【玉ノ井親方 視点】

霧島が熱海富士の挑戦退け大関初V王手 



玉ノ井親方

「立ち合いの“待った”で
集中力が途切れたのかも」

 
<九州場所14日目>
霧島(手前)の攻めに
苦もんの表情を浮かべる熱海富士

 ◇大相撲九州場所14日目 

○霧島
(寄り切り)
熱海富士●

(2023年11月25日 
福岡国際センター)

 2敗同士の注目の一番は経験の差が勝敗を分けた。

 ポイントは最初の立ち合いだった。熱海富士が突っかける形になり、不成立になった。熱海富士は勢いをつけて当たろうと気がせいたのかもしれない。あれでリズムを崩した感じになった。1度“待った”になると、どうしても集中力が途切れる。特に熱海富士は経験が浅い。次は立ち合いを合わせなければと、意識してしまったのだろう。
 
2度目で立ち合いが成立。一瞬の差だが、大関の方が先に立って当たる形になり、右を差されてしまった。

熱海富士も右を差したが、大関に左からおっつけられ、絞り込まれた。右を殺され、さらに巻き替えられて、もろ差しを許してしまった。そのまま右下手を引きつけられ、最後は上体を浮かされて寄り切られた。 

大関にすれば“四つに組めばこっちのもの”という計算通りの相撲だったのではないか。
元々、体がそれほど大きい力士ではないので、馬力があって突き放してくる相手を嫌がるタイプ。熱海富士が最初から組まずに、突き放してきたらもっと苦戦していたかもしれない。

 だが、熱海富士は最初の立ち合いが不成立になったことで、突き放していくことができなくなったのではないか。経験の浅さは怖いのも知らずの勢いにつながることもあるが、大一番の重圧で体が硬くなってしまったようだ。

 ただ、これで終わりではない。千秋楽の取組もまだ残っている。大関の取組の結果次第だが、決定戦の可能性も残されている。最後まで何が起きるか分からないと気持ちを切り替え、集中力を切らさないようにすることだ。  

(元大関・栃東