店舗のマネージャーから他社製品の販売要請を高圧的に受けて、自社製品ではなく他社製品ばかりを売らされる6連勤で、疲労度が高くなってしまったので、今日はゆっくりと二度寝を繰り返して昼頃に起きた。
若干、空咳が出ていて、珍しく精神的な疲れが体調にまで影響した感じさえする。
そんな中、対応したお客様からお誘いを受けたので、その会社に転職できる可能性を探るためにプロフィールを送ってみたら驚くことに即採用の連絡がきてしまった(笑)
販売員を辞められるなら、ありがたい話だし、もともとの映像制作プロデュースという職に近そうな仕事なので、益々ありがたい話。
とはいえ、実際に転職となればまずは今の職からうまく抜けないといけないので、それはそれで面倒だ。
そんなことをしながら日中は、先週、水道工事のため休みだった散髪屋に行って3ヶ月ぶりに髪を切った。
トップの方の髪をできるだけ切らないで欲しいと伝えたら、覗き込まれて「ああ、なるほど」と同情気味に言われてしまった。
そして、シネマネコさん、20:00上映回を鑑賞しに行った。
いつもの人はいない時間帯ではあるけれど、上映スケジュール的に、この回になってしまったのだ。もちろん、いつものB-5の座席。

人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした
安希子が現在の自分を早口で語っている。
アイドルを辞めて、ライターとして正社員登用されてのセカンドキャリア。
夜は友人とお洒落な店でワインを飲みながら恋活。
SNSにはそんなキラキラした姿をアップしていた。
そんな安希子は、ある朝、出勤する際にマンホールの穴にヒールが引っかかり、転倒したが、駅の階段を見つめているうちに過呼吸を発症してしまい、脚が動かなくなってしまった。
その原因はわからないが、一時的なもので問題はなく「私幸せなんです」とカウンセリング医に語る安希子。

カウンセリング医は「もっとゆっくり話しましょう」と諭し、安希子について「治していきましょう」と精神的な病の診断を行うのだった。
会社に連絡を入れると「ゆっくり休む」ように言われ、原稿は“他の人”が書くので心配はいらないと言われてしまう。
本当の安希子は、風呂なしの家賃5万円の6畳のアパートに住み、部屋は荒れ放題。
心を病んだ安希子は3ヶ月の休職ののち、朝も起きれなくなって会社を辞めた。
いつのものかわからない冷蔵庫の奥のチーズを「どうせカビなんだから」とかじりながら、計算をするとその月の支払いを終えると残高は10万円になってしまう。
アイドル時代の衣裳を着てみようとしても、サイズが変わってしまっていて入らない。
「人生詰んだ」と嘆いているところへ、友人で経営者のヒカリが連絡をしてきて、ルームシェア相手を探している“おっさん”がいると紹介される。
家賃は3万円。
「今の安希子には話し相手が必要」だとヒカリに言われたうえ、背に腹は変えられないことから、安希子はその“おっさん”と同居することを決めた。
引越しの当日、玄関で挨拶した“おっさん”のササポンは「適当に、よろしく」と挨拶をするのだった。
安希子は、1記事1000円という格安の仕事を請けながらライターを続けてはいたが、到底稼げるレベルではなかった。
しかし、ササポンには「早くここから出ていきます」と宣言をした。

安希子が前のアパートからの引越しの際に断捨離に失敗したものは、小さな花瓶。
それはかつて通っていた水タバコの店で知り合った浩介という男がくれたもので、浩介から「早口で声がキンキンする」とディスられたが、そのお詫びにと渡されたものだった。
浩介は「くそまじめだよね」と安希子を評し、撮影旅行に誘った。
目を見つめて人を褒められる男は信用してはいけない、という祖母の言葉を思い出しながらも、浩介に惹かれてしまう安希子。

ヒカリの紹介でダンボール梱包のバイトを始めた安希子は、同級生で女優でもある景子とともに働き始めた。
時給ですでに1記事のギャラを上回ってしまう。
そんな仕事をしながら“思い描いていたレール”から外れてしまったことを感じてた。
そんな話をササポンと食事しながらするが、あまり反応を示さないササポンに、安希子が自虐的な表現ばかりしたせいだと思うが、ササポンは「面白いよ」と静かに答えた。
「同世代の人はさ、みんな子どもの話ばっかりなんだよね」と語るササポンは、等身大の“自分”を語る安希子の話を面白いと言うのだった。
「夢を持っている人の話は面白いよ」

浩介との想い出は、安希子を苦しめていた。
浩介と訪れた撮影旅行。そこには幸福な時間があったのだ。
そして「浩介のこと、シンプルに好きかもしれない」と告白する安希子だったが、浩介には結婚を約束した恋人がいたのだった。


