【玉ノ井親方 視点】

熱海富士が
霧島と並んで
優勝争いのトップに 

玉ノ井親方

「大関を相手にしても、
ひるむ様子が
まったくない」


<大相撲九州場所・12日目>
熱海富士が
突き落としで豊昇龍を破る


 大相撲九州場所12日目 

○霧島
(寄り切り)
琴ノ若

●豊昇龍
(突き落とし)
熱海富士
 
 2023年11月23日 
福岡国際センター



 入幕わずか2場所目の力士とは思えない落ち着きぶりだ。熱海富士は大関を相手にしても、ひるむ様子がまったく見られない。
 
優勝争いの生き残りを懸けた豊昇龍戦。当たってすぐに、1歩前に踏み出した。ただ大関に上体を起こされ、脇が空いて右を差される。そのまま一気に前に出られたが、土俵際で左に回り込みながら圧力をかわして、最後は右から突き落とした。
 
土俵際の粘りは、21歳の若武者の持ち味だ。今場所も回り込みながら勝負をもつれさせた取組が何番かあった。それだけよく足が動いている証拠だろう。体が柔らかい上に、疲れが出る終盤戦にこれだけ動くことができているのは、日頃の稽古量のたまものだ。
 
敗れた豊昇龍は攻め急いだのが敗因。右が入って喜んで前に出すぎた。気持ちは分かるが、慎重にもう一呼吸置いてまわしを取りにいくべきだった。もったいなかった。
 
これで2敗のトップに熱海富士と霧島が並んだ。霧島はここにきて、力強さが出てきている。琴ノ若戦も相手のもろ差し狙いを読んで、1度突き起こしてから左前まわしを素早く引いた。まわしを取る位置が絶妙で、琴ノ若の右を自由にさせなかった。そこからすぐに前に出ていかず、じわりじわりと寄っていったのもうまかった。安易に寄ると琴ノ若の下手投げ食らう危険があった。そこを計算して、足を掛けながら琴ノ若の上体を浮かし、万全の形になってから寄り切った。
 
勝ち急いで墓穴を掘った豊昇龍とは対照的な相撲内容で見事だった。
 
まだ、優勝争いはどうなるか分からない。熱海富士はこれから琴ノ若、霧島と当たる可能性もある。最後まで目が離せない展開になりそうだ。 

(元大関・栃東)