生れた時から病気がちであった女の子は、病気をするたびに両親が治療に手を尽してきた。そんなある日、父親が会社の同僚から譲り受けた水を娘に使ったところ、みるみるうちに症状が改善してきたことに驚く。それ以来、両親は特別な水を高額で売りつける怪しげな商法を疑わず、その効用を信じ込んで宗教団体にのめりこみ、次第に奇行に走るようになっていく。そんな両親を嫌った姉は家を出てしまい、親族からは目を覚ますように説得を受けるが、両親は娘に深い愛情を注ぎ続け、女の子は友人に囲まれて楽しい毎日を送る。周りからは自分の家族が奇異な目で見られていることを自覚しながらも、女の子は両親のそばから離れることなく二人を見守っていくが、親族からある提案が出されたことで、家族に不安な影が差し込むようになる。
ちょっと粗削りな感じがしますが、物語としては楽しめました。宗教団体にのめり込む両親を持つ女の子が主人公ですが、素直な性格で純真無垢な行動が微笑ましく、家族から離れていった姉の代わりとなって両親を見守っていく健気さが胸を打ちます。親族からの提案によって家族の形が揺らぎ始め、宗教団体の研修旅行に家族で参加した施設内で両親とはぐれてしまった女の子の不安と、家族が迎えるかもしれない将来の姿をリンクさせ、最後に3人が顔を寄せ合って夜空を見上げながら流れ星を探し合う姿に、家族のつながりの深さと明るい未来を感じます。巻末の小川洋子との対談も興味深く、氏がいかに作品を読み込んでいるかということがわかって感動を覚えました。
追記
読み返すと無難なレビューですが、初めのころの両親にとっての宗教は、娘の健康を祈るための心の支えとなるものでしたが、病弱だった娘が健康に成長するに従って、信仰の目的がただ信仰するためだけのものとなり、それが娘の人生とは別の世界であることに気がついた両親が、親子3人の明るい未来のために親族からの提案を受け入れる決意をしたことが予見されるラストだなと思いました。