この5連勤。まったく売れない日もあって、とにかく疲れた。
そのうえ再び右上腹部に痛みに近い違和感を感じるようになった。
慢性的な脚の痛みでフラフラするし動きが鈍くなっているけれど、これももうどうしようもない。もはや腿が痛いのか脹脛が痛いのか膝が痛いのかもわからなくなっている(笑)
疲れからか朝なかなか起きれなくなっているけれど、今日はシネマネコさんの9:30上映回へ。
いつもの人がいつものように素敵な笑顔でいつものB-5を発券してくれた。
『流浪の月』
ブランコに揺れる少女の更紗。
雨が降り出してもその公園のベンチで本を読み続ける更紗に傘をさしてきた文。
「帰らないの?」
という文の問に「帰りたくない」と答える更紗。
「うちに来る?」
文に頷いて答えた更紗は、文に連れられて歩いていった。
 
現在。
更紗はレストランでバイトをしていた。
客が席でネット動画を見ている。それは15年前の事件の動画。
湖畔で警察に逮捕される青年と、青年から離れたがらない少女のものだ。
「完全に洗脳されてるよなぁ」
そんな言葉を聞いて、更紗は店外に気分転換に出る。
 
更紗は彼氏の亮と暮らしていた。
亮は一流企業に勤める会社員で、実家は農業を営んでいた。
更紗は結婚の挨拶のために一緒に実家に行こうと亮に言われるが、渋っていた。
更紗には驚く過去があることを憐れむような亮。
「亮が思うような、可哀想な子じゃないよ」
 
少女の更紗は、文の家で暮していた。
父の病死後に彼氏と失踪した母。おばの家に世話になる肩身の狭い暮らしをしていた更紗にとって、物静かな文との時間はのびのびとした楽しい時間だった。
「いつでも帰っていいんだよ」という文だったが、更紗は帰りたがらず、そのまま文と暮らし続けた。
 
現在。
バイト仲間との飲み会に参加した帰りに、同僚でシングルマザーの安西に誘われて入ったカフェ。
注文をとりにきた店主の声に驚く更紗。
店主は、文だった。
 
更紗は悪夢にうなされていた。
それは少女の頃、従兄弟に性的虐待を受けていたという経験のトラウマだ。
更紗は、落ち着ける場所として毎晩のように文のカフェを訪れるようになったが、文は一向に気づかない。
それでも文のそばにいられることで安心できる更紗はカフェを訪れ続けた。
そんな時間に亮が電話をかけてきたり、バイト先へシフトを教えて欲しいなどの電話をしてきたりするようになった亮は、突然カフェにやってくるまでになった。
 
少女の更紗は文の家でのびのびしていた。
そんな時にテレビから流れてきたニュース。
10歳の少女更紗が行方不明となっており事件に巻き込まれた可能性があるとして、実名報道されていたのだ。
「文、誘拐犯にされちゃう」
文のことを気にする更紗だったが、文はそれでも良いと考えていた。
「誘拐犯にされたらいろいろ知られちゃうな。死んでも人に知られたくないことまで」
 
現在。更紗は文に声をかけたくて店の前で待っていた。
閉店後、出てきた文の傍らには恋人がいた。
そしてその後をつけ、二人がマンションに入っていくのを見届けた更紗は「良かったね、文」と呟いた。
更紗が家に帰ると亮がうずくまっていた。
祖母が入院したという知らせを受けたからだったが、更紗が一緒じゃないと嫌だと言い、更紗が了承するまで強く腕を握りしめていた。
 
亮の家族は温かく更紗を迎えたが、顔を洗っていた更紗に親族の女性が声をかけてきた。
「その痣、亮君のせいでしょ」
以前交際していた女性もそういうことがあったらしく、家族全員が見ぬふりをしているという。
「亮君は、困った時に逃げ場がない人がいいみたい」
 
更紗は、バイト先の同僚からネット上の書き込みのことを知らされた。
同僚たちも更紗の【女児誘拐被害】の過去は知っていたが、その【女児誘拐犯】の情報の書き込みだった。
それはカフェで働く文の姿。
その画像を上げたのは亮だった。
「文がやっと手に入れた幸せなのに!」
激しく言い争う更紗と亮。
ついに亮は激しく更紗を殴り「あいつはお前を誘拐した変態のロリコン野郎だろうが!」と蹴るなどの暴行をする。
倒れている更紗に覆いかぶさり襲おうとする亮を電灯で殴りつけ、血まみれのまま外に逃げ出す更紗。
 
少女の更紗は文と湖に来ていた。
その時に警察がやってきて、文は逮捕される。
その直前、文は更紗の手を握りしめて言った。
「更紗は更紗だけのものだ。誰にも好きにさせちゃいけない」
保護される少女の更紗は、文と離れたくないと叫び続けていた。
 
そしてたどり着いた文のカフェのそばでうずくまっていた更紗に、あの雨の日の公園の時のように声をかけてきた文。
「店、来る?」
カフェの中で更紗の顔を拭く文。
「もう気づかないフリはしないの?」
文も更紗に気づいていたのだ。
それから更紗は、従兄弟のことが言えず文が誤解されたことなどを謝りたかったと話し出す。
そしてネットで騒がれていることも。
「生きていたって良いことなんかない」
そうゆう更紗の髪を撫でながら、文は「生きていたからまた更紗に会えた」と言葉をかける。
「私ってどんな子だった?」
「すごく自由だった。ひくくらいのびのびしてた」
 
