家では両親がそれぞれ抱える問題に振り回され、高校生活では周囲に迎合することで自分を抑え続けて過ごす女の子は、ある日お気に入りのショールを母親に取り上げられたことをきっかけに家を飛び出し、久しく会うことのなかった父方の祖父が暮らす盛岡に向かう。祖父の家は代々続く羊毛で作られるホームスパンを製作する老舗であり、子供のころから大事にしていたショールはすでに亡くなった祖母が作ってくれた唯一の形見だった。寡黙な祖父は孫の突然の来訪を受け入れて、ホームスパンに興味を示した女の子に羊毛を紡ぐ技術を教え始めるが、一人娘が突発的に家を飛び出したことに衝撃を受けた両親は、娘の将来を案じて帰宅を促そうとする。ところが、母親の一方的な言動が問題をさらに拗らせてしまい、教師の母親が受けるSNSでの攻撃と父親が長く勤めてきた会社の売却によるリストラの危機によって、子供の問題を超えて夫婦間にも大きな亀裂が生じるようになる。自分の将来を見通すことができないまま不安定な日々を送る少女は、次第に羊毛を扱うことに興味を覚え始め、かつて祖母が織っていたショールを自分の手で作り上げようと奮闘し、祖父母が手掛けてきた岩手のホームスパンの技術を継ぐことを決意する。両親もこれまで内向的で意志が弱かった少女が発した強い決意に動かされ、盛岡での生活を応援するようになるが、ある日それまでの生活を大きく変える出来事が起こってしまう。
高校生の女の子が様々な苦難を乗り越えて新しい一歩を踏み出していく人間ドラマです。家庭の中では口うるさい母親と言葉少ない父親の間で自分の存在を見失いかけ、学校では周りの視線を伺いながら顔に笑みを張り付けることで孤立を深めていく少女が、突発的に家出した祖父の元でホームスパンに出会い、彼女を見守る暖かい祖父のまなざしによって不安で堅くなった心を解き放し、自分の生きる目標を見出していきます。目標を見失いつつあった女の子の人生と、大きな問題を抱える夫婦としての両親の人生、そこに愛し合うがゆえに離れざるを得なかった祖父母の人生を巧みに織り交ぜながら、家族であり続けることの意味を問い、深い悲しみを乗り越えて目標を持って生きていくことの大切さを訴えかけます。家族という近しい存在であればあるほど、お互いに距離が生じてしまう状況がうまく描かれていて、それぞれの登場人物に感情移入してしまいました。
