妄想⚠
実家に帰って2日目、和と一緒に母ちゃんが作ってくれた朝飯を食べた。
智「面会時間までどうする?」
和「翔さんと話してみたい」
和が休みだから翔くんを相葉ちゃんも休み。9時まで待ってから電話した。
翔「…そんなことになってたんだね」
翔くんは時々和に質問しながら話を聞いてくれた。
翔「実際にニノのお母さんと会ってないから断言はできないけど、いい?」
和「はい。よろしくお願いします」
翔「ニノのお母さんとお父さんの話がかみ合ってないこと、ニノのお母さんの入院期間が長いこと、その間の病状に変化がないことを考えたらショック療法しか思いつかない」
和「ショック療法ですか…」
翔「簡単に言えば現実を受けとめてもらうんだよ。病状が悪化するリスクはあるけど今のままだと良くも悪くもならない」
和「翔さん。ありがとうございました」
医師としての翔くんの考えを聞いてしばらく和は考え込んでいた。
俺はそんな和を黙って見つめていた。
和「誰にでも弱い心はどこかにあると思う。俺は母さんに自分と向き合ってほしい」
智「和の思うとおりにしてほしい。俺は和の傍にいるから」
和「うん。先に先生と話さなきゃね」
智「病院に行く前に電話して、先生の都合を聞こう」
俺ん家の電話で病院に電話したら午後1時に来てって言われた。
あと3時間近くある。その間どうしてよう?
智母「ねえ、せっかく帰ってきてくれたんだから私に付き合ってくれない?」
和「俺はいいよ」
智「んじゃ俺も行く」
母ちゃんは嬉しそうに俺達を車に乗せて俺達の服とか靴とかを楽しそうに選んでた。
デパートの喫茶店で、3人でケーキセットを食べてから病院に送ってくれた。
先生「ショック療法ですか…」
話を聞いた母さんの主治医の森田先生は難しい顔をして、反対の理由を話してくれた。
和「それはわかってます。母は病気というより自分に向き合えない性格だと思うんです。それを何とかしないと一生このまま入院してなきゃならない」
先生「………同意書にサインが必要です」
和「はい。俺が書きます」
治療に関する文章をよく読んでサインした。
先生「では二宮さんを呼んできます」
和「お願いします」
俺は隣に座ってる智の手を握った。
先生「こちらです。どうぞ入ってください」
和母「あら?和也、また来てくれたの…」
和「母さん、俺は北の大地で看護師をしているんだ。智は俺の恋人だよ」
智「おばさん。久しぶり」
和母「やっぱりそうだったのね!和也を変な道に誘い込んで!和也が赤ちゃんの頃から!だから言ったのよ!」
先生「二宮さん、落ち着いて…」
和「母さん?4つの子どもが赤ちゃんに変な考えを持ってるわけないでしょ?智は母さんのために北の大地の山小屋で働くことを決めたんだから」
和母「え?」
和「俺が智としか遊ばなかったのは母さんが俺を大野家に預けて働いたからだよ。大野家から俺は学校に行ってたし大野家に学校から帰ってきてた。その家の子どもの智と仲良くなってもおかしくないよね?保育園のときも小学校も中学校も」
和母「そ、それは…」
和「俺が中学2年になって母さんに智と遊んじゃいけないって言われた。今までさんざん俺を大野家に預けといて、急に智と遊ぶな?急にそんなこと言われた俺がどう思うかとか考えもしなかったよね?」
俺は口を挟まず和を見ていた。それが先生の出した条件だったから。
このあとも和は和の母ちゃんに事実を延々と話し続けた。
放心状態になった和の母ちゃんを先生が病室に連れていくまで。
和「今さらだけど、ごめんね?俺のせいで、智に寂しい思いや辛い思いをさせて…」
そんなことを言う和のほうが辛そうで、俺は和を抱きしめた。