コクーン/葉真中顕 | なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

なおぱんだです。
北の国から、読んだ本、買った本、大好きな曲、そして日々思うことなどをポツリポツリと書いてます。

 

 

国中を震撼させた大量無差別殺人テロを引き起こした新興宗教団体。事件後に宗教団体は解体され、その信者たちは全国に散らばって小さな集団を作っていった。テロによってまだ幼かった一人息子が犠牲となった女性は、自分を責め続けながら生きていくだけの生活を送っていた。女性は死を待つだけの身寄りのない病人を収容する医療施設で看護助手として働き始め、そこに認知症が進んだホームレスの老女が運ばれてくるが、女性はその老女が新興宗教団体の創始者の母親であることに気がつき激しく動揺する。終末医療を看板に掲げたその病院では、患者が外に出ていくのは転院以外になかったが、深夜一人の男性がある目的を果たすために密かに脱走して東北に向かい、目的の達成を前にして大地震に見舞われる。その男性は幼馴染との思い出を抱えていたが、その幼馴染は離れ離れになった後に大きな新興宗教団体を作り上げることになる。テロと自然災害で日本中が揺れ動く中で、過去と現在が交差しながら、純粋無垢な人間たちの人生が複雑に絡み合い翻弄されていく。

 

とても面白かったです。日本で実際に起こった新興宗教団体による無差別殺人テロ事件を題材にしていますが、宗教団体の存在を中心にしてたくさんの登場人物がそれぞれ複雑につながりあい、悲しみ、怒り、恨み、諦めなどの負の感情に支配されながらも生き続けようという希望にあふれた作品になっています。新興宗教という物欲にまみれた心的支配によって人生が狂わされた人間だけでなく、辛酸をなめてきた残された家族の深い悲しみと喪失感を克明に描きながら、それを乗り越えて新しい人生を築いていこうとする姿に強く胸を打たれます。実際に起こった事件をベースにしただけに身に迫るものがありますが、その背景となって浮かび上がる幻想的な過去の映像を織り込みながら、壮大な人間ドラマに仕上がっています。