの家に向かうホラッパ。一方、アンサはスーパーで食器なども買い込んで料理をした。
二人でのささやかな夕食は幸福感に包まれていた。
しかし食前酒が足りないと言うホラッパは、食事後にアンサの目を盗んでジャンバーのポケットから取り出して酒を飲んでいた。
「あなたのことは好きだけど、アル中はご免よ」
アンサは「父はお酒で亡くなったわ。兄も。母は嘆いて死んだわ」と言ったが、ホラッパは「指図はご免だ」と言い捨てて出て行ってしまう。

アンサは工場で働いていた。
ホラッパも建設現場で働いていたが、酒への依存はさらに強くなっており、作業中にも煽っていた。
そんなある日、カフェで過ごしていたアンサとリーサ。アンサの浮かない表情に「あのクズ男のせい?」と問いかけるリーサ。
「男はブタと一緒よ」と言うリーサに「ブタは大人しくて賢いわ」と、男のほうが酷いと応えるアンサ。
「他の人とは違うと思ったのに」

そんなある日、アンサは工場に入り込む犬が殺処分になると聞いて、その犬を引き取って飼うことにした。
一方、ホラッパは仕事中の飲酒がバレて解雇されてしまっていた。
住む場所もなくなり安ホテルで暮らすことになったホラッパは、相変わらず酒を飲んでいたが、カラオケバーで【悲しみに生まれ、失望を身にまとう】という曲を聴いているうちに何事かを決意していくのだった。
そしてホテルのシンクに酒を流し、ホラッパはアンサに電話をした。
「酒をやめたよ。断酒会の優等会員だ」
とアンサに告げた。
なぜ酒を断ったのかを問われたホラッパは「理由は君さ」と答えた。
「すぐに来て」
ホラッパは隣の部屋の男からスーツの上着を借りると、駆け足でアンサの元へ向かった。
その夜は雨だった。
雨が降りつける窓から外を見つめてホラッパを待つアンサだったが、結局、ホラッパは来なかった。

落ち込んだ気持ちで犬の散歩をしていたアンサは、ホラッパの友人とばったりと出会った。
「カラオケ王さんね」
憶えていてくれたことに感謝をしながら「友人が君を探していた」と言った。
「彼はトラム(電車)に轢かれて意識不明だ」
それを聞いたアンサは、急いで病院へ向かうのだった。
病院に着いたアンサは苗字しか知らないホラッパの“信仰上の妹”だと看護師に言って、病室へ入った。
意識不明のホラッパの傍らで、本を読み聞かせるなどを続けるアンサ。
その日々は繰り返された。

看護師からホラッパが目覚めたという連絡を受けて、犬を連れて見舞ったアンサ。

「君と一緒に婚姻届を出しに行く夢を見ていたよ」
目覚めたホラッパは、そう言った。
「まだ混乱してるのね」

やがて退院の日。
病院から出てきたホラッパを待っていたアンサは、ウインクをした。
「このワンコの名前は?」
「あるわ。チャップリンよ」
二人は、枯れ葉舞う公園を歩いていくのだった。

フィンランドとドイツの合作。
舞台になっているのはヘルシンキで、カレンダーなどには2024年となっているけれどやたらと古いラジオを使っていたり、固定電話が使われていたりと現代っぽくない小道具や街並みから、懐かしささえ漂う。
全篇を通じてラジオから流れるのはウクライナ侵攻のニュースで、だいぶ初期の頃のものも使用されている。
このニュースに関していつも不思議に思うのは、どうして日本は“侵攻”と言い続けるのだろうかということ。
世界ではこれを“ウクライナ戦争”と呼んでいるし、歴然とした戦争状態にあるのに、そこからなんだか逃げたような表現をするのが気になってしまう。
劇中でもアンサが「ひどい戦争だわ」と嘆くシーンがある。
そんな戦争のニュースの流れる中、アンサとホラッパは恋をする。
いくら戦争について非難し嘆こうとも、二人とも日銭を稼ぐことに必死で、その労働者の日常が映し出される。
そんな労働者の二人が孤独の中、出会い、恋をして、すれ違う。
そんな作品のラストシーンの優しい幸福感は、じんわりと心に響いてくる。

フィンランド語なので、いま聴くとさっぱり意味はわからないけれど、劇中で使用された際には訳詞がつくので、心に響きやすい。
“墓場までフェンスに囲まれている”
そんな囚人のような人生に失望しながらも生きていく姿が唄われていて、このデュオの魅力に惹き込まれてしまう。
そしてこの曲が重要な役割を果たしていて、ホラッパが改心するきっかけとなる。

【この映画は荷物を抱えた孤独な人々が人生の後半で出会う物語だ。人生の後半で恋に落ちるのは勇気がいる】
アンサ役のアルマ・ポウスティがこの作品についてこう語っているように、人生の後半で恋に落ちるのは勇気がいる。そしてその恋は、静かなものだ。
若い時の激情はなく、どこか冷静な部分を保ちながら、それでも一気に落ちていく。
印象的なシーンは、カラオケバーでの二人の出会いのシーンと、退院の際の二人のシーンで、この二つのシーンでの二人の距離感を推し量ると、ああ恋ってこうゆうものだなぁって感じられる。
ただ、こんな作品に出会うと僕でさえまた恋に落ちることがあるのではないかと思えてしまうのが厄介だ。
まぁ、僕が恋をすることはあっても、僕に恋をしてくれるような人はいないだろうから、心配することもないか(笑)

今朝の多摩川。
青梅に移住してから約7年、毎日のようにこの景色を撮影してきた。
川は僕を和ませてくれる。
もともと江戸川のそばで育ったからなのか、川が好きだ。
海は“出かけていく”場所であって、僕の身近な生活圏にないものだ。
江戸川下流で育った僕は東京の川は汚いものだと思っていたけれど、この多摩川は清流と呼ばれていて、青梅の水道水は多摩川が水源だ。
同じ水から作られている青梅の酒【澤乃井】は、青梅の水道水を混ぜても飲めると言われるほどだ。勿体ないのでそんなことはしないけれど(笑)
1秒タオルで有名な【ホットマン】が本社を青梅に置いているのは、この清流多摩川のためだ。
そして僕がよく散歩に行く釜の淵公園は、日本で初めて養殖のために鮎の放流が行われた場所。
青梅の多摩川は、夏には泳げる。
これが東京にあるという面白さは、僕が青梅を好きになった大きな理由だ。
あと一ヶ月。
青梅の町を歩くたびに、涙が滲んでしまうかもしれないとドキドキしている(笑)