妄想⚠





空港に着いて、電車と地下鉄を乗り継いで、最寄り駅で降りた。

和「あんまり変わってないかも」

智「そうか?知らない店や家とかある」

和「智は俺プラス10年だからね」

智「連絡してないけど母ちゃんいるかな?」



俺の家に着くまで、懐かしい景色と知らない景色が混じってて変な気分だ。

チャイムを鳴らすと、すぐに母ちゃんの声が聞こえてきた。

智母「はい?」

智「母ちゃん。俺…智」

ガチャッと玄関のドアが開いて、少し老けた母ちゃんが顔を出した。

智母「智…元気だったのね」

智「季節の挨拶はラインでしてたけど?」

智母「バカねぇ。あんなので元気かどうかなんてわかるわけないでしょ」

和「あの、おばさん。お久しぶりです」

智母「まあ、和くん!綺麗になって…」

智「母ちゃん。家に入れてくんない?」

いつまでも立ち話をしてたら隣のおばさんに何を言われるかって心配だから。

智母「そうね。さあ、和くんも上がってちょうだい」

智「ただいまぁ」

和「お邪魔します」

リビングのソファーに落ち着くと母ちゃんがコーヒーを出してくれた。

智「これ、お土産」

和「俺からもお土産です」

智母「まあまあ♪ありがとう♪和くん、ここは和くんの家でもあるんだから、昔みたいに話してほしいわ」

和「おばさん…あの、母は?」



なんで自分の母ちゃんのことを俺の母ちゃんに聞くんだろ?

不思議そうに和を見てたら母ちゃんが話してくれた。

和の母ちゃんは精神的な病気になってずっと入院してるって。

なかなか良くならないけど和の話はよくするんだって。

智母「お隣は夜にならないと誰もいないの。それまでうちにいてちょうだい?」

智「和はどうしたい?」

和「俺は…母さんのお見舞いに行きたい」

智母「そうね。和くんのお母さんだものね。でも智は顔を見せちゃダメよ?」

智「わかってる」

和「ごめん…智はなにも悪くないのに」

智「おばさんは病気なんだ。和なら…看護師ならわかるだろ?」

和「うん…」

なぜか母ちゃんも和の母ちゃんのお見舞いに行くことになった。

智「じゃあ、ここで待ってるから」

智母「ゆっくりしてきていいのよ?」

和「うん。いってきます」

ここは入院病棟のエレベーターホール。

窓際の椅子に母ちゃんと座って和を待った。

智母「和くんに会って、少しでも良くなればいいんだけどね」

俺は黙って頷いた。



和母「和也!やっと帰ってきてくれたのね」

和「ただいま。母さん。これ、お土産」

和母「何かしら?修学旅行のお土産なの?」

和「…まあ、そんなところ」

母さんの中で俺は中学生になっていた…。