年をとると日本人は結局演歌を好むようになる・・・ってなことを、以前可愛がっていただいた方がおっしゃってました。この方はその昔、名の通ったGSのメンバーだったんですが、そんな人でもそうなるのか、じゃあ僕も先行きそうなるのか?でも演歌って、どっちかてぇと日本人よりも韓国人のほうが好むんじゃないのか?などと思ってました。で、僕自身がある程度の年齢に達してみると、その方の言われることにも一理あって、年とともに確かに聴きたくなる音楽に変化があるようです。ただし、僕の場合は演歌にはいきませんでしたし、これから先もいかないでしょうね。
それというのも、僕がどこへ向かったのかと言えば、ブルーズなんですよ。それも高校生の頃から聞いていたシカゴ系ではなく、ミシシッピ・デルタとか、アコースティックギター一本でやってるようなヤツ。ただブラインド・ナントカさんみたいな人が大勢いたり、だからある意味演歌に近いのかなぁ・・・でも肝心要のグルーヴが違うからねぇ・・・でも淡谷のり子って人がブルースの女王だったしなぁ・・・おんなじなのかなぁ・・・でもご本人は演歌は貧乏臭いって嫌ってたけどなぁ・・・とにかく僕のアコースティック・ブルーズの聴取頻度は年追うごとに増すばかりなんですが・・・
本稿では勝手に、ぜひ聴いていただきたい「アルバム」をテーマにしてしまいました関係上、そうなるとどうしてもシカゴ系に偏ってしまう感がございまして、まずはその筆頭、
Howlin Wolf「Moanin in the moonlight」
これねぇ、高校の時に初めて聴いてビ~ックリしたんですよ。針を落したらいきなりご本人の唸り声ですよ。演歌というより浪花節に近い。なんでもヨーデルがやりたくてもできないからああなったとか、わけのわかんないことを言ってたらしいっす。このアルバムは59年にリリースされたもので、51年からのシングルの寄せ集めらしい。それにしてはアルバムとしての完成度が異様に高いように思いますが、まあ結果論なんでしょうな。これに「レッドルースター」と「キリングフロア」を足せばウルフさんのベスト盤ですよ。
ウルフさんといえば不惑を過ぎて歌手デビューしたという遅咲きの人。だからこのファーストアルバムが、いきなりピークだったかもしれません。この人を見つけてきたのは、創価学会の元女房にボロカス言われちゃったアイク・ターナー。アイク&ティナの前に既にシカゴブルース界の重鎮として君臨していて、このアルバムでもピアノで参加しています・・・日経もこういう人に「私の履歴書」書かせりゃいいのに。ならオレ購読するよ。
曲の提供やベース担当が同じく重鎮ウィリー・ディクスンだったり、ギターはもちろん盟友ヒューバート・サムリンだったりと、周囲もガッチリ固まっていて、聴いててストレスを感じることがありません。僕は好みが激しいのか、アルバム一枚通して聴くということがまずないんですが、これだけは曲を飛ばして聴いたためしがありません。それほど好き。そして、
Magic Sam「West Side Soul」
残念ながら若死にしちゃったんですけど、ギターが上手い人でした。同じシカゴでも3大キングやオティス・ラッシュあたりの甘いトーンとはまた一味違う、比較的歪みの少ないキラキラした音で、やってることもオーソドックスなシカゴスタイルはもちろん、ジョン・リー・フッカースタイルのブギーが混ざっていたりと、やっぱり聴いてて飽きることがありません(僕基準)。ただ、歌のほうは上手いのか下手なのか、よくわかりません。B・Bさんなんか、かなり歌上手いから比べちゃうとちょっと・・・。次、
Junior Wells「Southside Blues Jam」