ササポンは多くを語らないが、かつて“赤いスポーツカー”を持っていたことを、食卓にあったアルバムで知っていた安希子。
ササポンは休日にはピアノで【別れの曲】を弾いていたが、一向に上達しなかった。
ササポンを紹介したヒカリも、ピアノを弾くことには驚いていたが、とにかくササポンは多くを語らないので不思議な人物ではあったが、安希子は、ササポンとの時間に安らぎを覚え始めていたのだった。
そんなササポンは、居間で季節はずれのスイカを見つめていた。
その様子を上から覗き込んでいた安希子は、ササポンとスイカを食べた。
浩介ともスイカを食べたことがあったことを思い出す安希子。

そんな中、安希子に“1000円記事”の担当者から、大手雑誌の編集長を紹介する話が舞い込んできた。
これでどん底生活から脱出できると張り切る安希子だったが、ササポンはあまり反応しなかった。
それでも待ち合わせ場所のホテルの喫茶室で相手を待つ安希子は、メール一本で仕事の話がキャンセルされ、編集長は来日中のハリウッドスターへの取材の様子をSNSにアップしていた。
相手がスターじゃしかたないと言い聞かせながら「少しだけ呪われろ」と毒づく安希子は、1800円のハーブティーを2杯飲んで、タクシーにも乗れずにテクテクと歩いた。
そのドタキャンの話をするとササポンは「そんな媒体で書かなくてよかったね」と言った。
安希子にとってはチャンスだったものだが、ササポンは「会わなくていい人には会わないほうがいいんだよ」と静かに言うのだった。

友人の景子が結婚することになり、ヒカリとともに景子の新居を訪ねた安希子。
景子は“女優”という夢を捨てて一般人と結婚する。そのことが理解できない安希子だったが「この人となら不幸になってもなんとかなる」と思って自分からプロポーズをしたという景子の話を素直に聞けないでいた安希子は、帰りのタクシーでヒカリに男を集めさせて、飲み直しに行くのだった。
居間で目覚めた安希子は、前夜の記憶がなく、ヒカリに連絡をするが、安希子が“欲求不満”なキャバクラの客のようだったと責められた。そのうえ、その相手のことを“浩介”と呼んでいたと。
「ヒカリは社長じゃん。私にはなんにもない」
安希子は思わずヒカリに当たってしまったことなどの自責の念に苛まれながら、庭に出るとササポンが園芸用の土いじりをしていた。
「若い時はいろいろやってみて、たくさん失敗したほうがいいよ」
そう語るササポンは「過ぎ去ったものは仕方ないよ」と昨夜の失敗をそっと慰めるのだった。

水タバコの店では、浩介の結婚が祝われていた。
離れた席でその様子を見ていた安希子は堪えられず店を出るが、浩介が追いかけてきた。
「ホテル行こ」
安希子は投げやり気味に浩介を誘うが、浩介はそれを断った。
「大事だから、しない」
「最低!」
それが浩介と最後だった。

29歳の誕生日に安希子は、敢えてバイトを入れて仕事でごまかしていたが、仕事終わりにヒカリと景子がやってきて誕生日を祝ってくれた。
そんなこと幸福を感じながらも、来年や10年後のことなどを考えて不安になった安希子は「死にたい」と言う。
そんな安希子を明るく励ましながら歩いていくと、安希子は突然「幸せになりたーい!」と叫ぶのだった。
景子も続き、社長のヒカリもセルフ介護の未来を思って同じく叫んだ。
そして、ササポンの家にやってきた3人は、ケーキを準備していた。
ヒカリがササポンに安希子が迷惑をかけていないかと訊ねると「遠い親戚の、大切なお嬢さんを預かっている感じかな」と優しく答えるのだった。
居間でそのまま寝てしまっていた安希子だったが、テーブルの上にササポンから“美顔器”が贈られていたのに気づき、幸福感に包まれるのだった。

そんなある日、安希子はSNSで浩介に子どもができたのを知って落ち込んでしまう。
その日はササポンは出張に行ってしまうという。
「大丈夫」
そう言いながらササポンを送り出し、バイトに行った安希子だったが、顔色も悪く腹部に痛みを感じていた。
なんとか家まで帰ってくるも、玄関で倒れ込んでしまう安希子。
ヒカリに連絡しても話し中。景子も留守電だった。
浩介の番号がよぎるが、それだけは避けたいと思う安希子は、いつかササポンが話していた“死ぬときに寂しいとか考えないと思うよ”という言葉を思い出していた。
「ササポンの嘘つき。死ぬ時にだって寂しいって思う人もいるじゃん」
安希子が気づくと、そこは病院のベッドの上だった。
同居する家族も恋人もいないと看護師に答える安希子。
そこへやってきたササポンは「初めて救急車呼んだよ」と言った。
「家族でも恋人でもないのに、ごめんなさい」
「それ、関係ある?」
安希子は溢れる涙を抑えることができなかった。
 
