落花流水/山本文緒 | なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだです。
北の国から、読んだ本、買った本、大好きな曲、そして日々思うことなどをポツリポツリと書いてます。

 

 

それまで母親だと信じて疑わなかった祖母が突然亡くなり、たまに家に顔を出す程度だった姉が実の母親だと告げられた少女は、十代で望まない妊娠をし子どもを育てる力を得ないまま両親に子供を預けていた母親に引き取られることになるが、それまでの姉が突如母親となって生活を共にするようになった少女は混乱する。少女には祖父母の家の隣家に住む仲の良い混血の少年がいたが、少女が離れて行ってしまってから母親が住むアメリカに帰国することになり、少女が可愛がっていた自分の飼い犬を少女に託して去っていく。出会いと別れを重ねる少女は、やがて大人になり、結婚し、出産するが、義父との新しい生活、奔放な母親の失踪、幼馴染の混血の少年との邂逅を経て、一人だけの人生を歩んでいく

 

以前に読んだ作品を再読しましたが、内容をすっかり忘れてしまっていました。今回読んでみて自分で思っていた展開と全く違っていたことに新鮮さを覚えました。一人の少女の人生を10年刻みにして、その年ごとの家族や家族や友人たちとの出来事を濃密に描いていきますが、一筋縄ではいかない一人の少女の人生に著者特有の毒を吹き込みながら、やがて迎えるであろう人生の終局に落とし込んでいくところはさすがです。数奇と言っては言い過ぎかもしれませんが、自分の思うままにならない人生の転機の数々に翻弄されながら、それぞれが自らの幸福を追求していこうとする家族たちの姿勢は、軽い戸惑いを乗り越えた先に深く胸に落ちていくような共感を与えてくれます。著者独特の視点によって、運命というにはあまりにも重い家族のつながりが、より現実的なものとして描かれたいい作品でした。