ジュニア・ウェルズというと、この5年前に出された「Hoodoo Man Blues」を名盤に挙げるブルーズファンがほとんどなんですが、僕はこっちなんですよ。本人の歌とブルースハープはどっちも満点(僕採点)なんですが、こっちには僕が大好きなオティス・スパンのピアノが入ってますんでね。その分バディ・ガイのギターの割合が薄まってるんですが、正直なところ、この人のギターにシビてれるファンが大勢いるみたいですが、僕はその良さがわからないんで、そのせいもあるかもしれませんね。ちなみにジミヘンはソロデビュー前にバディさんの楽屋を訪ねて、録音をとらせてもらえないかとお願いしたようで、だからきっとすごいギタリストなんですよ。でもジミヘンってば、歌い方がディランを真似たりとか、時たま僕には意味がわからないことするんです。天才だからね。
John Lee Hooker「I Feel Good」
ミシシッピ代表フッカーさんの69年作。ブルースロック界(ってんだから、多分白人ども)にもかなりウケたというんですから、ちょっと心配ですけど、確かにこの人の他のアルバムと違ってこれには怠さがありません。特にこれを気に入っている理由は、古典的名作ローリン・アンド・タンブリンを得意のブギーに編曲して奏ってるところ。この曲はクラプトンはじめウインターとか、いろんな人が奏ってるんですが、やっぱりマディ・ウォータス版とこれが最高。んも~白人はグルーヴが違うんだから、やめてもらっていいすか?僕のじいちゃんは「宗旨違いには娘を嫁にやるな」と言ってたそうなんですけど、僕だったら「グルーヴ違いには娘を嫁にやるな」ってところ。いや、本気だってば。だって夫婦で好きな音楽が違ってて、ハイ、じゃ今度はアタシの好きな曲かけるね♡なんて言われたひにゃ、そのたんびに旅に出なきゃなりませんから、お金がかかってしょうがないもの。
Luther Allison「Bad News Is Coming」
初めにご紹介したウルフさんが奏ってた「レッドルースター」と「イーブル」がのっけから2曲続くんですが、それがまた分厚い音で、それだけでポイントが高い。やっぱりなにごとも最初が肝心ですな。本人が意識したかどうかは定かじゃありませんが、70年代に入ってからの作品のせいか、実はロック色と、モータウンからのリリースということもあってか、R&B色がかなり強い。だからこの人、グラミーみたいなしょうもないもんにノミネートくらっちゃったこともあるんですが、ただやはりそこはブラザー、完全にブルーズとR&Bのグルーヴです。ロック少年だった僕は当時から大好きな人だったんですが、周囲の反応は冷ややかなものでした。なんでだろ?僕にとっては演奏技術なんかどうでもいいんですけど、アリスンさんに限っては歌もギターも上手いんですから、世間様ももうちょっと評価してちょうだいね。ブルーズロックってことなら、レイボーンあたり聴くより僕はいいと思うんだけどなぁ・・・
う~ん・・・基本的にですねぇ、上記はメジャーな方々ばっかりなんで、ブルーズ好きの皆さんからはなんだよと思われたと思うんですよ。個人的にはアルファベット順に挙げればアーサークルーダップ、ビッグビルブルンジー、ビッグジョーウィリアムズ、ビッグママソートン、ブラインドな方々、ブッカホワイト、チャリーパットン・・・その他諸々とてもZまでは書ききれないほど大好きなブルーズマンが大勢いるんですが、でもアルバムで選んじゃうと結果的にどうしてもこうなっちゃうんです。そこはご理解いただきたく。
と、いうわけで、結局は高校時代から聴いていたものばっかりで、じゃあ冒頭の演歌云々の話はなんだったんだってことなんですけど・・・よくよく考えたら、音楽の好みってそうそう変わるもんじゃないかも。でも最近メシ食ってるときなんかは、スリーピージョンとかブッカホワイト、ビッグビルなんて、ギター一本のヤツばっかり流してはいるんですけどね。上記の5枚をじっくり聞いてみたいという奇特な方は、調べたところ YouTube にすっかり揃ってましたからどうぞご随意に。次回、いつになるかはわかりませんが、70年代ロック編ということで、そんなに楽しみにしていただくようなものではござんせんが、何卒宜しくお願い申し上げます。
Howlin' Wolf - Moanin' at Midnight
ヘたっちなヨーデル(本人談)
Luther Allison - Red Rooster
コケコッコのおじさん・・・には見えない。