虫垂炎で入院していた安希子は、退院して庭を眺めながらのんびりしているとササポンが軽井沢の別荘に行くと言うので、ついていくことにした。
軽井沢の別荘では、自分で作った野菜を丹念に洗うササポン。
そんなササポンに「死にたくなったことはないですか?」と問いかけた安希子。
「離婚した時にね」
ササポンが初めて過去を話した。
「その穴を埋めようと赤いスポーツカーを買ったりしたけど、結局埋まらなくて、いつしか諦めていくようになったよ」
そんなササポンに、安希子は自分の書いている原稿を読んで欲しいとお願いした。
その内容は“人生に詰んだ元アイドルが赤の他人のおっさんと住む選択をした”というもの。
その原稿を読み終えたササポンは「これは同居生活の物語というよりは、他者によって再生していく人の話じゃないかな」と感想を述べた。
その言葉に「ありがとう」と応える安希子。

安希子はバイトの日々を送っていたが、編集者から「バズってます!」と連絡を受けた。
安希子の原稿がSNSで話題になっていたのだ。
そのことをササポンに伝えても、あまり反応のないササポンに、安希子は安らぎを感じていた。

出版社の記念パーティに参加した安希子は、いつかドタキャンした大手雑誌の編集長に挨拶されたが、それで浮かれるようなことはなかった。

カウンセリングを受けている安希子は、カウンセリング医から「ずいぶんゆっくり話せるようになりましたね」と言われていた。

そして残高の増えた安希子は、ササポンの家を出ていくことにした。
浩介からの花瓶はゴミ袋に入れていた。
ササポンに“最後だから”と「ササポンと暮らせて幸せでした」と挨拶するが「最後じゃないでしょ。お互いまだ生きてるんだし」と返される安希子。
「適当に、よろしく」
そう言って家の中に入っていったササポン。
そしてササポンの弾く“別れの曲”が聞こえてきた。
「上達してるし」
安希子は、意気揚々と歩き出すのだった。

元SDN48大木亜希子の実体験に基づく小説の映画化。
作中に出てくる安希子は“元アイドル”という肩書きに振り回されて、必要以上に自分を飾ってしまっていたために心の病を患ってしまう。
思い描いていた理想と現実の自分とのギャップに堪えられなくなってしまったのだ。
その奥にあるのは【寂しい】という思い。
ササポンにそのことを告白するシーンでは、それを“妖怪”と呼んでいる。
そんな真っ直ぐな想いを語る安希子に対して、静かな言葉で語りかけるササポンが、本当に魅力的だ。
29歳の元アイドルと56歳のおっさんが、家族でも恋人でもない関係の中で、お互いに影響し合っていく様子が、とにかく印象的だ。
ササポンという存在は、サラリーマンという表現で括られているけれど、都内に一軒家を持ち、軽井沢に別荘も持っているような資産家とも思えるけれど、その素性は最後まで不明だ。
実際のところ、その素性は本篇にはなんら影響しない不要なものだ。
一生懸命、現状から脱却しようとしている安希子にも、終始静かなササポンにも、どちらにも共感できる作品で、最後の別れのシーンには爽やかな涙が滲んできていた。

ササポンが“死にたい”と思った時の話をするそのセリフは、まさに僕に突き刺さるものだった。
そう、何をしても穴は埋まらないのだ。
だから誤魔化して、諦めていくしかない。
なかなか死ねない以上、生きていくためにはそうするしかない、というのは、まさに僕に当てはまるものだった。
29歳と56歳とはいえ、僕ならつい恋愛感情を持ってしまうだろう。
ササポンに比べて僕はまだまだ若い。
現実には、叶わない恋になるだろうけれど(笑)
そういえば、僕がいつも食事に行っている子たちは20代ばかり。
彼女たちから見て、僕はどう映っているのだろう?
ササポンのように、安心感を与えられていたら嬉しいけれど、正直、どちらかというと僕は安希子に近いので、難しいだろうな(笑)
せめて僕も、この“詰んだ”生活に終止符を打てればいいなぁと思ってしまう作品だった。

調布橋のたもとの“怪談雪おんな縁の地”の碑のところの梅も咲き始めていて、その他の場所でも、青梅を歩いていると、あちこちに様々な種類の梅が咲いているのが見られるようになってきた。
また雪予報が出ているけれど、しっかりと春を感じられるようになってきたのだ。
とりあえず、面倒なことはいまのところは考えずにいようと思う。
僕は今までもこれからも、出たとこ勝負しかできない。
ご利用を計画的にできない性質だ(笑)
それに、深く考えても、うまくいくとは限らない。

調布橋からの、今日の昼間の多摩川。
この場所で、青梅に移り住んでからのほぼ毎日、同じ写真を撮ってきた。
変わらないようでも、毎日表情が違って見えるものだ。
僕も明日から販売員での5連勤。いつもと変わらない日常だ。
それでも間違いなく変わっていっている。
先のことを考えても仕方ない。どうせそれはすぐにやってきてしまうものだ。
何かが変わろうとする中、誰かとその話をしてみたいと思ってしまうけれど、そこは独りの辛いところで、こんな何気ない日常の変化を話せる相手はいない。
また誰かと食事会の予定を組めたら、その誰かに相談してみたいものだけれど、誰と、いつになることやら・・・。