悪霊島(上・下)、病院坂の首縊りの家(下)/横溝正史 | なおぱんだのひとりごと。 ~読書と日々に思うこと~

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なおぱんだです。
北の国から、読んだ本、買った本、大好きな曲、そして日々思うことなどをポツリポツリと書いてます。

 

 

 

 

昭和42年6月
 
「悪霊島」

昭和48年4月

 「病院坂の首縊りの家(下)」

 

名探偵金田一耕助が活躍するシリーズの最後の作品になります。

 

時代が経つにつれて経済が発展し、好景気を迎えてくると、凶悪な殺人事件の舞台もマンモス団地とかラブホテルなど、少しずつ現代的になってきます。よれよれの絣のひとえに袴履きで、もじゃもじゃ頭におかま帽といういでたいでたちは相変わらずの名探偵ですが、活躍するにはちょっと時代錯誤の感が否めません。活躍を終盤に迎えた「悪霊島」は、瀬戸内海に浮かぶ小島で起こった殺人事件に巻き込まれていく中で、旧主的な家同士の軋轢と鍾乳洞を舞台にした時代的な舞台が用意され、金田一耕助の若かりし頃の活躍をほうふつとさせます。全作品を読み通した中で、やはり金田一耕助にはこういった怨讐がからむ怪奇は事件がよく似合います。

 

「病院坂の首縊りの家(下)」は、約20年前に起こった未解決事件を執拗に追い続けてきた金田一耕助が、時機を得て事件を解決に導いていく作品で、前段の事件がこの作品の上巻になります。これまで解決に至らなかった事件は皆無という名探偵に残された最後の未解決事件が解き明かされると、すべての財産を処分してアメリカに渡った彼はそのまま消息を絶ってしまいます。これが金田一耕助最後の事件であり、事件のスケールの大きさもさることながら、最後たるにふさわしい複雑怪奇な事件の概要が明らかになった時、朋友の等々力警部磯川警部など友人たちにも告げることなく行方をくらましてしまうことで、これ以上人間が抱える心の闇に踏み込むことを潔しとしない姿勢が描かれているように思います。

 

これで、ジュブナイル作品を除く金田一耕助の全77事件を読破しました。全作品を読んでみて改めて感じるのは、戦後このような優れた娯楽作品が誕生したのは、著者の熱意だけではなく、当時の日本人が如何に渇望していたかの表れだと思います。作品の読みやすさと面白さは、現代でも十分受け入れられる新鮮さがあります。