【玉ノ井親方 視点】

照ノ富士が戻ってきたら
霧島の綱獲りが
どうなるかは分からない


<九州場所千秋楽>
貴景勝(左)を
突き落としで破る霧島
 
○琴ノ若
(引き落とし)
熱海富士

●貴景勝
(突き落とし)
霧島○

(2023年11月26日
福岡国際センター)




 霧島は文句なしの相撲だった。左手で突いて相手の出足を止め、右からいなして東の大関を土俵にはわせた。貴景勝の当たりが本来のものとは程遠く、勝負にならなかった。
 見方を変えれば、場所前に首を痛めた貴景勝は、現状ではあれが精いっぱいの相撲だった。
 これで霧島は来場所、綱獲りに挑むことになる。課題を挙げるとすれば、立ち合いで当たった後の流れだろうか。押し込まれた時にどう立て直すか。
 今場所も高安や豪ノ山のような馬力のある相手に苦戦した。簡単に引いてしまうと体重がない分だけ、体が軽くなってしまう。
 もう少し筋肉量を増やして重さが出れば、押し相撲も苦にならなくなる。それでも、今場所の中盤戦以降は前に出る相撲に徹して、内容がガラッと良くなった。今のままでも安定感は上位陣の中でも頭一つ抜けている。
 ただ来場所、照ノ富士が戻ってきた場合は、綱獲りがどうなるかは分からない。
 一方、千秋楽の熱海富士は自分の相撲を取り切れなかった。14日目と同じように体が硬くなってしまったようで、立ち合いで当たった時の頭の位置が低すぎた。もっと相手を見て立つべきだった。
 それでも2場所連続で優勝争いに絡んだのは立派。来場所は番付も上がり、実力者との対戦も増える。
 立ち合いで当たった後にすぐに右を差し、前まわしを引いて前に出る相撲を磨いていけば、来年はさらに活躍できるはずだ。
 (元大関・栃東)