妄想⚠




智が変わった。

なんか、ツヤツヤ?…ピカピカ?

あっ!イキイキしてる、だ!

うーん…あとは、楽しそう?

夜のゲームの時間にこっそり覗いたの。

椅子に腰かけて絵を描いてる智を。

左手にパレット持って、右手に絵筆。

キャンバスに向かってる姿がもう、もうもうもうもう!カッコイイー♡♡♡♡♡

あのお膝に乗っかって抱きついてキスしたくなっちゃうくらい。

でもね、できなかったの。

邪魔しちゃうのもあるけど、近づけない感じがして。

シャッター音消して写真は撮ったよ。

あと、動画も。

そして、またこっそり部屋を出た。



もとから絵を描いてるときは集中してた。

でも、今は、描きたくてしかたない。

描くことが楽しくて1日中でも描きたい!

そんなことをしたら和が心配するからしないけど、こんな気持ちになったの初めてだ。

あれも描きたい。これも描きたい。

頭の中がイメージでいっぱいで絵にするのが追いつかない。

だけど、そんな頭のどこかに和がいる。

どんな絵の中にも和がいる。

湖のほとりにも、木の枝の上にも、海の波間にも、どこにでも。

和のいない絵は俺の中で成立しないんだ。

それだけ和が大好きってことなんだろう。

あ、こないだの家族の絵は写真を見てたから描けたんだ。

さすがに家族写真に和を入れるのは…。

ていうか、俺が嫌だったんだ。

和は俺のだから。俺も和のだけど♡



あっという間にその年の師走が来て、年が明けた正月7日。

智とオレは七草粥を食べて今年は病気しないよねなんて話してたとき誰かが訪ねてきた。

和じ「和也♪明けましておめでとう♪」

智じ「和也様、明けましておめでとうございます」

和「お正月に屋敷で会ったでしょ」

智「この家に来るのは初めてだな」

いきなり智とオレのおじいちゃんが来た。

和じ「大野(智父)から智が絵を描いてると聞いてな?見に来た」

智じ「二宮は画廊もお持ちですので」

和「じゃあ、おじいちゃんが智の絵を見て、画廊と契約するか決めるってこと?」

智「俺、まだコンクールにも出してないぞ」

いいからいいからと智のアトリエに案内してって強引にお願いされた。



キャンバスや壁に立てかけられた俺の絵を、1枚1枚和のじいちゃんが見ていく。

もれなく俺のじいちゃんも。

すぼての絵を見終わった和のじいちゃんは、しばらくの間黙ってた。

和「ねえ?どうだったの?」

和が聞いても黙ったままで和のじいちゃんはアトリエを出た。

もれなく俺のじいちゃんも。

和と俺もその後に続いた。

和「もう!おじいちゃん!」

和じ「…素晴らしい」

智「へ?」

ちなみに俺のじいちゃんは勝手にコーヒーの用意をしてた。

ドカッとソファーに座った和のじいちゃんは俺を見て…手招きした。

対面のソファーに和と座ると、身を乗り出してきたから、思わずのけぞった。

和じ「智!うちの画廊と契約してくれ!」

和「え?」

智「は?」

智じ「旦那様は智の絵をお認めになられたのですよ」

和じ「それだけではないぞ!どの絵にも和也が描かれていた!それも、ごく自然にな!」

やっぱ、知ってる人にはバレるのか。

それよりも和の絵が描いてるから契約するの嫌だなぁ。