それから更紗は文の部屋の隣の部屋で暮らし始めた。
そのマンションで郵便受けを漁る亮と出くわした更紗は、亮と言い争う。
戻ってくれば許してやるという亮に「なんで私が許してもらわなきゃいけないの?」と言い返す。
 
ある日、安西の頼みで安西の娘梨花を預かることになった更紗。
安西は最近できた恋人と3泊で沖縄旅行に行くと行って去っていったが、3日を過ぎても戻ってこず、連絡もつかなくなってしまった。
梨花が熱を出してしまった際には、文が梨花の面倒を見てくれた。
しかしネット上では梨花と文の画像がアップされたり、週刊誌では【15年前の幼女誘拐事件の被害者と加害者の驚くべき現在】として記事になった。
文のカフェにも落書きがされ、マンションには全室の郵便受けにビラがまかれていた。
 
亮の仕業だと思った更紗は亮の部屋を訪れるが、亮は荒んだ生活はしていたがビラは自分じゃないと言った。
「ロリコンを気持ち悪いと思う人間なんて腐るほどいるだろ」
更紗が部屋を出た後、追いかけるように外に出てきた亮は手首から血を流していた。
救急車に乗せられる亮に手を添えていた更紗だったが、亮は「もういいから」と言って手を離した。
そして警察で事情聴取を受ける更紗だったが、聞かれるのは文のことばかり。
「連行しろ」と他の刑事に命じるのを聞き、
「文はなにもしてない!」と叫ぶ更紗。
その頃、文のカフェには警察が押しかけ、梨花を保護しようとし、文に出頭を命じていた。
抵抗する梨花の姿から、我を失った文は「もうやめろ!」と暴れ出していた。
 
文は母親に問いかけたことがあった。
「僕のことも出来損ないだと思っているの?」
不機嫌な顔で母親は言った。
「あなたが異常なのは、産んだ私が悪いとでも言うの?」
 
カフェの片隅でうずくまっている文のもとへ更紗がやってくる。
迷惑ばかりかけているのに、文のそばにいたいという自分勝手な思い、湖で文が強く握ってくれた手の感触。
泣きながら更紗は心情を吐露していく。
そんな思いに応えるように、文は立ち上がりおもむろに服を脱ぎ、裸になった。
そして更紗の方へ向き直り「みんな大人になっていく。更紗も立派に大人に成長した。僕だけがいつまでも大人になれない」と泣いた。
第二次性徴が訪れない病気。それを知られることを一番恐れていた文だった。
そんな文を抱きしめる更紗。
 
更紗と文は、自分たちを知らない土地で二人で暮らしていこうと決意した。
「また気づかれたらどうする?」
という文の問いかけに更紗は「その時はまた流れていけばいい」と答えて空を見上げた。
朝から観るには重い映画だった。
でもほどよく雨天の日の今日で良かったかもしれない。
少女の更紗にとっては救い主であった文の行動も、世の中では【誘拐】となってしまう。
世間の噂話は止めようもなく、そこにあった真実も事実とは認められない。
【女児誘拐】となれば世間の見る目はさらに冷たくなるし、そこにどんな【真実】があってもそれを受け容れようとはしない。
広瀬すずの名演もさることながら、10歳の更紗を演じた白鳥玉季が素晴らしかった。
彼女なしでは、この作品はここまで切なくは仕上がらなかっただろうし、撮影監督も見事。
シーン毎の明暗が、人物の心情を描写していく。
更紗は10歳の時に【文】という居場所に出会っていたけれど、文は更紗に自分のことを告白するまで、本当はすでに見つけていた居場所にさえいられない気持ちだったのだろう。
文が握りしめてくれた手の温もりや強さを、今度は更紗が全身で抱きしめる。
世間的に【まとも】な亮の方がむしろ猟奇的な性格のDV男だし、ネットの情報に振り回され、好奇の目で文をスマホで撮影したり、嫌がらせを行う世間。
人の目を曇らせてしまうのは、知識と情報と経験だ。それらはいつも先入観を生み出してしまう。そして今の世の中で、それを遮断することはほぼ不可能だ。
世間の風は、年を重ねるごとに強く感じるようになっていく。
 
シネマネコさんを出る時に、いつもの受付の人が雨が強いことを知らせてくれた。
この映画の冒頭のように降る雨。
そんな中、日用品の買い物をして家に戻ってきた。
3/7は吉野梅郷の【梅の公園】へ独りで梅を見に行った。
プラム・ポックス・ウイルスの感染拡大防止のために全伐採されてからもうすぐ10年。
新たに植えられた木々は小さく、かつて日本一と言われた梅の名所は、まだまだ寂しい。
青梅市の公式キャラクター、ゆめうめちゃん。
独りでこの寂しい【梅の公園】の風景を見ることにも慣れてきた。
木は小さくても、一輪一輪は力強く咲く。
やっぱり僕は、梅の花が好きだ。
種類が多すぎて覚えられないけれど、桜よりも圧倒的に春の訪れを感じさせてくれる。
行きは東京アドベンチャーラインに乗って最寄りの日向和田駅まで行ったけれど、帰りは自宅まで歩いた。
歩いても1時間弱。
この日は陽射しが心地良かった。
The older you get, the stronger the wind gets; and it's always in your face.